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水温む


人魚ってさ、誰が上半分が人間だと決めつけた?
例えば脳味噌だけが、思考だけが人間なら?

私は深い海の底で、
手足もないまま想いを走らせ静かに揺蕩うだけ。
春になれば少し浮上して鱗を煌めかせ、
夜は瞼のない瞳でじいっと暗闇と対話するのだ。
暫しの間入れ替われるなら、たまにそうなりたいと思う。



「先輩の考えてること、なんか怖いっす。」
そんな声で現実に引き戻される。


……もしかしたら、何も考えてないあの上司たちは、人間の皮を被った人魚かも知れないよ。

これ以上変な奴だと思われるのもあれなので、
最後の台詞は心の中に仕舞っておくことにした。

水温む(みずぬるむ)

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