本当においしいものを食べたとき
本当においしいものを食べたときって、
違う場所にいるような感覚になる。
とある有名店の桜餅を食べた。
外側のもち米部分はもちもちしつつも、お米の粒がほどよく立っている。中のこし餡は、甘すぎないものの、香り高い上品な味わい。こし餡はしっとりしていて、外側のもち米と食感の相性がまたいい。これを桜葉のやさしい塩気と合わせる。
贈り物でいただいた、いつもより贅沢な緑茶を口に含んだ瞬間、茶室にいると錯覚した。たたみと着物、赤い敷物が脳裏に浮かぶ。
おいしいものは、私を別の場所へと誘(いざな)ってくれるなぁ、と思う。
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先日食べた、牛丼もそうだ。
とある高級焼き肉店の牛丼である。質の高い牛肉を使い、平日のランチタイムだけ500円で提供している。破格の安さだ。
ワンコインランチをいただく気分でお店に入ったのだが、
食事を口にした瞬間、上品な出汁の香りと素材の甘みが口の中に広がり、着物を着ながら懐石料理を食べていると錯覚した。
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また、とあるパン屋で買った
オマール海老のソースがかかったクロックムッシュを食べたときもそう。
ソースの香りが上品で、屋外にいるのに、ドレスアップして結婚式場でフレンチのコースを食べている気持ちになった。
最近、よく感じるようになったこの感覚。
一瞬で私を特別な空間に連れ去ってくれる感覚が、不思議でしょうがない。
どんな気持ちでどんな服装でいたとしても、
口にした瞬間、
景色を再現できるような味を作り出す人たちに感動している。
文章でも同じことができるだろうか。
読んでくれる人をどこか特別な場所に連れ出せるような、そんな文章を作れるように私もなりたい。
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