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ダンボールについて改めて想う、ゆえに我あり。

「人は皆ダンボール箱に住んでいる」と言う古いことわざの通り、世界は広いにも関わらずオレは今日も息苦しい箱の中で生きている。

そこで「Out of the Box」の視点で世界と己自身を見つめ直すために箱から飛び出した。

Open!

あーあ…雪降っちゃってるよ…寒ぃ。。。

今日は配達の仕事をする予定だったがこれでは稼働出来そうもない。

しばらく迷った末にスキーで配達することにした。

Alpen!

と叫びながら積もりに積もったフライドポテトをダンボール箱に詰め込み、広い世界へ向けて踏み出した。

こういう日に限って忙しい。大急ぎでダンボールで作られたアパート・マンションへ配達へ向かう。ネットが普及する前は「雪の中ご苦労様です」みたいな掛け声をかけてくれたりチップをくれるクライアント様もいらっしゃったのだが、最近はどいつもこいつも利己的で心に余裕がなく、心を閉ざしてダンボール箱の中に引きこもっている。当然、注文のほとんどが置き配指定だった。ついつい人に気を使い過ぎてしまうオレはマクフライが冷めないように配慮しようと思ったが、そんな気持ちの方が先に冷めてしまった。

ちょっと嫌なことがあるとすぐにこの世の全てがゴミに思えてしまうオレだったが、ごく稀に現れる、今どきめずらしく人間味のあるクライアント氏に救われた。

クライアンはまず「俺ブライアン。今年もよろしく。」と言いながら、冷めたポテトで優しくオレの鼻血を拭ってくれた。オレはすかさず「オレのケチャップはママの味」と少し照れながら返信した。

雪が激しくなってきたので今日はこの辺で切り上げようと思い、ブライアンがチップ代わりにくれた、首と腕を通す穴の空いたダンボール箱を着て帰路に着いた。

あったかいなぁ…暖ボールあったかい…

オレは上司によく「ダンボールなんかで配達するなよ、冷めるだろ」と叱られてきたがこれからは胸を張って「ダンボール暖かい」と言い返せるだろう。

ダンボールは使う人、住む人次第で冷たくも暖かくもなる。結局世の中にはこの箱を「ダンボール」と呼ぶ人、「段ボール」と呼ぶ人、そもそもの最初からお呼びでない人、この3種類の人間しかいないのだろう。

そんな風にしてオレは今日も狭い世界観の中で生きている。

結婚って、意外と虚しいよなぁ…

つづく


解説

オレは一体何を言っているんだ…?

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