中学受験は「悪」なのか?
中学受験は「悪」ではない。
これが私の答えなのですが、
ならば何故、
私が中受に関していつもメッセージを発信しているのか?
何に引っ掛かっているのか?
年度が終わるこのタイミングで整理しておきます。
一生において、
小学生の時期は一度しかない、
やり直しはできない、ということ
これを認識して欲しいに尽きます。
…って、言われなくてもわかっているし!
当たり前すぎる事です。
でも、子育て中の親たちが、
学校の成績にばかり不安を訴え、先取り教育について熱心に語っていて、
それを受け入れる他ない子ども達の暗い表情に気づかない様子を見ていていると、
この重要な視点が欠けているかもしれない、と不安になるのです。
順風満帆のその先に、大きすぎるショック
以前勤務していた大手メディアでは、
高学歴の学生をたくさん採用していました。
1を教えたら10を理解し、
さらに100の返しをする群を抜いて優秀な社員も多く居ました。
一方で、
高学歴で優秀に見えるけれど心が折れやすい人も多く居ました。
社会人となって初めて遭遇する”理不尽”にショックを受け、
心が折れてしまう新入社員も多く、
自分が人事部だった頃は採用前から当事者を見ていたので、
幼少期からエリートコースを歩んだ自信の塊のような子が、
なぜこんなことに…?と驚きました。
もしかしたらこの「エリートコース」にも、
何かトラップがあるのかもしれない。
…そう思って関連書籍を読むと
人がレジリエンス(立ち直る強さ)を高めていく過程には、
子ども時代の過ごし方が大きく関連するとわかりました。
また、我が子が失敗しないよう親が先回りしすぎることも、
レジリエンスの獲得を阻害しているとのこと。
就職まで全て順調に進んだ先に、
うまくいかない事にぶつかり、
自分をどうコントロールしたら良いかわからなくなってしまう。
もしかしたら、
レジリエンスを高める経験を十分にしてこれなかったのかもしれません。
親(大人)は友達の代わりにはなれない
小学生の時期は心身の成長の真っ只中。
小さな階段(課題)を1つずつ、
自分の足で登る(クリアする)。
これを繰り返して、
大きな段差も乗り越えられるという自己効力感を含めた
心身の土台ができあがります。
この成長期に、
食事・睡眠・運動と同等に重要なこと、
それが「友達と遊ぶこと」と言われています。
人間は、他人との関わり無くして生きられません。
友達同士だからこそ遠慮なくやりあうことができ、
その中でコミュニケーション術の基本的なルールを学び、
身につけていきます。
気遣いのない子ども同士だと理不尽なことも多々あり、
小さく傷ついてはそれを乗り越え、
自分自身のコントロール法も身につけていきます。
家族でもない、大人でもない、
同等な関係の中で学んでいくことに意味があります。
賢くて勉強もできるけれど、
人とのコミュニケーションがうまく取れない。
社会に出てからこれを習得するのは、
きっと子どもの頃の何倍も苦労することでしょう。
立ち直る強さを身につけてほしい
「友達と遊びたい」という気持ちに無理に蓋をさせ、
未来のためにと我慢させすぎることは、
リスクとなり得るのではないでしょうか。
中学受験は「悪」ではなく、
それを優先事項にするあまり、
小学生という時期を 軽視しすること が「悪」とだと考えます。
大切なことは他にもたくさんあるからです。
VUCAと言われる時代、
見通しの立たない人生100年において、
心が折れそうになる事態は何度でも起こり得ます。
私たち親が先にこの世から去っても、
しっかり1人で人生を歩んでいけるよう、
小学生時代に必要な時間や機会を取り逃がさないようにしたいものです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?