岡田環/Tamaki Okada

脳裏に鮮明に残る記憶の物語を綴ること、季節の鮮やかな色彩で食卓を設えること、眼前の… もっとみる

岡田環/Tamaki Okada

脳裏に鮮明に残る記憶の物語を綴ること、季節の鮮やかな色彩で食卓を設えること、眼前の景色に息を呑む瞬間にシャッターを切ること、どれも今の私にとっては、かけがえのない自分の表現です。旅と生活の境界が曖昧な、根のない遊牧のような海外移住生活の半ば、ここにいると私は少し息がしやすい。

マガジン

  • 「大人相談会」メンバー投稿マガジン

    • 13本

    毎月開催している会員制サロン「大人相談会」メンバーによる、テーマに沿った記事を集めたマガジン。対話から生まれる思考を記事にしたり、自分なりの解釈を哲学したり。自由な発想で生まれた言葉たちを集めました。

  • 【エッセイ集】「彼ら」のいた場所

    書くことは、鶴が自分の羽を抜いて機を織り錦布を作り上げるみたいに、犠牲を要求するところがある。世界じゅうの旅の記録、記憶の断片、「彼ら」と過ごした時間。書いていて少し痛くて、鮮烈なひかりが刺して少し目が眩む。

  • 【旅エッセイ集】ヒステリア・シベリアナ

    「そしてあなたは地面に鋤を放り出し、そのまま何も考えずにずっと西に向けて歩いていくの。太陽の西に向けて。」(村上春樹『国境の南、太陽の西』)私達は、鍬を忘れた、農地を捨てた、そんなシベリアのの農夫だ。太陽はもう赤く傾いている。

  • 【掌編小説集】金いろの夜、藍いろの朝

    眠れない夜。夜が白んでくるのを、西の空だけに碧が溶け残るのを、ただぼんやりと眺めた、そんな記憶を埋葬するために、僕が用意した金いろの容れもの。

  • 【料理エッセイ集】すぐ手料理なんて言うひとは断然信用しない

    食べることは生々しく温かく艶やかでかつ残酷なうつくしい行為で、それでいて私達のごくごく日常なのです。料理の組み立てのアイディアを添えて。

最近の記事

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私は私に見えている世界を具現しようと思ったのです(或いはオカダタマキ・ナビ)

はじめまして、こんにちは(あらためて)。 SNSの波と渦に揉まれて表現したいことと自己顕示欲と(自分が感受できる)本当にうつくしいものの間で溺れそうになりつつも、ここに私の「世界」を再構築する試みとしたいのです。 【私について】元開発援助ワーカー、現在主婦、アゼルバイジャンのバクーに住んでいます。これまで暮らした国は10カ国強くらい、旅をした国は50カ国弱くらい、2乃至5年で居所を(国単位で)変える生活をもうずっとしています。趣味は料理と旅行と写真、どれも自分の生活に溶け

    • ウェブマガジンはじめました。旅と料理をテーマに、エッセイを書いています。月刊で買い切りの有料マガジンと、全記事の読めるメンバーシップがあります。 雑誌が好きだから、写真と言葉で私の世界を表現するのは楽しい作業です。 『旅する台所』 https://note.com/cooktravellive

      • まだ見たことのない景色、というのが確かに存在したこと(オマーン旅行その3)

        ダイビングをしない日は、少し遠くの街までドライブをした。岩山と土漠の間をぬって走る高速道路を南へ、古都ニズワまで。またある日には、海沿いを南下して、港町スールまで。右手には瑠璃色の海、左手には峻険な山々を眺めて走る。 オマーンの古のオアシス都市には、城塞が点在していて、その傍らにはだいたいモスクとスーク(市場)がある。砂岩でできた建造物の連なる白っぽい景色と、深々とした緑のなつめやしの木々との対比が、とても美しい。子どもの頃に焦がれた、アラビアンナイトの世界に迷い込んだよう

        • スルタンイブラヒムという魚を胡椒で煮付けにしてみたり(オマーン旅行その2)

          今回の旅の目的は、(ほぼ)ダイビングだったので、私たちは毎朝、海へ通った。ダイビングツアーの朝は早くて、ホリデーだというのに朝6時に目覚まし時計を合わせていたのだけれど、アラームが鳴る前にちゃんと目が覚める、楽しくて。夏のマスカットは曇りがちで、湿度が高くてとても暑い。窒息しそうな暑さだった。気温自体はバクーとさほど変わらず、35,6度なのだけれど、その湿気のせいで体感温度は40度を超えていた。そして、アゼルバイジャンよりはずっと服装に厳格なオマーン、私はいつも長袖長ズボンと

