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トイレに向かう必要がある。
外を歩いていると、どうしようもなくうんこがしたい。こればかりはどうしようもない。なにも毎秒うんこがしたいわけでもない。
食事を食べてしばらくすると、ところてんのように私の大腸からうんこが押し出される感覚。そんな便意。うんこはところてんっぽいのかも。
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この日の便意はなかなかのものだった。まるで居酒屋さんで提供された1杯目のビールのようだ。
「あい、ビールで〜す」と言われて見ると、キンキンに冷えてやがってなんならジョッキから泡がなみなみしたたっているかのような、そんな便意。
つまりピンチ。そんじょそこらのピンチじゃない。大ピンチ。大便だけに。
トイレに向かう必要がある。
誰にも見られずにうんこができるならどこでもいい。コンビニでもいいし商業施設でもいいしオフィスビルでもいい。ここが森ならできるだけ奥。とにかくトイレ。火急的速やかにうんこをする必要がある。間に合え。
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このトイレなら混んでないだろう、というデパートのトイレに向かった。ここのトイレなら綺麗に整えられているだろうし(清掃の方ありがとう)なにより利用者が少ないはず。
ここの男子トイレには大便用の個室が3室あるはずで、3室すべてが同時刻に利用されているという不幸は少ない。
ここしかない、というトイレ。
デパートに入り足早にトイレの方向に向かうと、私の前方を男性が歩いている。どうやらトイレに向かっているらしい。追い抜くか? いや追い抜けない。絶妙な距離。この男性もトイレに入るだろうが、おそらくおしっこだ。おしっこに決まってる。というかおしっこであってください。希望的観測。それなら個室は大丈夫。
男性の後ろにぴたりとつける。トイレの入り口までやってきた。中を見ると3室ある個室のうち2室のドアが閉まっていた。くそったれが。
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残り1室。割合でいえばこのトイレの個室は66%が占有されていることになる。残り33%の可能性にかける。
私の目の前の男性は個室に向かい、
そしてドアを閉めた。
デムッ! なんでだ! くそったれ!
タッチの差、タッチの差。第何回の開催か知らんがうんこ徒競争でタッチの差で敗れる私。男子トイレの個室3部屋、すべてのドアが閉ざされ私は締め出される。締め出したいのは私のうんこなのに、私が締め出される。
デムッ! Why!?
絶対おれのほうがうんこしたい!
と思って、便意と悲しみをたたえながら他の階のトイレに向かおうと急ぎ踵をかえした私の背後から「ガチャン」という音が聴こえた。天使が奏でる『カノン』のような鼓膜にやさしい響き。もはや「ガチャン」ではなく「カノン」と鳴っていた気がする。それはないか。
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ふり返ると個室の1室から男性が出てきた。無表情の男性。心なしかお風呂上がりのようなスッキリとした顔立ちをしている。
チャンス。チャンス。チャンス到来。
目指すは一直線。
その男性なきあとの個室トイレ。急げ。
トイレから出てきた男性とすれ違うときの私の「顔」を想像してほしい。スンとした顔だ。「なんですか? 別に今すぐうんこがしたいわけではないですよ?」という表情ですれ違う。
ビバ、トイレ。
私が便意を感じてからトイレに着陸するまでのこの一連の流れは、時間にしておそらく6分。その間の私の表情はたぶんずっと無表情だったと思う。
道ゆく誰かの表情から便意を推し測ることは、おそらく難しい。
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<あとがき>
うんこの話なら筆がめちゃくちゃ速く進みます。事実この記事は文字数にして約1,400文字、執筆時間は15分も経過していません。日常の風景や出来事を簡易に切り取れば、文章なんてそんなに時間もかからずに書ける気がします。ただし、テーマがうんこの場合限定の能力です。今日も最後までありがとうございました。
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