春霞
霞(かすみ)は気象学上は定義のない言葉で、
視界状況によって霧(きり)と靄(もや)とに使い分けられる。
しかし文学上では、
霧と言えば秋、
春と言えば霞で、
夜になると朧(おぼろ)、というのが
古来より受け継がれた繊細な言語感覚だそうだ。
ふふ、知らなかったことばっかりだ。
でも、これで少しは引き継げたかな。
明障子からは、朝の色が零れている。
薄紫色のじゅらく壁に取り付く違棚に、たなびく雲を想い浮かべながら
手元の硯を再び擦れば、墨の匂いが立ち昇った。
春霞(はるがすみ)
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