ビートルズ『赤盤』『青盤』新規収録曲について
ビートルズ最後の曲“Now and Then”がまもなく発表になりますね。
同時に彼らのベスト盤である『1962-1966』『1967-1970』(以下、通称の『赤盤』『青盤』とします)が曲を追加された上でリミックス再販されるそうです。
まず、私自身父の所持していた『赤盤』『青盤』からビートルズに入ったので大きなバイアスがあることは認めますが、『赤盤』『青盤』はヒット曲だけでなく美味しいアルバム曲をくまなく収録した非常に出来の良いベストアルバムです。
ただビートルズはLP4枚には到底収まりきらないほど多くの名曲を世に送り出したアーティストであり、完璧なベストというのが到底実現不可能です。
ベストの中でさえ数曲を除けば印象が薄くなりがちな世の中の大半のアーティストからすれば贅沢な悩みですね。
そして発売から50年、CD化から30年も経った『赤盤』『青盤』をアップデートする必要があるという声にも頷けます。
新たに収録が発表され、公認のビートルズ代表曲に昇格した曲たちについて呟いていきます。
新規曲の感想
“I Saw Her Standing There”
最初のアルバムのトップバッター、の期待を裏切らない素晴らしい曲。素直に嬉しい。
“Twist and Shout”
ジョンの魂のお陰でビートルズバージョンが最も有名。納得の選出。
“This Boy”
『青盤』みたくB面曲も収録していこう、となったらこの辺なのだろうか。うん、ううん。悪い曲ではないんだが。リンゴのテーマだから?
“Roll Over Beethoven”
カバーだが実質ジョージの持ち歌。素直に良い選出。
“You Really Got a Hold on Me”
あれれ、ジョージの(歌う)曲、無理やり入れてないか?嫌な予感がしてきた。
“You Can’t Do That”
タイトルが全てを代弁してくれてます。
“If I Needed Someone”
またジョージ。この曲好きなんだけど。
“Taxman”
またまたジョージ。この曲も好きなんだけど。
“Got to Get You Into My Life”
オリジナルの『赤盤』の発売後の1976年にシングルカットされヒットしており、実は極めて妥当な選出。
“I’m Only Sleeping”
これが入るなら『リボルバー』半分は…入ってました。
“Here, There and Everywhere”
『赤盤』の価値を更に高める名曲中の名曲。まあこれを外さなかっただけで合格をあげてもいいぐらい(元の『赤盤』の完成度が高過ぎるというのもあるが)。
“Tomorrow Never Knows”
グループの攻めの姿勢をキャプチャーしたいのは分かる。だがベスト盤に入れるような曲ではない(という自分は多分古い)。
“Within You Without You”
『青盤』1枚目唯一の追加曲は…分かってましたよ、ジョージですね。
“Dear Prudence”
この時代は半分ソロみたいになるので好き嫌いの分かれやすい曲が多い。この曲はミニマルなアレンジで最大限ユニークな世界を作っているところは頭一つ抜けており、非常に『ホワイト・アルバム』っぽい曲ではあるので良いと思った。
“Glass Onion”
ファンサ曲。『LOVE』の宝探し的なコンセプトにはぴったりだったが、ここで聴く意義は正直分からない。元のアルバムの順番的に仲間外れはアレだしオセロ式で採用、は理由として頂けない。
“Blackbird”
深読み次第では今の時代にも合った歌。人気曲。言うことなし。
新規枠はこういう曲のためにあると言っても過言はない。
“Hey Bulldog”
『イエロー・サブマリン』収録曲ということもあり、曲の出来の割に過小評価だったしマニアとして嬉しい気持ちはある。その反面、ベスト盤のレベルかどうかと聞かれたら微妙。
“Oh! Darling”
『アビー・ロード』のA面をほぼフルコンプ。私は天邪鬼なのでトンカチ派です。
“I Want You (She’s So Heavy)”
溜め息。一部根強いファンが存在し、ヘビメタやプログレなど後世への影響云々とかを考慮しての選出だとは思うが、代わりに2~3曲入れる尺が存在していたことが何より許せない。
“I Me Mine”
ジョージ。完
収録を予想していたが落選
“Helter Skelter”
ポールが誰かさんのようにはっちゃけてみただけの曲だが、玉石混交な『ホワイト・アルバム』の中でも唯一無二の個性があり、望んだ人も少なくないであろう。
しかし曲に罪はないとはいえ、某凶悪犯罪事件をインスパイアしてしまった手前大人の事情で却下されたと推測する。
“Because”
I Want Youはこっちのセリフです。絶対に選ばれると思ったのに。
“Free as a Bird” “Real Love”
2015年に『1+』のためにリミックス(しかもDVD、Blu-ray限定)を用意しているのに“Now and Then”が日の目を見たこのタイミングで正式音源化しないのはどうしてだろうか。
まとめと今後
仕方がないのかもしれませんが、全体的に故人であるジョージやジョン、特にジョージへの配慮が非常に感じられました。
そもそもベスト盤はアーティストの代表曲を手頃に味わうことが主目的である入門編のようなものであるはずです。一方であまり曲を入れ過ぎると入門編としての機能を犠牲にしている気がしてなりません。
元の『青盤』では『マジカルミステリーツアー』11曲中7曲も収録されていましたが、これは当初EPであったことの救済措置も兼ねていたと思われます。
今回は更に『ラバー・ソウル』『リボルバー』(そして実質的に『アビー・ロード』)の半分が組み込まれることになりました。CDの大容量に甘えすぎ感は否めません。
唯一の救いはLPでは新規曲は3枚目に収録されており元の曲順を乱していないことですね。ボーナストラックとして捉える方が良いのかもしれません。
また、今回のニュースは嬉しいものではありますが、私含め『ラバー・ソウル』のリミックス盤を待ち望むファンも多いはずです。
ですがこの機会にとりあえず新規『赤盤』『青盤』に合わせてまとめてリミックスを敢行したことを考えると、『ラバー・ソウル』以前のリミックスは現段階では厳しいと思います。
最後の新曲というのを節目に代表曲のアップデートを完了させ、本当の意味でビートルズの物語に幕を引くのでは、と勘繰ってしまいます。
(まあ『LOVE』の成功が2009年のリマスターに繋がったので何があるか分かりませんが)
※ヘッダー画像はビートルズ公式サイトより拝借しました。
追記: “Now And Then” の感想も書きました。