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洋楽の歌詞が深くて楽しい。 Viva la Vida #2(続き)→#3に続く

前回の記事(#1)でViva La Vidaの歌詞の背景事情と、主人公である王様の現在の状況を見ていきました。比較的平易な単語なのに全体の意味となるとサッパリ分からなかったこの歌、今回はサビの部分から行きます。^^

この歌の王様が没落することになった事情はこちらからどうぞ。

王位を追われて今は塔に囚われていると思しき王様、外から何か聞こえてきたようです。それがサビのこの部分。

I hear Jerusalem bells are ringing
Roman Cavalry choirs are singing
エルサレムの鐘が聞こえる
ローマの騎兵隊の歌が聞こえる

なんとなく聞き流してしまってもまあ雰囲気がわかるっちゃわかる気がするのですが、なぜエルサレム?そしてローマの騎兵隊の歌(しかもChoirなので合唱)って何よ?と思ったのでまたまた調べてみました。ネットでググっただけの情報もあるので、この後はあくまでも私の解釈ということでご了承ください。

エルサレムはいうまでもなく三大宗教の聖地です。

「エルサレム陥落」という言葉で検索すると、エルサレムをめぐるユダヤ民族とローマ帝国の戦争に関する記述がいくつも見つかります。私はここらへんの歴史は全く詳しくないので、ここからは個人的な想像に基づく解釈になりますが、このサビの部分のイメージとしてはローマ十字軍の騎兵隊、逃げ惑う人々、戦闘の場面、都市が陥落したことを知らせる鐘が思い浮かびます。

この鐘は人々がついに解放されて自由になったことを知らせる鐘でもあり、民衆を虐げてきた王様を処刑する鐘ともとれます。bellsと複数形になっているのでおそらく一度ではなさそうです。騎兵隊の合唱は人々を解放した歓喜の歌でしょうか、大勢で歌う声が王様がいる塔にまで聞こえてきます。

王様は鐘の音と騎兵隊の歌を聞いて、自分の処刑が近いことを覚悟したのではないのかな、と思うのです。hear (だれそれ) singingなので、まさに今聞こえている状況で、かつての自分の栄光が崩れ落ちたことを実感したような、そんな映像が思い浮かびました。

ちょっと話はそれますが、「ベルサイユのばら」第9巻でフランス革命のときに兵士が「ラ・マルセイエーズ」を歌うシーンがでてきます。フランス革命は18世紀ですが、その時の歌が現在のフランス国歌になってるらしいですね。知らんかった。

そして次の歌詞でまた訳のわからない比喩が登場します。

Be my mirror, my sword and shield
My missionaries in a foreign field

私の鏡となれ、剣となれ、盾となれ
異国の地で私の「宣教師」となれ

直訳したんではサッパリイメージが浮かばないので、ここでもググります。
新約聖書「エペソ人への手紙」第6章です。今時は便利ですね。「鏡・剣・盾」とか雑なキーワードで検索してもちゃんと出てきてくれました。鏡は神の映し鏡、剣は神のみ言葉、盾は信仰を表します。主の御心にそい、善意と神から与えられた武具をもって困難があっても強く生きなさい、という教えだそうです。

そういう前提でこの歌詞をもう一度眺めてみると、自分が処刑されたあとも、人々がこの国で元気に生きて行って欲しい、この国で起きたことを広く他国に広めてほしい、というようなイメージが思い浮かびました。

my mirror, sword, shield と「私の」が強調されているし、My missionariesなので「自分の思いや行いを(同じ過ちをおかさぬように)人々に伝えてほしい」ような感じです。
この王様、処刑されることになって初めて人々の幸せに思いが至ったようです。ここの歌詞、サビにふさわしくすごく感情移入しやすい箇所なので、ためしに歌ってみるとなんだか涙がでてきます。(私だけ?)

For some reason I can't explain
Once you go there was never, never an honest word
That was when I ruled the world

理由があって説明できないけれど
あなたが一度そこへ行ったら(最後)正直な言葉は決して、決して存在しなかった
そしてそれが私が治めていた世界だったのだ

説明できないのはまあわかるような気がしますが、Once you go のYouはだれ?
Youは何しに、じゃないですが、気になりませんか?今まで王様と民衆、騎兵隊くらいしか登場してなかったのに誰よこのYou。

ということで調べてみました。

「ルカによる福音書」第22章、イエスがエルサレムに入った4月1日(パーム・サンデーなので日曜日)民衆はシュロを敷き詰めて「万歳!」と救世主の到来を讃えたが、それがイエスの受難の始まりであり「そこに着いたとたん、一言も正直な言葉は出てこなかった」とあります。このあと、嘘と策謀により同じ週の金曜日にイエスは十字架にかけられて死ぬことになります。


うーん・・・。そんなウラ話、知らんがな、って感じですが、この話を元にして再度イメージしてみると、王様からみたらYouは「この国の人々」もしくは「自分を王位から追いやった人々」くらいの意味でしょうか。

栄華を極めていた頃は自分に従っていた(と思われる)人々、でも実際には自分はこうして処刑を待っていて、人々は自分の死によって自由を得られることで歓喜にわいている、という映像しか出てこないのですが、誰かこの辺の話に詳しいかた教えてください。

で、王様は自分の治めていた頃の国が幻だった、信じられるものは何一つなかったことに改めて気づかされる、ということなのですね。Never, neverって繰り返してるから何一つなかったんですかね・・切ないです。


この後の歌詞では革命の様子が具体的に表現されていて、1番の歌詞で「One minute I held the key」と歌っていた「王様が一瞬だけもっていた鍵」がなんだったのかが明らかになります。

そしてこのサビの部分も最後はちょっと違う歌い方になって意味というか見える映像が変わるのです。最後に見える映像がなかなかドラマチックで、クライマックスにふさわしい仕上がりです。

余談ですが、Coldplayのバンドメンバーたちはこの曲がリリースされたあと、「僕たちのファンが「Coldplayなんか聞いてるのか」などと言われていじめられているのが嫌だった。僕たちのファンが胸を張れるような曲を作りたかった」とインタビューで話していましたっけ。

この曲でグラミー賞受賞、各国ヒットチャートで1位と華々しい成果をだすことになったので、王様のMy missionaries in a foreign fieldは実現したんじゃないでしょうか。おそらくですが、従来のファンだけでなく、若い人も年配の人も広い世代と広い範囲で受け入れられる歌詞とメロディーだったのではないかと思います。

バンドの皆さんはこの歌がリリースから10年以上もたって東アジアの片隅でこんな解釈されてるとは知らんと思いますが・・・サビだけで熱くなって長くなってしまったので、この後の歌詞はこの次にします^^
もしよろしければ続きもお読みいただけると嬉しいです。

それではまた。

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