ころがらない雪だるま。
私が暮らす街は雪が積もる。
小さなころ、冬の朝に布団からドタドタと勢いよく出て、リビングの大きな窓から外をみると、世界は雪でマッシロになっていて、私たち兄妹は「わぁ〜!」と大興奮だった。
冬のとても寒い日の雪を手でさわると、まるで砂のようにサラサラしている。よくわからないけど、雪の中の水分が凍っているのか、とにかくサラサラしている。こういう日に雪玉を作っても、うまく固まらない。サラサラしているから。
外の気温が0度前後の日の雪は、とてもよく固まる。これを「ベタ雪」という。水分がまだ含まれていて雪同士がよくまとまるっぽい。つまりベタベタしているのだ。だからベタ雪。ベタ雪は洋服にもくっつくし、雪かきをするとズシリとした重みを感じる。
北海道の雪質は、世界広しと言えども、惑星最高品質のようで、世界中のスキーヤーが雪を求めて集まる。いわゆるパウダースノー。パウダーだ。パウダーというくらいだから、とてもサラサラしていて、本当に軽い。雪原をスキーで滑ると、たしかに気持ちがいい。
ガチの雪だるまを作ったことがある方が、この中にどれだけいるだろう。こぶし大の雪だるまではなく、子どもの身長くらいある雪だるま。そうだな、130cmくらいの雪だるま。
大きな雪だるまを作るときの雪質はベタ雪が最高に望ましい。サラサラとした雪だと雪同士がくっつかない。仮に大きくなったとしても、粘着力がないから割れてしまう。パカリと。
雪だるまはベタ雪で作るのがいい。最初は小さな雪玉を作ることから始めて、雪の上をコロコロ転がす。
ベタ雪なのだから、雪同士がくっついていく。
「借金は雪だるま式に増える」と金融業界の人間は言うが、本当にそうだ。転がせば転がすほど、雪だるまは大きくなっていく。
7歳くらいのときに、近所の公園で1人、雪だるまを作ろうと思った。
雪玉を転がす。1人でコロコロ転がす。
しんしんと降る雪の中、カラフルであたたなかスキーウェアを着て、手袋をして、毛糸の帽子をかぶってコロコロ転がす。
冬の北海道の子どもたちは、それぞれがカラフルなスキーウェアを着て外で遊ぶ。大人からみると、雪の妖精たちが遊んでいるかのようだ。
記憶の中にある雪だるまを作った日はベタ雪だった。よく雪がまとまる。どんどん大きくなる雪だるま。
私が1人で転がせなくなるほどに大きくなると、それを見ていたほかの子どもたちが1人、2人と集まってくる。最終的に4人で押した。7歳から9歳くらいの子どもたちがエイヤ、エイヤ、セイセイセイと押す。
4人がかりでも転がらないほどの大きさになって、ほとほと困り果てていると、だれかのお父さんが大きなスコップをもってノッソノッソとやってきた。
友だちのお父さん。静かなお父さんだった。てこの原理で最後のひと転がしをやってくれて、雪だるまの胴体部分が完成。
おなじ要領で雪だるまの頭部分を転がす。子ども4人では持ちあげられなくて、友だちのお父さんと一緒に持ちあげる。胴体に乗せる。木の枝をどこかから持ってきて手をつけてあげる。顔に石で目をつける。
よし、これで完成。やったね。
近所の公園にみんなで作った雪だるま。
よっしゃ、完璧。
数日経って、その雪だるまの周りにみんなでまた集まる。
「みんな、見ててね」と私が言って、助走をつけてドロップキック。みんなでつくった雪だるまを見事に破壊。みんなで「いぇ〜い!」と大喜び。そうしてまた雪だるまをみんなで転がす。
…
今朝の北海道は各地で雪がつもった。
札幌はまもなく本格的な冬を迎える。
北海道のいたるところで、カラフルな雪の妖精たちがおんなじことをすることと思う。
【明日夜9時】怒涛のスタエフライブは日曜夜9時
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