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あのカラスは同じカラスか。
「知ってる? スズメの寿命って1年3ヶ月くらいらしいよ。短くない?」
スマホをいじりながら妻がそう話しかけてきた。スズメの寿命? 1年3ヶ月? そうなんだ、と思って「へぇ〜」と返事をしてみる。すると妻は「てことは、いつもみてるスズメは、2年あれば別のスズメに入れ替わってるんだね」と言う。
ほ〜、たしかに。そう思って「じゃあ、いつも街中にいるカラスはどうなんだろうね、同じヤツらだったりするのか、違うヤツなのか、どっちなんだろうね」と聞いてみる。妻は「さぁ、わかんない」と言って、またスマホをいじる。
鳥類はその小さな脳の割に知能が高いと聞く。カラスは人間の3才児と同じくらいの知能を持っていて、毎日すれ違う人間ひとりひとりの顔を覚えてるんだとか。
……カラスといえば、そういえば。
私の妻は動物全般が大好きだ。
どんな動物にも惜しみない愛情を分け与える。道端にカラスがいれば「あ! カーカーだ! おはよう!」と話しかける。最初にその様子をみたときにはギョッとしたものだが、慣れというのは怖いのもので、妻と一緒に歩いていると、私もカラスに話しかけるようになってしまった。
「ひとりでいるときもカラスに話しかけんの?」
こう聞いてみると「うん、カーカー! って言うよ」と妻は真顔で言う。
あとになってわかったことだが、妻はカラスが怖いらしい。犬や猫なら行動の予測ができるが、カラスの行動は予測ができない。なんならあいつらはちょっと頭がいいから、嫌がらせみたいなこともしかねない。襲ってきたりね。
妻はカラスに対して「カーカー! 私はやさしい人間だからぁ!」と謎のアピールをする。
妻がカラスに明るく話しかけるのは、いつも歩く場所にいるカラスから嫌がらせを受けないようにするためらしい。要するに牽制だ。
「こちらはあなたたちに害を与えませんよ。ですからカラスさん、あなたも私に危害を加えないでくださいね」というメッセージをいつも送っているらしい。
「カラスの寿命がどれくらいかわからないけど、仮にカラスも寿命で入れ替わってるとしたら、ずっと話しかけてアピールしないとダメってことになるね」
私が妻にそう言うと、
「うん、これは終わりがないね。国際政治と一緒」
うちの妻は、頭がいいんだかなんだかよくわからない。本当によくわからない。
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<あとがき>
そういや、田舎からカラスを捕まえてきて、それを都会に放ったとしたらどうなるんだろう? みたいな思考実験を妻としてみたことがありました。カラスの社会にも階級や出身地差別みたいなものがあって、田舎から都会にきたカラスは数日も持たずに地元に帰ってしまうのではないか、みたいなやつです。今日も最後までありがとうございました。
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