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大好きな記事まとめ

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また読みたい大好きな記事をまとめました。
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#読書感想文

【おすすめ本】「わからない」をしりたくて(古井由吉/杳子・妻隠)

今週もこんにちは。関東は今週大雪だったみたいですね。みなさん元気でお過ごしでしょうか。 今回取り上げるのは古井由吉「杳子・妻隠」。古井さんは「杳子」で1971年に芥川賞を受賞しています。新潮文庫のオビには、ピース又吉さんが「脳が揺れ比喩ではなく実際にめまいを感じました」という応援文を寄せています。 「杳子」は精神を病む杳子と男子大学生の壊れやすい恋を描いた作品。「妻隠」も男女間の機微がテーマですが、こちらは夫婦間で、二人の心の奥深くにあるズレが日常の中で炙り出されていきま

星野道夫 『旅をする木』 ~春馬くんを偲んで

今日は春馬くんの八回目の月命日。 そして今日は自分の誕生日でもある。18日となればいつかは自分の誕生月が来ることはわかっていたけれど、ついにこの日を迎えてしまった…。 自分から自分へのプレゼントとして日本から取り寄せた書籍の中の1冊、星野道夫「旅をする木」は、春馬くんが以前から愛読書として紹介していた本だ。 この本を読んでみようと思ったのは、春馬くんの思考を知る手掛かりのようなものがほしかったのかもしれない。 著者の星野道夫さんは1978年からアラスカで暮らし、北極圏の大自

【おすすめ本】暮らしは芸術でできている(鶴見俊輔/限界芸術論)

今週もこんにちは。一昨日あたりから、急に寒くなりましたね。短い秋という感じです。芸術の秋(これも不思議な言葉だな)ではないけれど、本日取り上げるのは鶴見俊輔の「限界芸術論」。 限界といっても、芸術はもう駄目だという意味では(それだと「芸術限界論」ですね)なく、生活のなかに「芸術」を見つけてみよう、というこころみです。 ▼▼今週の本▼▼ まずは冒頭から。 これだけでも引き込まれますね。この美的経験として、鶴見さんは町並を見ることや家族の話を例に挙げています。そんなのでい

グレッグ・イーガン『しあわせの理由』発掘記事

グレッグ・イーガンと言えば数学用語をばりばり使い、独自の理論に基づいた法則の世界観を生み出し、近未来から超未来まで縦横無尽に駆け巡り、ばきばきに理系のSF小説を書くことで有名なお方。ヒューゴー賞やローカス賞など世界各国の主要なSFの賞を数多く受賞しており、特に日本では現代最高のSF作家と言われているのですが、本人は公の場に姿を現さず、自身の肖像は公開しない覆面作家なので正体は謎。もしかして有名な映画スターだったり、天才的な頭脳を持つ幼女なのではと様々な憶測が流れていますがその

「紙の動物園」ケン・リュウ〜異邦人の母

ケン・リュウの短編集を読んだ。 表題作「紙の動物園」の登場人物である中国人の母親と、アメリカ人の父親との間に生まれた息子との関係が、まるで近い将来の自分と息子の光景のような気がして居たたまれず、胸が詰まった。 幼い息子のために、とっておいたクリスマス・ギフトの包装紙で、母は折り紙を折る。 中国の折り紙で有名な村の出身だった母の折り紙は特別で、母の手で命を吹き込まれた紙の動物たちは、息子の傍らを生き生きと飛び跳ね動き回り、特に紙の虎 老虎は相棒として長い間共に過ごした。 し

『統合失調症の一族』 ロバート・コルカー

この本をはじめて見たのはどこかの洋書サイトでだったか。目が引き寄せられたのはその表紙、豪華な螺旋階段にずらりと並ぶ正装した大家族の写真である。 題名は"HIDDEN VALLEY ROAD Inside the Mind of an American Family”。 なにやらアメリカの個性的な家族の話らしいこの本には、素通りできないものを感じた。 ただ値が張るのでちょっと検討、とアマゾンのカートにとりあえず放置。そしてそのまま年月が経ち、すっかり忘れていた頃に、この本の翻訳

ドラえもんの体温なんて、考えたこともなかったけれど。

ジャイアンにいじめられたのび太が、泣きながら飛び込んでいくドラえもんの胸。その胸が、どんな感触で、どんな温度なのか考えたことがあるだろうか。 私は、全くなかった。 考えるもなにも、のび太くんを包み込むドラちゃんは、柔らかくって温かいに決まっているじゃないか。 だって、ドラえもんはのび太のパートナーだもの。 パートナーってのは、絶対に柔らかくて温かいのだ。 人だろうと、猫だろうと、犬だろうと、そう、もちろんロボットだろうと。 ドラえもんは、猫型ロボットである。 未来の世界