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        私は私に見えている世界を具現しようと思ったのです(或いはオカダタマキ・ナビ)

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        • 【旅エッセイ集】ヒステリア・シベリアナ
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        • 【掌編小説集】金いろの夜、藍いろの朝
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        • 【料理エッセイ集】すぐ手料理なんて言うひとは断然信用しない
          岡田環/Tamaki Okada
        • 【暮らしのエッセイ集】朝いちばんには、窓を開ける
          岡田環/Tamaki Okada

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          料理する旅の持ちもの(オマーン旅行その0)

          余談だけれど、私は旅のパッキング術とかスーツケースの中身紹介とかを見るのが大好きで、InstagramやYoutubeで関連の動画を見つけると、ついつい長い時間見入ってしまう。そのひとの旅のスタイルや旅に求めるものが垣間見えて、実におもしろいのだ。 今回の旅行は、アパートメントタイプの宿を予約したので、地元の食材を現地で調達して、少し料理もしたいと目論んでいた。 そのために、簡単に調味料や調理器具を旅行鞄に忍ばせて。 基本的には、現地調達が楽しいし、ちょっとくらいいつも

          料理する旅の持ちもの(オマーン旅行その0)

          旅と料理(オマーン旅行その1)

          2年半ぶりに、旅に出た。行き先はオマーン、マスカット。この2年半の間には、戦争もあったし、疫病もあった。それでも、アゼルバイジャンの国内は、各地をずいぶんと巡った。車で田舎の村々を訪ねては、古い遺跡や城塞、モスクや教会跡などを探したり、冬には雪山、夏には海辺で過ごしたり。でもこの国に暮らすのも、そろそろ4年目。言葉もだいたい通じるし、文化や土地にも慣れ親しんできたから、旅としての新鮮みや苦労が薄れているのは否めない。それに1回の旅行にかける期間も短くて、長いときで2泊程度、自

          旅と料理(オマーン旅行その1)

          美しいものと暮らす

          ミニマリスト、といえばなんとなく思想があるように聞こえるけれど(確かに思うところはあったが)、若い頃の私には、単にお金がなかった。それゆえ家財道具らしい家財道具はなく、荷物はスーツケース1つと、ダンボール1個くらいに収まる程度。学生時代を過ごしたロンドンでは、友達数人で部屋を借りていたので、ごく最小限の所有物で暮らし、そのあとはバックパック(というかアメリカの雑貨店で買った軍用みたいな緑のリュックサック)に持てる荷物を全部詰めて、長いこと旅をした。 東京に戻り、やっと定職に

          美しいものと暮らす

          血を吸う樹木

          私の手の中の鶏は、温かだった。 血がけっこう滴ったのを、全部鉢に受けて、私はそれを大切なもののように掌の中に包んで持っていた。その鉢もまた、まだ温かい。きれいないろ、確かにそう思った。 そこで、目が覚めた。夢の外では、雨が降っていた。 私は、少し身体を起こして窓の外を眺め、また毛布を手繰り寄せ、潜る。隣では夫が本を読んでいた。静かにページを手繰る音が、規則的に響く。私は彼の足にぴたりと、自分のつめたい足をのせる。起きたの?振り向かずに、彼は言う。答えずに、私はまた沼のよう

          月に吠える

          月が丸くその力が強くて、普段は心の中にしまっていることが、ぽろぽろと零れ落ちそうな夜なので、ヘッドフォンで耳に蓋をして、流れる音楽に心を預けているという次第。 私にとって、これは恋なのだ。 その実は、劣等感と征服欲がないまぜになった、渇望に似た欲情と、崇高な美を手放しに称賛し続け、とめどなく溢れる熱情という、二律背反を内に抱えて、私は息ができない。絡め取られたように、身動きができずにいる。 そのひとの、精神の有り様の美しさ、鋭敏な才覚の眩しさ、熱く溢れるような生命力の煌

          風の街、空っぽのお財布、アゼルバイジャンマネー事情、そして大人になる(なれない)こと。

          夏のバクーのお天気は、快晴か強風のどちらかで(もしくはその両方、つまりは快晴で強風)、降雨やしっとりとした曇りの日というのはほぼ皆無。夫は、最近ウィンドサーフィンを始めたので、毎朝アプリで風向きのチェックに余念がなくて、北風の最高のコンディションの日は、なんだーこんな日に仕事かよー、と言いながら出勤する、じゃあ見なきゃいいのに(とは言わないけどね。)風の日は曲者で、「バクー」というのはもともと風の街という古いペルシャの言葉。だから強風の日は強烈で、向かい風の中では、ごく近所に

