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第12回 マンション防災を考えよう

在宅避難生活のポイント10(設備)

こんにちは。マンション防災研究所の城戸です。
マンション防災を考えよう、今回も引き続き「設備」についてです。

エレベータ以外にもマンションならではの設備はたくさんありますが、一般の方にあまり知られていないものの一つに「エキスパンションジョイント」というものがあります。
これは、マンションの建物構成でもよくある「方向の違い建物がつながって1棟になっている」などの場合に、そのつなぎ目によく設置されています。

マンションはお部屋が横に連なった形式が多く、ほとんどが上から見ると長方形の建物です。この長方形の建物がタテヨコにL字型につながっているマンションはよくありますね。
建物が建っている方向が違うと、地震などで揺れるときの揺れ方が違ってきます。
少し例えが違っているかもしれませんが、長い立方体であるこんにゃくを同じ台の上にタテ、ヨコに並べて揺らしたときに、揺れ方の違いが良くわかるのではないでしょうか。

この揺れ方が違うということは、その2つの建物をつないで作ってしまうと、建物の構造に負荷がかかってしまい、破損する可能性が高まってしまいます。
そこで、建設時にはその接点、つなぎの部分に空間を空け、繋がないで建設します。その部分は空きになってしまい、通路などでは歩行するのに危険なため、カバーをするのが「エキスパンションジョイント」です。

実は、大きな地震が発生した後にマンション管理会社への破損個所の通報、修繕依頼が殺到する件数で一番多いものの一つになっているのがこのエキスパンションジョイントの破損のようです。
前述の通り、このジョイントは揺れたときに建物の破損を防ぐためのものなので、破損することを前提に考えられており、ある意味正常に役割を果たしたということなので、心配をすることではありません。
ただし、通行する人は隙間があることで危険も生じる可能性がありますので、すぐに修繕できなくても、ベニヤ板で補強するなどの応急処置をしておいた方がいいと思います。そのための資材なども管理組合で備蓄、保管しておくと安心ですね。

あと、マンションの設備でよくあるものの一つが、機械式駐車場です。
最近は車の保有をする人が減少していて、駐車場の利用率が下がっているところもあるようですが、マンションの敷地の大きさや環境により、重要な設備として欠かせない場合もあります。
この機械式駐車場は、お分かりの通り停電すると使えません。また、現在のマンションが抱える大きな問題をいくつか抱えています。

まず一般的な課題としては、利用者が少なくなって駐車場収入が減少しているにも関わらず、機械の保守、修理に大きな予算がかかってしまうことです。そのため最近では撤去して平地にし、平置き駐車場に変更するところも出てきています。
さらに防災としての課題もあります。近年の台風災害の激甚化に伴い、台風が近づいてきた際に、車両格納位置が地下になってしまうタテ移動の駐車場の場合など、大量の雨水が地下部分に溜まってしまって車両が浸水、水没する可能性があり、台風の通過までに車両を移動して避難させなければならないことがあります。

これことも防災上は注意が必要なポイントなのですが、さらに課題としてあるのは、この移動非難を呼びかける手立てがないことです。従来は、前日などに対策が取れる場合には書面を集合ポストへ投函したり、掲示板やエレベータの中に掲示したりするなどをしていますが、それでも告知が行き渡らないことが課題です。
外出先にいる方などへのお知らせ方法がないために、どうしても対策対応が遅れてしまうということが多々あるようです。
最近では、マンション向けの災害時情報共有サービス、災害共助SNS『ゆいぽた』などのように、普段はつながらない居住者同士が災害時だけつながって情報共有するサービスもあり、管理者からのお知らせ機能もあるので、車両をお持ちの方がスマートフォンなどで情報を受け取れるので、掲示板だけでないお知らせができるようになってきましたので、このようなサービスの導入も検討しておくべきと思います。

さて、まだまだ他にも施設はありますが、今日はここまでです。
次回は年明けになりすが、引き続きマンション設備について考えていきたいと思います。

今年秋に始まりましたこの「マンション防災を考えよう」、お読みいただきありがとうございました。また来年もご覧いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
よいお年をお迎えください。

マンション防災研究所 所長 城戸 学

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