ASD(自閉症スペクトラム)の基礎・対応

発達障害シリーズ第2段以降は、各障害の特徴や対応の基本的なところについてまとめていきたいと思います!

ASDとは

特徴として以下のようなことが挙げられます。

・社会的困難
コミュニケーションの障害(空気が読めない、対人関係を築くのが苦手)

・こだわり
興味行動の限定(特定のものへのこだわり、儀式的行動)

・感覚の困難
感覚過敏または鈍麻(触覚過敏、視覚過敏、聴覚過敏など)

実は、支援者のニーズと当事者のニーズ(困りごと)は異なっていると言われています。

スクリーンショット 2021-02-28 19.14.55

支援者(ご家族)は社会性に関する困りごとを感じていることが多く、当事者(本人)はどちらかというと身体機能の障害に対して困っていると感じていることが多いそうです。
周囲の大人は社会性の障害に注目してしまいがちですが、本人の困りごとにも注意を向けてみる必要がありそうですね。

それぞれの特徴についてさらに細かく見ていきます。

社会性の困難

・対人交流
喜びや悲しみなどの感情を共有するのが苦手
→対人交流が続きにくい、一人が好き、受け身

・言語能力
独り言、おうむ返し、指示が通らない、不自然な敬語、皮肉が伝わらない、例えが理解できない

・非言語能力
表情が読み取れない、アイコンタクトが通じない

社会性の困難は2段階あると言われています。
第一段階:標準から外れた少数派の身体特性

第二段階:少数派の身体特性が社会と関わったときに起きる障害

おまけ
ネアンデルタール人にはASDの発症に関連する遺伝子が見つからないことがわかっており、新しい物にこだわり、挑戦する、ある意味で変わり者がいる現生人類が生き残ったと言われています。新人類、、、自然界で生き残る強さを持っていたということでしょうか。

こだわりが強い

・関心
特定の物に強い興味を持つ反面、それ以外の物にほぼ興味がない
(例:他者に興味を示さず、目線が合わない等)

・やり方
特定の手順を繰り返すことにこだわる、常同的な動作を繰り返す
(例:電車を並べ続ける等)

・ペースを維持
他者にペースを乱されたくない
→乱されるとストレスやパニックにつながる

感覚の困難(過敏・鈍麻)

・原始感覚の困難
触覚、固有覚、前庭覚の困難

・識別感覚の困難
視覚、聴覚、味覚、嗅覚の困難

・その他
時間感覚、温冷覚の困難

ASDの歴史

ASDはその歴史の中で幾度となく、呼び方や定義が変わってきました。
[呼び方編]未だにいろんな呼び方が残っていますね。
カナー型自閉症:自閉症+知的障害(古典的自閉症)→レオ・カナーが報告。

高機能自閉症:知的障害のない自閉症障害(IQ 70以上)

アスペルガー症候群:知的障害がなく、言語機能に問題のない自閉症障害

広範性発達障害(ADD):自閉症障害の診断基準が一部該当するが、自閉症の基準を満たさない

自閉症スペクトラム(ASD)

スクリーンショット 2021-02-28 19.51.01

[定義編]自閉症は何の障害なのか?
1940〜1960(レオ・カナー)
自閉症+知的障害(古典的自閉症)→社会性・情緒の障害
1960〜(マイケル・ラター)
自閉症は言語の習得が遅い→言語・認知の障害(言語が発達しても社会性の困難が減らないのはなぜだろう?)
1980〜(サイモン・バロン・コーエン)
他者視点で考えることができない(心の理論)→社会性の障害(約2割は心の理論をクリアしていた)
2000〜ICF(社会モデル)
身体特性が似ている人同士では他者視点で考えられる→身体機能の障害+社会的少数派

1960年代には、米国の心理学者、ブルーノ・ベッテルハイムが「自閉症の子どもは母親との愛着が弱い」と主張し、冷たい母親が子どもの自閉症の原因であると提唱したことがありました。(冷蔵庫マザー)
しかし、これはその後に英国のマイケル・ラターが自閉症の遺伝性を実証したことにより否定されています。

ASDの支援

支援には、以下の3つが必要と言われています。
環境設定:感覚への配慮(ノイズキャンセリング等)ルールやマナーの見える化

スクリーンショット 2021-02-28 21.43.05

視覚支援:言語の困難への対応として、イラストや写真、動画などを交えて説明
サポートツール:感覚刺激への援助、時間の見通し、体幹サポート

スクリーンショット 2021-02-28 21.44.28

環境設定においては構造化(曖昧をつくらない)ようにすることが有効と言われています。

心の理論:他者視点に立って考える力の支援

知的能力の発達が4~5歳相当で心の理論の力を獲得すると言われています。
ASDのお子さんは言語発達がゆっくりのため、その子によりますが9歳相当で獲得できることが多いと言われています。
つまり、9歳以上の言語能力があれば他者視点を言語を用いて推論できるようになるのではないかと考えられています。

また、言語支援や語彙力支援が社会性の獲得に効果的な支援になるそうです。

声かけのポイント

「〜しません」などの行動抑制系の言葉は何をしていいか分からなくなってしまうので、指示が入りにくくなります。
そのため、「〜します」という言葉にすると行動が明確なので指示が入りやすくなります。
⭐️行動を改善する時は、代替行動を教えてあげるといい!

例)暴れません⇨席に着きます
  走りません⇨歩きましょう
  喋りません⇨プリントをします

最近は早期教育で英語と日本語を一緒に教わる機会も増えていますが
ASDのお子さんは言語の発達がゆっくりなため、複数の言語が存在するとより混乱してしまい、コミュニケーションを取るのが難しくなってしまうこともあるそうです。その場合は、英語はお休みしてまずは日本語に限定して関わっていくとだんだんとコミュニケーションが取れるようになってくることもあるそうです。

ASDのお子さんはパターン認識が苦手なため
周囲の人の会話パターンを理解するのが困難であると言われています。テレビやアニメの会話はパターンがわかりやすいため、真似をして覚えやすいそうです。
実は、ASDのお子さんは方言を話さないと言われています。標準語の方がわかりやすいようです。

大まかにですがまとめてみました🌱
支援者と当事者のニーズが実は違っていたというところが個人的にはとても興味深かったです。胃腸の不調、特に便秘で困っているお子さんも多いようです。
どうしても社会性の支援に目が行きがちですが、そういった身体的な困りごとの支援も忘れずにしていきたいですね。

参考:
一般財団法人特別支援教育士資格認定協会(2018)『特別支援教育の理論と実践』 金剛出版
サイモン・バロン=コーエン(2011)『自閉症スペクトラム入門』中央法規出版
テンプル・グランディン(22014)『自閉症の脳を読み解く』NHK出版
熊谷高幸(2017)『自閉症と感覚過敏』新曜社
スティーブ・シルバーマン(2017)『自閉症の世界』講談社ブルーバックス
櫻井武(2018)『「こころ」はいかにして生まれるのか』講談社ブルーバックス
日本精神神経学会(2014)『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引き』医学書院
榊原洋一(2020)『子どもの発達障害 誤診の危機』ポプラ新書
Spikins P.et al.(2016).Time and Mind 9:289-313
一般社団法人 こども発達支援研究会

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?