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米空軍大佐と最強棋士の共通点から語る将棋の魅力

こんにちは。Kid.iAです。

つい先日note公式からのお題「#将棋がスキ」が目に留まったこともあり、今回は将棋について少し書いていきたいと思います。

お題が目に留まったのも、6歳の長男とちょうど将棋の勝負をしていたときでした。彼は自宅では私との対局やタブレットゲームで、学校の児童会でも友達と対局したりと最近かなり将棋にハマっているようです。

かくいう私はというと腕はド素人、小学校低学年のときに家の前に住んでいたおじいさんが外で将棋を指していたのを見て興味を持ち、教わりながら一緒によく対局をしていたことが将棋を覚えたきっかけです。

それ以来、頻繁ではないものの自分の生活の中にちょくちょく顔を出す将棋。

それぞれ特徴が異なる駒を頭を使って動かし、勝利を目指すという戦略性の伴ったゲーム性がどうやら自分の好みにも合ったということ、また将棋を覚えて以来今は亡き祖父と会う度に対局していたことも、忘れられない思い出として残っています。

そんな自分にとっての将棋ですが、今回は上述したような話とは少し異なった視点で将棋が持つ面白さ(魅力)について考えていきたいと思っています。

毎回情報を軸に問いを立て、考えたことを書いている本note「Toi Box」ですが、今回のテーマは「米空軍大佐と最強棋士の共通点から語る将棋の魅力」とし、以下の構成で自分なりに書いていければと思っています。

そもそも「なんで『将棋』語るのに『米空軍』がでてくるの?」と思われるかもしれませんが、少しでも興味を持たれた方は読み進めてもらえると嬉しいです。

1. 五年前に投げかけた最強棋士への問い

たしか2016年の7月、今からちょうど五年前に私はある方の講演を聴きにいく機会に恵まれました。

ビジネス関連の講演会として毎月テーマ・講師を変えながら開催されていたその講演会ですが、私が参加した日のテーマは「最強棋士から学ぶ『決断力』」。

そう、その時の講師は棋士の羽生善治さんでした。

初の永世七冠(一定回数以上獲得すると与えられる永世称号を七つのタイトルで獲得)を達成し、2018年には国民栄誉賞も受賞と、今さら私が語るまでもなくほとんどの日本人が知っているであろう将棋界のスーパースターです。

前述した通り、講演本編(今回のnoteでは書きません)自体は羽生さんがご自身の経験を元に「決断力」について語ったものですが、ビジネスシーンにも転用できると思えた貴重なお話しでした。

そんな講演の本編が終わりQ&Aの時間に移ったときに私は思い切って質問を投げかけました。

それが以下のような問いかけです。

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私から羽生さんへの問い

「将棋を『理性』で指すのでしょうか?もしくは『直感』で指すのでしょうか?」

私が羽生さんの講演を聴いて考えたことが、ビジネス視点での「決断力」についてです。

そしてそこには「理性」だけでなくある程度の「直感」も必要という考えを私個人として持っていたので、羽生さん(羽生さんの将棋のスタイル)はどうなのか知りたくなったことが質問の背景です。

もしかすると羽生さんの著書・講演から推測がつく方もいらっしゃるかもしれませんが、皆さんはどんな回答だったと想像されますか?

その回答はこういうものでした。

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正直講演を聴く前まではどちらかというと「理性の人」という印象でした。

しかし彼の回答は意外な回答で、なんと対局中の半分以上は「直感で動く」とのことでした。

そして本編とQ&Aの回答を聴いて、羽生さんの将棋とスタイルが私がそれ以前に知った「ある一つの理論」と紐づいたのです。

2. 米空軍大佐が考案したOODA理論

ここで突然話は変わるのですが、皆さんは「OODA(ウーダと読みます)」という言葉を聴いたことはありますか?

私がこの言葉を深く学んだのは、羽生さんの講演の少し前に出版された公認会計士の田中靖浩さんの著書「米軍式 人を動かすマネジメント」と、その巻末に付いていた航空自衛隊の伊藤大輔さんによるOODA解説を読んでからです。(今回のnoteの文章にも相当影響を受けています。)

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OODAは「Observe、Orient、Decide、Act」という4つの英語の頭文字をつなげて作られた言葉で、米空軍のジョン・リチャード・ボイド大佐により考案されました。

ごくシンプルに表現すると、OODAは「人の認知過程や意思決定プロセスを可視化したもの」と言えます。

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ボイド大佐は空軍所属ということもあり、不確実性が高く、味方同士や敵との摩擦・相互作用が働き、常に状況が変化することが前提の「戦場」という場においていかに迅速かつ臨機応変に戦うかを模索したことがOODA理論の背景にあります。

