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編集とは「新しい関係」の発見 -松岡正剛に学ぶ情報編集術-

こんにちは。Kid.iAです。

最近11年ぶりにMacBook Airを新調したのですが、いつの間にかiTunesがなくなっていたり、USBポートがないことに気づかなかったりと、かなりの浦島太郎状態でした・・・。

ですが、そこは最新のM1チップ搭載モデルということで、今のところ快適に使用できています。

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(これでnoteの更新頻度も上がるはず!?)

毎回情報を軸に問いを立て、考えたことを書いている本note「Toi Box」ですが、前回投稿にて告知をしました、複数の視点から「編集とは何か?」を考えていく「編集・三部作シリーズ」。

今回はその第一弾ということで、「生涯一編集者」をモットーとする編集者でありながら、編集を「編集工学」という学問として捉え学び、広めている学者でもある松岡正剛氏をピックアップします。

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私自身特に彼の主宰する学校に通ったわけでもなく、書籍等を通して学んだことが中心ということもあり、今回まとめる内容は見る人からすれば「基礎中の基礎」だと思われるかもしれませんが、彼の編集術に触れることで見えてきたことについて、以下のような構成で自分なりの解釈も交えつつ書いていければと思っています。

1. ヒトとモノの「あいだ」

まず「編集」というものを理解していく前に、松岡氏は著書や各メディアの中で、前提として「情報」についての理解を促しているように思えます。

彼の著書の一つ「17歳のための世界と日本の見方」で書かれていた言葉を引用すると、情報とは「人間文化がばらばらに発するすべてのメッセージ」であると語っています。

“人間文化”とあるので、当然“ヒト”だけではなく、ヒトが生み出す“モノ”も含めて生じているメッセージが「情報」である、ということですね。

そして、それらメッセージの「意味」を味わうことが大切であり、彼はそのことを別の表現で「“ヒト”と“モノ”の『あいだ』を見ること」と述べています。

上記について、「要はこういうことかな?」と一枚のスライドにまとめました。

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これはよくマーケティングの世界や文脈で語られている内容と同じことだと、個人的には解釈しました。

例えば、全く同じ商品(e.g.コップ)を手に取っても、人によって感じ方が異なる、それぞれの人にとっての「意味」や「価値」が存在するという話です。

松岡氏は「あいだ=関係」であること、つまりは「関係の発見」こそが編集を理解する上でキーになるとしています。

一般的に「編集」という言葉は、本や雑誌に対して使うイメージが真っ先にくるかもしれませんが、もっと広い意味で考えると、料理をすることも、研究開発をすることも、スピーチをすることも、すべて「新しい関係の発見」をしていく行為と捉えることができます。

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結論として、「編集する」という言葉をもう一段具体的に表現するとすれば、

編集する
  情報を「区別」して、
「あいだ」をつなげて、
「新しく関係づける」こと。

と言い換えることができるわけです。

2. 「編集」のはじめの第一歩

ここまでで「編集する」ということが一体どういうことなのか、大枠は掴めた気がします。

次に、私たちがそのスキルを上達させようと思ったとき、どのようなことから始めればいいのか(意識すればいいのか)について書いていきます。

編集というものが、1. 情報を『区別』して、2.『あいだ』をつなげて、3.『新しく関係づける』ことだとすれば、その最初の動作である1.に注目すればいいわけです。

つまり、私たちの目の前にある「情報」というものは「区別できる」ということです。

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大きさは変わるものの、ケーキは何回切っても「ケーキのまま」です。しかし、「情報」というものは人それぞれの区切り方(=区別)によって「意味が変わる」ものです。

例えば、自分の目の前に沢山のヒト(=情報)がいたとしても、一人ひとりを何かしらで区別することができなければ、その情報は「ただの群衆」でしかないということです。

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「区別」しなければ見えてこないものがある。それは冒頭で書いた「あいだ」のことでもありますね。「情報」を扱うこと、「編集」することの本質は“区別力”にある。そのように松岡氏は述べているわけです。

3. スポーツ選手も「編集者」!?

