見出し画像

014/僕らの「好き」の在処

好き、その定義を模索してみるのですが、いかんせん目の前の伊達さんにはその必要性が全く感じられないのです。もうね無条件なの。ここにいてもいなくても、伊達さんは存在自体が神そのもの。全身全霊で惹きつけられる存在たるやもはや奇跡としか言いようがないのですよ。甘い蜜に惹き寄せられる羽虫のように。

例えば今。出勤で忙しそうな伊達さんは、ともすれば設楽くんとクロスオーバー気味な時間帯、なのにかちあうことなく、ぶつかることなく見事な体捌き。まるでフィギュアペアを目の当たりにしているよう…話が逸れましたが、とにかく動きに無駄がない。お支度を終え軽い朝食。その時に緩む表情が極上なのです。

忙しそうで少し緊張したお顔、からの、この幸せゆるゆるフェイス。しだらあレバーパテぬってえ、甘えているのかただのゆる口調か、もはや僕にはどっちでもイケるのですが(?)パテをぬってもらったトーストを頬張ったまま、ハルちゃん明日はお休み?(たぶんそう仰っておられる)そうですお休みですもう僕一生お休みでいいです承り、ついおかしな事を口走りそうになりましたがぐっと堪えて。お客様のご希望で予定が来週に延びたんです、伊達さんは嬉しそうに設楽くんとアイコンタクト、じゃあハルちゃんに後でメッセージ入れるねえ、そう言ってお二人はお仕事に。

明日休み、メッセージ?という事は明らかに何らかの予定?それともお食事のお誘い?お楽しみモードは混乱を招くようで、お得意様宅への道のりで何度も躓きそうに。うわっあっぶね側溝に速攻、これ伊達さんの言ってたやつやでしかし。いちいちウケていたのでは腹筋が持ちませんこのままじゃ。気を取り直してお仕事モード。

ともすれば頭の中が一気にテーマパーク化しそうなのを何とか踏みとどまりお仕事に集中です。色即是空、色即是空。このお菓子は京都の老舗のあのあれですね、ほらまた気が散ってしまいました。こんな時、周りに花が溢れているような幸せ感に包まれます。まさにソーハッピーブルーミング満開モード。この一節は、設楽くんが数年に一度巡ってくるらしい彼なりの発情期みたいな時期を現したもの。なんという的確な表現、というわけで使ってみましたが、正にしっくりきます。

そんなわけでようやく帰路に。すると車の中で携帯がピロリン。お待ちかねのメッセージ。ハルちゃんが戻ったら出かけるよ!え?僕が戻ったら皆で???ちょっ早でペントハウスに帰還。転がるように玄関に入れば、リビングにはトランクが。お帰りなさい、支度が済んだら出かけましょう。設楽くんが荷物を受け取りながら僕をお部屋に誘導。伊達さんはリビングのソファーでニコニコ。

パーカーにジーンズといった軽装で設楽くんのハマーに。トランクて事は旅行の予感!どこに行くのでしょう?ハルちゃんおやつだよあーん、隣の伊達さんが美味しそうなあんパンを差し出し、お楽しみだよ、もはやワクワクじゃ収まらない感じ、あんパンを頬張りながら僕は暮れ行く空を見やるのです。

伊達さんの平屋近辺を走りさらに小一時間、田園風景の中に不思議と違和感なく佇むその建物は、まるで中世ヨーロッパに迷い込んだかのよう。僕と伊達さんは目の前の瀟洒な建物に釘付けです。ガチでコスプレできるホテルです、なんて的確な説明。元々はありがちのLのつくお泊り処、それをこのように造り替えたと成程、遂げる目的は同じでも嗜好最優先、映えという観念は最強なのですね。外装も内装も凝っていてアンティーク調。お部屋はこれ又ゴシックみ満載。ハルちゃん興奮してるでしょ、僕の高揚が伝わったのか伊達さんがとても嬉しそう。

奥の丸々一部屋が広々したウォーキングクローゼットに。そこに並ぶのは急拵えではない「ホンモノ」の衣装たち。凄いクォリティですね、手に取り嘆息する僕に、気に入ってもらえて嬉しいです、設楽くんマジコンシェルジュやで。明日の朝から撮影会ね!今からご飯食べよー。後ろ髪引かれながら最上階のレストランへ。テーブルセッティングも素晴らしく、出てきたお料理も完璧な美しさ。盛装して頂きたいくらいですね。だいじょぶ今夜はねえ下見!伊達さんがフォークで大きなお肉を僕に差し出す。明日の朝からガチコスしてここで食事しましょう、設楽くんは涼しい顔でステーキに大盛りご飯の邪道。

そうと決まればお部屋に戻ってお風呂へ。今日は急いだから疲れたでしょ、一緒にバスタブに入った伊達さんが肩を揉んでくれる。この人の肩揉みはすごいんですよ、力強くてそれでいて隅々まで行き渡る心地よさ、あっという間に凝りも解れて、髪を洗っている設楽くんを水鉄砲で攻撃(手のひらをキュッてやるやつ)水鉄砲合戦を経て無事お風呂完了。僕はやっぱり衣装が見たくなってそのまま衣装の部屋へ。まずはシチュエーションから組み立てるべきですねそして然るべき役割分担、僕としましては伊達さんをこう、何とかこう、こうしてこう、などと色々思案していましたらいつのまにか側に立っていた設楽くんが「同意」。ここはやはり伊達さんのポージングを、なるほど御意、設楽くんとの入念な打ち合わせ。すると何をどうああしたのか、待ってえ俺も混ざる、伊達さんがスポンポンで乱入。全年齢版はサンピーなしですよ、って、そろそろ就寝しなくては。ブランケットでぐる巻かれて設楽くんに連行される伊達さん。明日が楽しみです。

