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smashing! たべたいものをたべさせて

大学付属動物病院獣医師・設楽泰司。週一で佐久間イヌネコ病院に出向している理学療法士・伊達雅宗は彼の先輩で恋人。伊達は佐久間の病院の経理担当である税理士・雲母春己とも恋人同士だ。


伊達さんは卵が食べたそうだな、と思った。最近朝の時間が合わないので仕事先でおはよう言ったりするんだけど(外ではおはようのキスとかしないようにしてる)昼何にしますか、そんな話してたら後輩とか看護師の子らとかと皆でランチ行く感じになったりで、オレら二人きりで飯食うってのは弁当以外はほとんどない。

仕事中は場所が別々なことが多いから、大体オレは現場、ていうか診察室が主。伊達さんは理学療法士なんで機能回復とか基本は局、そっち側にいる。一日中顔合わせないこともあるし、忙殺されると存在が無になる。ウソ。ますます存在感が際立ったりする。そんなこんなで帰りは強制的にでも一緒したい。その日車一台で来てたりすると尚更。オレは帰り電車でも全然問題ないんだけど、伊達さんを電車で帰すわけにいかないから。

残務も終わって、オレが先に車で待ってると、しばらくして伊達さんがやってくる。おまたせえ、ゆっくりのんびりドアを開けて、誰かがくれた大福やなんかをオレの口にも突っ込んでくる。どっかで何か食べて帰りますか、そしたら。

あれ、お前のさ、パスタの上に卵のっけたやつ。

窓の外を眺めながらそれだけ言って、珍しくすうっと眠ってしまった。ガチ寝息なんですぐわかる。ああやっぱり食べたかったんだな。この人は疲れてくると無意識に卵食べたがるから。昼に皆でランチ食べに行った時、いつもは頼まないカツ丼頼んで、ちょっと物足りない顔してたんだ。ゆるゆるの卵とじを期待してたのか、そう思いながら見てた。

家着いたら温泉卵の支度して、パスタはカルボナーラだな。あれは素早くできるから急いでる時は助かる。邪道だけど生クリーム使って、たっぷりのチーズとその上に出来立ての温泉卵ですね御意。完璧。

一日に卵って何個まで食べていいんだろうか、そんなことを考えながら、信号待ち、隣でフガフガ鼾かいてる伊達さんの鼻を、軽くつまんでやった。




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