さて、「編集」というものをここまで書いてきたような意味合いで捉えると、世の中でヒトがおこなっていることの多くが、実は「編集的な動作」であることがわかってきます。

松岡氏は過去に、ラグビー界のレジェンドの一人である平尾誠二氏との共著で「イメージとマネージ-リーダーシップとゲームメイクの戦略的指針」という本を執筆されています。

その書籍を読むと、ラグビーというスポーツがいかに「編集的」であるかが多くの視点で書かれているのです。

例えば、ラグビーでいうところの「イメージ」とは個々の選手がどれだけプレーの選択肢を瞬時に持つことができるかであり、その中から最適な選択を選んで実行(「マネージ」)していけるかが重要になるといった内容です。

つまり「シナリオ選択能力」が重要であり、それ自体が「編集力」であると。

それを読んでみて、私はずっとサッカーをしてきたこともあり、近年Jリーグの東京ヴェルディやセレッソ大阪、清水エスパルスで指揮を取っていたスペイン人の名将ロティーナ監督が大好きなのですが、彼が某雑誌のインタビューで選手のマネジメントについて尋ねられた際に以下のように語っていたことを思い出しました。

ロティーナ監督の某雑誌インタビューより一部抜粋
私は常に選手たちに「しっかりと試合のシチュエーション、相手を見て判断しなさい」と伝えています。(中略)だから、私はトレーニングにおいて一つの解決策を選手に与えるのではなく、3つくらいの戦術バリエーションをシミュレートできる状況を提示し、選手が自分で各状況における最適解を選べるよう指導しています。

まさに、上述した「シナリオ選択能力」を育てるための指導と言えそうです。

話を書籍に戻すと、松岡氏が「スタンドオフ」というポジションは全軍の動きを見て、次の一瞬のゲーム展開を「方向づける」点で非常に編集的だと語れば、平尾氏は、あるときスタンドオフより一つポジションが隣のインサイドセンターの方が「視野が広がる」ことで相手のことを動きが全て見えることに気づき、従来スタンドオフが行なってきた「いくつかの判断(=役割)」をインサイドセンターに譲渡することを試みたと述べていました。

そして、一次スペース、二次スペースというように、常にスペースを空ける(つくる)ことを意識し、ゲーム中はたえず「間(ま・あいだ)」を設計しつづけており、そこからラグビーを「関係を発見するスポーツ」だと例えています。

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私は同じことを、先のサッカーの例もそうですし、プロゴルファーの松山英樹選手の書籍を読んだ時にも感じました。ゴルファーも、場面ごとの状況を読み、クラブやスイング、アプローチ等を選択しているわけです。

チームスポーツでも個人スポーツでも、スポーツには実に多くの「新しい関係の発見」や「関係の再構築」があり、それらを認識してプレーの精度を上げていける選手が強い選手なのだなという印象です。

また、とりわけスポーツに限らず、ビジネスシーンでも大切だという理由で注目したいと思ったのが「スペース(空き・余白)」についてです。

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頭の中に入ってくる情報が多すぎるとまずそれらの処理が大変ですし、新しい発想も生まれにくくなります。

しかし、頭の中や自身の予定などにも「空き」があると、そこに新しい関係性や情報が入ってくるようになります。

スペースをいかに空けるか。

これも「編集」の大切な要素となるわけです。

まとめ

新しく始まった「編集・三部作シリーズ」、今回の第一弾いかがでしたでしょうか?

私も「編集」というものを自分なりに学んでいく過程で気づいたことなのですが、松岡氏の定義に基づけば、実は私たちは全員幼児期の頃から「無意識に『編集をしている』」ことになります。

子どもがモノゴトを主体的に学ぶ態度や、能力の成長・発達というものは、主に5歳までの幼児期に形成されると言われています。

そうした時期に、モノを「集めたり」、「分けたり」、「並べたり」することで、五感をフルに働かせて、自分の周りのセカイのあらゆることを「区別していく」わけです。

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幼児期における「知性の働き」とも言えるこの発達過程は、無意識下とはいえとても編集的だと感じました。

今は大人になり、どうしても後天的な学び方となってしまいますが、私自身今回このnoteをまとめる過程で「編集」というものについて自分なりの学びを深めることができたと思います。

今回何かしらのきっかけで本noteを読んでくださった皆さまにとっても、少しでも「面白い!」「理解が進んだ!」と思って下さったのであれば幸いです。

次回は「編集・三部作シリーズ第2弾ということで、誰もが知る二人の偉大な編集者、元アニメージュ編集長でありスタジオジブリのプロデューサーでもある鈴木敏夫氏と、元週刊少年ジャンプの編集長をされていた鳥嶋和彦氏をピックアップし、お二人の共通点などから「理想の編集者像」みたいなものを考えていければと思っています。

もし記事に少しでも共感いただけたなら「スキ」や「フォロー」をしていただけると嬉しいです!

今後の創作の活力になります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

(追記)以下、シリーズ全編をまとめています。

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