朝食ブッフェを入り待ちしてようやくコスプレタイム。もちろんシャワーも済ませて。まずは執事服。ロングテールコートは設楽くん。上質な生地に設楽くんのヒヨコワイルドがいい具合にマッチしますたまらんなおい。僕は同じく執事服でモーニング。初めて袖を通すものはワクワクします。そして我らが主君に着替えていただかなくては。さあ撮影撮影、動画のアングルは…すると雲母さん撮影はオレが、設楽くんがアシスタントを買って出てくれて助かりました、うっかり撮影班で終了するとこでしたあっぶね。僕らの拘りの角度を攻めたあとは伊達さんの仕上がりを。お待たせねえ~、僕らの目の前に現れたのは…あ妖精さ…ではなく坊っちゃ…。なんでショートパンツじゃないんですか、設楽くんのツッコミに、いくらなんでもアレよお、伊達さんは中世貴族のようなシルクブラウスに薄手のパンツをお召しになっています。あそれバスティー…時のオスカ…よかった例の坊ちゃんではないようですね承り。ねえこれなんのコスだろねえ?と伊達さん。バラの名を持つ壮大な物語の主人公のコスですよ、理解して頂けたかはわかりませんが、設楽くんに身なりを整えてもらっているそのお姿で僕はもうお腹いっぱい、いえ空腹感が更にマシマシ。そしてさっきから設楽くんはショートパンツの件しか言ってませんねわかりみ。設楽おまヘンタイか!的確な表現です。

執事合わせ、中世貴族風、そして天使と悪魔とシッポと(?)。おおよそここでは書けないような濃い合わせを経て、収穫は体感数億枚の画像。結局二泊三日やでしかし。ご飯とお風呂とコスしかしてない濃密な三日間。最終日である今夜はレストランで最上級のお肉をいただきます。残すは僕が考えうる中で最もハードルの高いコスチューム、ボンテージです。無機物との同化、体に一部の隙も与えない密着度、ただその倒錯的な美しさは群を抜いている。全身ゴム男だよねえこれ、伊達さんが楽しそうにつまんだりひっぱたり。

僕はそこで気付かされた。美は追い求めるだけではなく、己の中にこそ存在する神聖な魂。そう、僕らのこれは荘厳な「遊び」。ですからもっと自由であるべきなんです。

そうと決まれば逆に笑いの方向へシフト。伊達さんこのピタピタ着て下さいオレ手伝います、それよりさあお前のその辺すげえピタピタだね怖。ホテルに篭ってからそういえば僕ら何もしてませんでしたね。設楽くんは彼なりの禁欲時間を謳歌していたようです。美味しいものは我慢の限界で頂きたいので問題ないです御意、真面目なお顔でそう宣言。

伊達さんは口元あたりだけが露わになった全身拘束に近い物、てかピッタピタ。とてもお似合いです伊達さん、おま設楽これ何が面白いん!全裸とはまた違った怪しい趣きに、設楽くんが静かに興奮しておられるのが分かります。手早く撮影、そして撮影。まじ撮影。僕と設楽くんもピタピタインキュバスみたいな感じで合わせます。

チェックアウトギリギリまで撮影会敢行。伊達さんのボンテージな衣装を脱がせる辺りから寡黙になってる設楽くんを見て、伊達さんのテンションが爆上がりしてるのが伝わってきます。もうワクワク感しかない僕ですが、三日目のお昼ともなるとお家のご飯が恋しくなりまして。その旨をお伝えし平屋に帰還。

ご馳走三昧でしたので、軽めのお昼。伊達さんの黒鯛の出汁茶漬けと、設楽くんがお庭で焼いてくれた鯵の開き。お新香は水茄子とゆず大根。優しくさっぱり香りも良くて。ただし、美味しく頂いてはいますがおそらく全員、全然味わってはいないのです。そう、この後の件で頭がいっぱいなんやでしかし。ご飯の後は設楽くんと伊達さんをまとめてお風呂に閉じ込めまして、洗い物がてら画像データをハードに落とし込んで。何これ数億枚?それにしても素晴らしい出来ですね。お二人がずっと行きたがっていたという例のホテル、ハイレベル過ぎてまたすぐ行きたい衝動が。ああそれより設楽くんと思い切り交歓した後蕩け切った伊達さん、お風呂上がりが楽しみですね。

すみません片付けお願いしてしまって。設楽くんと伊達さんが戻られました、が、何やら様子が。え全然しっかりしてませんか?え何もなさってない?そんなバカな。別の意味で驚愕。設楽とさあ風呂で話してたんよあの角度はどうよ、とかさ。成程プロデュース目線開眼。早速居間でタブレットのデータを見ながらの反省会。大真面目でのおふざけコス画像がまるで国家機密レベル。僕以上にお二人が殊の他気に入ったようですね。これ以上ないくらいの真剣な様子でのディスカッション。そんな中僕は油断していたようです。話し合いが落ち着いたと同時に、伊達さんがそっと僕の手を取り指先にキス。えそんな雰囲気皆無でしたよね?真剣な時って素が出るんよ、それがイイんよね。設楽くんも大きく頷いて。まさに僕としましても「好き」の極み。先程までお二人ともキリリと凛々しく、そっち側に持ってけない雰囲気でしたのに。

オンとオフは両方楽しまないと。散々視覚で楽しんだ後は触覚、というわけで「好き」の定義が蓋を開けたらこんなとこまで来ちゃってた、僕らの午後はこんな感じです承り。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
佐久イヌ140の日常
306-335まとめ 加筆修正
2024.7.6


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?