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【真実の反対】

『未明におきました大きな揺れに関し、調査をしております、金村先生に伺います。
先生、久しぶりの大きな地震でしたが…』
『え~、まず今朝のは、地震ではございません』
『あ、え?先生…それは…』
『地震ではなく、西カオス共和国による、地中爆弾による攻撃でして…』
『や、あの…いったんCMに!…』

「なんだいまの?」
一般家庭の食卓。コーヒーを飲む旦那がテレビに呟く。
「どうしたの?」
「なんか今テレビで、権威者の先生が、今朝の地震は爆弾攻撃の揺れだったって…」
「そんなことあるわけないじゃない…」
「そうだよなあ…」
「あ、CM明けたよ」

『只今不適切な表現がありましたこと、謝罪いたします。なお先生個人の見解で…』

「あれ…無かったことにしてる」
「先生も出てこないね…朝の生放送だからなんか目立ちたかったのかなぁ…」
「他の局はやってないのかな…」
ザッピングを始める旦那。

『震源地は茨城県南部震源の深さは…』
『あそこの断層は50年以内に…』
『では続いてのニュースです。女優の…』

「やっぱ、どこも言ってないじゃん」
「そりゃあそうだよ」
「ネットに出てたりして」
パソコンを食卓に乗せる旦那に
「遅刻するよ!いいじゃない、会社行ってあとで見てみたら!」
やばい!と慌ててパンを頬張り、もごもご言いながら、家を出て行った。


その日、旦那は帰ってこなかった。
いや正確には、帰る我が家も無くなった。
もっと正確に言うならば、今朝の情報は嘘ではなかった。

西カオスの攻撃…それだけではなく、第三次世界大戦の狼煙だった。昼には、他の国からも一斉攻撃が行われ、夕方には我が国の殆どが焼け野原になった。


政府の要人は今朝の時点で海外へ逃げた。
研究者は知っていた。報道規制で、誰も真実を伝えなかった。

朝の放送事故を装った「金村先生」は生放送を狙った確信犯だったのだろうか。
しかし今となってはそれを知る術もない。
私自身が、もうこの世にいないのだから…


     「つづく」 作:スエナガ

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