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スーパーからものが消えてもブラジル人たちは悠然としていた理由

もうブラジル大統領選は終わってしまいましたが、今回もブラジルでの前回の大統領選挙について書いていきます。前回のブラジル大統領選挙中、トラックの運転手たちが自分達の意見を主張するため、大規模なストライキが行われました。
その結果、車のガソリンが枯渇したり、多くの工場が操業できなくなったりと大きな影響を及ぼしました。その中で私の生活の中で大きな問題となったのは、スーパーから多くの食べ物がなくなってしまったことです。

スーパーから食べ物が消えた!

選挙中、多くのトラック運転手の怒りの抗議をする映像や、高速道路でトラックが側道に停められ、運転手たちが道の脇で楽しく遊んでいる映像がSNSやテレビニュースででまわりました。一部の人たちは強い抗議をしていましたが、一方でストライキには賛同するけれどそれほど政治的意見のない人たちは高速道路の脇にトラックを止めて愉快にバーベキューを楽しんでいたりして、それはそれでとても衝撃的で興味深かったです。

ストライキは飛行機や鉄道などのものは他の外国でも経験がありましたが、このブラジルでのストライキはより大規模で、また長期間に及び、次第に多くの店から品物が消えていきました。
トイレットペーパーやおむつなど腐らないものは多く買いだめて何とかしのごうとしたのですが、食品に関してはこまめに買いに行かなければならず、スーパーの棚がすっからかんになっていくのを恐怖の眼差しで見つめていました。

しかし私の周りのブラジル人はそんな私を眺めながら”tranquilo”といった言葉を使い「大丈夫だよ」「落ち着いて」などと悠然と励ましてくれました。ブラジル人はポジティブに物事を捉える人が多く、またポジティブな姿勢を周りの人に見せることがある種「礼儀」のように思っている人が多いと思います。それにしても「今回のようなストライキは人生初だわ」などと言いながらも多くの人が悠然としていたのはどうしてだったのか、私なりに考えてみました。

生鮮食品は知り合いの農家から

まず私が住んでいた街は比較的田舎であったことも関係しているかと思いますが、と街の中心部をはずれるとすぐに農園がありその農園を所有している人が少なからずいました。また知り合いに農家がいる方も多く、そのようなルートで生鮮食品が手に入る状況でした。
私も「知り合いの知り合いの知り合い」というルートをつたって、当時スーパーで枯渇していた卵を手に入れることができました。こう言ったことでも「ブラジルで生活をしていくにはコネクションが大事」ということを痛感しました。

ブラジル人の定番食は乾物でできている。

もう一つの考察は、ブラジル人たちは多くの乾物を使うことができる、という点です。
ブラジルの定番食である”feijão e arroz” あるいは”feijão com arroz”は豆の煮込み料理とご飯のセットです。日本で言うご飯と味噌汁のように定番食です。こちらのメインの材料は「豆」や「米」で乾物です。主食どれも長期保存できるものです。
またこの料理はブラジルでは「完全食」とされているようで、これさえあれば必要な栄養素を摂ることができると言われています。そんな万能な料理がブラジルでの定番料理なのでしたら、スーパーから突然ものが消えても慌てることはなかったのかなと思います。

植民地時代から培われた保存食の知恵

そしてポルトガルがブラジルを植民地にしていた時、航海時に持ち込まれていたさまざまな保存食があります。現在もブラジルの人々に食されて「国民食」となっているもののうち、"bacalhau"というタラの塩漬けはおそらく最もブラジル人に愛されている食材かと思います。こちらは"feijão e arroz"のように毎食食べられるような物ではないかと思いますが、食卓に出没する頻度は決して低くもないかと思います。
"bacalhau"は塩抜きした後コロッケの具にすることが多いのですが、私はご飯の上に乗せ、昆布だしのお茶漬けにして至福の時を楽しんでいました。ブラジル内陸部にいて魚介類に飢えている日本人にもお勧めの食材です。
その他にも野菜の酢漬けも一般的で油っこいブラジル料理の付け合わせにぴったりでした。

ブラジルの知恵を日本でも

私はこの経験を経た数年後、コロナになり再びスーパーから一部の食材が少なくなるという事態に見舞われました。この時は前回に得た知恵を活かして保存食をうまく活用してなんとか落ち着いて対処ができました。
日本でも自然災害などでスーパーから物がなくなる、という事態は十分に起こり得るかと思います。日本の家庭でもその為の対策はすでに多く取られているかと思いますが、そこに「農家との繋がりを作ること」「保存食を使ったレパートリーにブラジル料理も含める」など、ブラジル流の対策をプラスするとより幅が広がり楽しいかもしれません。

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