それは敵自体や敵の行動に対して状況を観察し、分析・方向付けした上で、意思決定を下し行動するという流れで、必ずしも一方方向ではなく反復も存在しながら人間が無意識下で行っているということです。

この5年でよく目にしたのが、PDCAと対比し「どっちが優れていているのか」という視点でOODAをPDCA批判に使用している文章やコメントなのですが、これにはかなり誤解があります。

OODAはPDCAを否定しているものでもなく、それぞれができることの限界や有効性、特徴を踏まえて併用していくことがその本質だと考えます。(例えば、PDCAは計画作成プロセス、OODAは意思決定プロセスとすれば全くの別モノです)

そんな、決断すること(Decide)を含むOODAの認知過程・意思決定プロセスと、冒頭で書いた羽生さんの「決断力」の話が自分の中でかなりリンクして当時一人で勝手に感動していました。

3. OODAで捉える最強棋士の認知過程

そして次に考えたことが、羽生さんの講演で聴いた話をOODAプロセスに(かなり無理矢理感ありますが)当てはめるとどうなるのかということです。

各プロセス毎にスライドに纏めてみましたので一つずつ見ていくことにします。

まず一つ目が「Observe 観察」です。

最強棋士羽生善治の認知過程(羽生さんの発言を元に私が独自に考察)として、こと将棋に置き換えるとすれば以下のような感じではないでしょうか。

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現在の局面を『観察』し、相手の先の一手を読む

OODAにおける観察は「自発的・積極的な吸収」とも訳されます。つまり、ただ眺めているだけではなく、自らの情報処理能力の可能な範囲で盤面から・相手から得られる情報を読むことだと言えそうです。

将棋においてもビジネスにおいても最も重要なプロセスであり、かつ自分の好みとするところだと個人的に思っています。

次に二つ目が「Orient 方向付け」です。

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およそ80通りの中から2~3通りに絞り、次の一手の方向付け

これは実際に講演で聴いてとても驚きました。

「棋士の方の頭の中ってすごいんだろうなぁ」程度には思っていたのですが、なんと一手に対して80通りの候補を考えるという・・・。

そして併せて凄いことが、その中から次の一手に繋がる有効なものを「絞りこむ作業」を行うこと。

普通に想像してみて下さい。80通りからどうやって2~3通りに絞りこむのか。ある意味で80通り考えるより大変なのかなと思ったりします。

この「方向付け」はそれ以降の一手に繋がり、当然その結果次第では戦局は大きく変わるということでOODAプロセスの中でも最も大事なプロセスと位置づけられています。

続いて三つ目が「Decide 決心(仮説)」です。

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相手の一手に対し、必要に応じて『修正』を入れながら自身の一手を決心

本noteの冒頭で羽生さんは対局中の半分以上は「直感で動く」と書いたのですが、同時に話されていたことが「理性を『修正』で使う」ということ。

恐らくOrientプロセスで次の一手を絞り込む過程と併せて、自身が以前に描いた方向性さえも少しずつ修正していくのでしょう。

そんな調整を重ねながら次の一手を決めます。

そして最後四つ目が「Act 実行(評価)」です。

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決心した一手を指し、応じる相手の一手を元に評価

指して終わり、じゃないんですね。

その相手の一手前に指した自身の一手、その結果をしっかり検証・評価するという意味合いがこの実行プロセスには含まれています。

以上が羽生さんの講演で聴いた話をOODAプロセスに当てはめてみた結果です。

まとめ

羽生さんが講演で語られていました。

「誰もが考えもしない・リスクの高い一手を意識的に打つことも少なくない」

と。そしてそれが「自分らしさ」だとも。

まさに「積み重ねによる正攻法」と「奇を以て勝つ奇策」の高速回転。孫子の兵法ですね。強いわけです。(OODAを考案したボイド大佐は「孫子の兵法」にも多大な影響を受けているとのことで、この繋がりも必然ですね。)

また、このOODAサイクルを高いレベル・確度で支えているものが、羽生さんの、積み重ねてきたであろう圧倒的な「経験」と「学習意欲」なのかなとも。

そして最後に、将棋の魅力について思ったことが羽生さんが仰るように「自分らしさ」を表現できる点だということ。

これは他のどのゲームやスポーツにも言えることなのかもしれませんが、将棋ってどこか「理性・知性」だけが重要でそれが勝敗を決するものだと思い込んでいた分余計に印象に残ったんです。

そんなことを踏まえながら考える「将棋の魅力」に対する自分なりの答えとしては、

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高度な『状況認識』と『経験・学習意欲』の積み重ねで、『自分らしさを表現できるとても魅力的なボードゲーム

なのかなと。

今回のnoteをまとめる上でそんな風に思いました。

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今後の創作の活力になります。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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