たっこちゃん、齢ほぼ80歳 #36 LIVE DAMで歌いたい
「たっこちゃんさぁ、コロナが収まったらいちばんしたいのなに?」
そう尋ねてみた。温泉旅行かなあと思っていたけど違った。
カラオケだった。
ここら(住んでいる関西のとある町)はコロナの状況は油断できないありさまで、所属している老人会の活動は全て休みになっている。
コロナ禍前、たっこちゃんは老人会でカラオケを楽しんでいた。それとは別に月イチで親しい友人たちとカラオケボックスで歌っていた。
カラオケボックスはDAMの部屋を好んで選んだらしい。歌い終えた後に得点と合わせて表示されるアドバイスがあるらしく、
「小悪魔的なヴォーカルです……」
「聞き惚れます……」
なんて得点のわりによさげなコメントをもらえたらしい。
それで友人たちから
「この部屋は◯◯さん(たっこのこと)贔屓やわ」
「◯◯さんあんなにはずしてるのにおかしい」
「前もこの部屋で誉められとった」
「この店そのものが◯◯さん贔屓してるわ」
「ずるいわ」
さんざん言われたらしい。
高齢おばさまたちはやや嫉妬深く、皆さんカラオケLIVE DAMに誉められたいようだ。
カラオケがしたいならと、ひとりカラオケを勧めたら「ひとりはつまらない」「聞いてくれる人がいるから楽しいねん」とのことで、私が付き合えばいいんだろうが、20年はマイクを握っていない私はカラオケに行きたくない。正直者延々と演歌を聴かされるのも気が進まない。
◯◯温泉とかスパ◯◯みたいな、大型温泉施設の宴会場でも、施設によっては自由にカラオケができるそうで、行けば必ず歌っていたらしい。
入浴後に食事をしながらまったりくつろぐ大宴会場、見ず知らずの人だらけの宴会場でだ。
「恥ずかしくないん?」
「それがな、マイクを握った瞬間から恥ずかしくなくなるねん」
なかなか肝が据わっている。
たっこちゃんはコロナ禍でもう2年もマイクを握っていない。友人と会っておしゃべりする機会もぐんと減った。そのせいか声が出にくくなったらしく、歌謡ポップスチャンネルの『USEN演歌ベスト20』といった番組を観ながら歌っても以前ほどには歌えないそうだ。
通販で夢グループのカラオケマイクを買ってあげようかと思ったが、狭い部屋で延々と聴かされるのもなんだし、近所迷惑だからやめた。
もともとたっこちゃんは社交的で、人と会ったり喋ったりすることが好きだ。いまの閉じ籠りがちな生活はつまらない。
はやく安心して自由に友達とカラオケに行ったり、老人会で囲碁ボールを楽しめる日が来ますように。
でないとさらに老け込んでしまう。心配だ。
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