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鞦韆

鞦韆(しゅうせん)とは、ぶらんこのことである。

私にとっての思い出のぶらんこは二つあった。
一つは学童期を過ごした地元にある、町役場の公園にあったぶらんこだ。
棒状のチェーンで出来た、繋ぎ目に腕を挟まれると痛いやつ。手なんかすぐ錆の匂いが付いたりして、それでもそのぶらんこは皆に人気の遊具であった。立漕ぎや二人乗りもそこで覚えたし、靴を飛ばしたり、いかに遠くまで飛び降りるかを競ったりなんて、やんちゃな遊びもしたものだった。

そしてもう一つは、大学時代のお気に入りの場所。アパートの裏手には高台があって、そこの天辺にある住宅街の崖沿いに、こじんまりと佇む公園があった。ぶらんこと鉄棒しかない、小さな小さな公園。ぶらんこの後ろには大きな桜の木が植わっていて、桜の季節にこの公園を見つけた時には、大層心が躍った。

しかし、ある程度歳を重ねてからのぶらんこの印象は、どちらかと言えば哀愁で、進路に悩んだり、失恋したりした時など、一人でこの公園まで愛車の原付を走らせてよく来ていたのだった。いま思えば、閑静な住宅街の道路脇に昼夜を問わず原付を止めて、一人、ぶらんこに乗っている大人なんて恥ずかしいものなのだが、一人でぶらんこに乗っている大人の心境というものは、大概外面を気にしていられない状況なので、そこは大目に見て欲しい。

仕事を始めてからは、なかなか公園にも縁遠くなってしまった。次は子供が出来たら、このぶらんこに対するイメージもアップデートされるのかも知れない。

近頃の公園は、老朽化や危険防止、またコロナも然りで遊具の取り払われたところも多いと聞く。
思い出に揺られながら、多くの公園に末永くぶらんこが残るよう願いを込めて、これを記す。

鞦韆(しゅうせん)


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