          風の街、空っぽのお財布、アゼルバイジャンマネー事情、そして大人になる(なれない)こと。

          これを小瓶に詰めて大海に放流することに、きっと私はなにかを期待している。

          これは自分を軸にした近視眼的な定点観測と、ごく個人的な病気の記録なので、鍵の意味も込めて有料化します。読んでくださるお友だちは、連絡をください。 私には持病があるので、調子が悪くなると、時々熱が出る。熱が出たら、薬を飲んで、炎症が収まるまでおとなしく耐える。痛みと熱は、台風みたいなもので、長くは続かない。ただ、強弱があるだけだ。薬である程度準備をして、ひたすらに行き過ぎるのを待つ。時には、夜中に病院に運ばれて、点滴を受けたりもするけれど。そうやって付き合ってきて、14年が経

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          【みんフォト】イストラ半島、クロアチアの小さな港町の、路地裏で迷う。

          2017年には、私たちはイタリア以外に残存するローマ時代の史跡を見て歩くという旅をしていた。その夏は、当時自宅のあったオランダのハーグからクロアチアのイストラ半島まで、車で旅をした。途中の町で、転々とキャンプをしながら。 プーラのコロッセオを訪ねる途中に立ち寄った、ロヴィニという海辺の港町が、望外に今も心に残っている。坂の多い町で、海の近くの高台にある聖堂に登ると、街と港が一望できる。この土地特有の赤瓦の町並みが、まるで映画のはじまりの景色のように眼前に広がった。 新

          【みんフォト】イストラ半島、クロアチアの小さな港町の、路地裏で迷う。

          バクーの夏休み、カスピ海で泳ぐ。

          ソ連時代を知っているロシアの友だちに、往時のバクーの印象を聞くと、それはノスタルジックで、古い映画の中で観たような、夏休みの思い出が詰まっていた。夕刻、モスクワを出発する夜行列車、辿り着くのは、海辺の保養地。眩しい太陽、瑪瑙色のカスピ海で水浴びして、エキゾチックなスパイスの香りがする料理を堪能し、異国情緒の溢れる街並みを夕涼みでそぞろ歩く、さらさらと揺れるオアシスの木々。なんともうつくしい。 現代では、世界じゅうの多くの人々の頭の中に、油田とキャビア(チョウザメの養殖)とい

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          物語の喪失と朗読者あらわる、そしてふたたび獲得した世界と夏休みの図書目録

          夏休みだから、文芸書を数冊買った。そういえば、いつの間にか読めるようになっている。というのも、ある時から暫く、私は物語を喪(うしな)っていた。 その、空虚な喪失感は私にとっては大きい。それでも、淡々とした日常の繰り返しを生きるのには、全く支障がなかったことに、私は少なからず衝撃を受けた。これまでの自分は、呼吸と同じように物語を読み、時に、貪るように活字を追い頁を繰り、あまつさえそちらの世界の方を本当だと思ってきたふしがあったのに。 夫ですら、はじめはそのことには気がついて

          物語の喪失と朗読者あらわる、そしてふたたび獲得した世界と夏休みの図書目録

          日本食材が買えない土地でも、おなかがホームシックにならないひみつ。

          日本に帰って「アゼルバイジャンで毎日何食べているの」と37回くらい聞かれたけれど、焼いた羊とくさいチーズ、と答えたのは半分嘘。日本に帰って「日本の食事が恋しかったでしょう」と42回くらい言われたけれど、そうでもないと実は思ったことは内緒。 アゼルバイジャン、というエキゾチックな響きに幻惑されるけれど、ここバクーでも、ナイロビでもジャカルタでもプラハでも、普段の食事という観点では、東京に住んでいた頃の食生活と、実はあまり大差がない。外食は、週末のお楽しみで、焼いた羊を食べたり

          日本食材が買えない土地でも、おなかがホームシックにならないひみつ。

          【みんフォト】オランダを思い出すと、いつも花が咲いている。

          2016年から2019年までの3年間、オランダのデンハーグに住んでいました。 寒くて風が強くて、わりといつも陰鬱なお天気だった記憶があるのだけれど、こうして写真を見返してみると、眩しいひかりと、花に溢れているオランダの夏。北ヨーロッパ特有の、透明できらきらとした太陽のひかりに、オランダの感性に似合う、陽気で華やかな色使い。 7枚のオランダからの絵葉書を、あなたへ。 「みんなのフォトギャラリー」にアップロードするので使ってね。(TamakiOkadaのタグで検索して下

          【みんフォト】オランダを思い出すと、いつも花が咲いている。