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すべりだい|椎名林檎 【あの頃、おしゃれポップと|#1】

「好きな音楽はなんですか?」と聞かれるのが苦手である。

特定のアーティストの熱狂的なファンでもないし、あるジャンルに深い造詣があるわけでもない。
勇気を出して伝えようにも「ん、そのアーティスト知らないなあ」とか「あ、そっち系が好きなんだ〜(遠い目」なんてリアクションされた日には、寝る前に思い出して言わなければよかったと後悔するから、余計にこわいのだ。

さて、そんな記念すべき1回目。
何について書こうかしばし迷ったけれど、やはり初回は林檎ちゃんで行こう。
「すべりだい」は、椎名林檎のデビューシングル「幸福論」のカップリングに収録された一曲。

この曲を聴いて感じるのは、曖昧な空気感、温度、季節の移ろい。
二人の間に流れる関係性を、見て見ぬふりをしてきたこと、
よくも悪くも、ずるずるとした二人の間の空気。
それが心地よかったとも言えるのにね。

高校時代にこの曲を聴いて、私はちょっぴり憧れたもんだ。
大人の淡さ、ずるさ。おしゃれにも聞こえていた。
きっとちょっとしたほろ苦さ、弱さかもしれない、
「年齢を重ねても子供の頃思ってたより中身は大人になってないな」
そういうモラトリアム期のビター。

恋人とうまくいかない時、この曲と重ね合わせて電車の中で泣きながら帰ったこともあったわ。
今だから白状すると、泣きにいった。この曲で感情がブワッとなる自分に酔いしれていた。

椎名林檎という人は、日常あまり使われないような難しい漢字や、響きの綺麗な文語体を好んで使う人だけれど、この曲にはそれがない。

きっと作品にするためにキレイに言葉を変換する前に、もう出ちゃった言葉たちなのだろうな、と思う。

私は、彼女のそういう作品が好きである。

ディストーションかかったような特徴的な声や、最近ではオリンピックの音楽担当をするなど、遥か手の及ばない国民的アーティストのような風格を纏っているけれど。

古参としては少し寂しい。
青いそのままの林檎ちゃんの歌や曲に惹かれていたいのだ。

風くんのカバーバージョンもあったので置いておく。
これもまたこれでよいな。


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