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夫、HTLV-1検査に挑む。【HTLV-1キャリアでもある私】回想・・30

私がキャリアとわかり、2年近く経過していた。夫とは、HTLV-1について、いろいろ話すことができるようになったが、夫の感染はどうなのだろうか。以前のように無理強いはしないが、男性からの感染率が高いということで、私は夫からの感染を疑っていたし、長年喫煙していることでも、夫の体が心配になっていた。キャリアの人にも、やはりタバコは良くないらしい。結婚前には大病もしていた人だ。 検査の話をすると、どうしてもはぐらかす。
モヤモヤをa先生に話す。まず、私が夫からの感染では?と疑う点について・・「あくまでも検査しないとわからないよ。」とご返答でありながら「ご本人の意思でなく、家族が無理に検査させること」には、勧められないと話して下さった。そのお言葉の裏に、大変にデリケートな問題ということ、恐らくキャリアと知ったご家族のなかで、いろんなケースの、深刻な問題が起きているのでは・・と、私なりに察した。
何が何でも、「データ収集のため」と無理に検査を勧めないa先生にも、私は安心する。
キャリアのデータは、病の解明のために、研究者が求めている現実がありながら、本人の気持はどうなのかと、a先生は向き合って下さる。

a先生の、ご専門的アドバイスのなかに、キャリア家族を、人間として扱って下さるお心に、胸が熱くなった。

a先生とのやり取りをそのまま、夫に伝えた。これまで、幼い頃からの体験も重なり、病院嫌い・医者嫌いであるのは聞いていたが。今回は、静かに「検査する。」と言った。ただし、私や息子と同じa先生の所に行くのは嫌で、病院も遠くで嫌という。病院行く条件をつけてきたことに、ムッとしたが、本人の意思を尊重。大進歩だ。仕方がない。


近くの総合病院の血液内科を、夫は希望した。嫌な気持ちがかすめた。
私は、病院で検査してもらえない経験をしてきた。ドタバタ劇にならぬよう、前もって、HTLV-1検査ができるかできるか病院に電話した。受付担当者が、確認してくれ「大丈夫ですよ。」と答え、外来に訪ねる時間帯も教えてくれた。

少し気が楽になり、病院に行った。 ところがである!!!

総合受付けで看護婦長という方が、まるで門番のような態度であった。まず「なぜここにきたのか・。」を問われる。予め電話で問い合わせ、確認をとった事、夫の希望で近くが良いので来たことを伝える。そして呆れたことに「HTLV-1の検査をしてほしい」と伝えているのに、ずっと「HIV検査」だの、どんなに「HTLV-1」といっても、「HIV」に置き換えてしまう人だった。間違い検査をされてはたまったものではない!
その看護婦長は、ネット検索で調べながら私に、HTLV-1の事を聞いてくる始末。 次に診察窓口の担当者とやり取りしていて、医師が受け入れるかどうか確認していると言い出した。何だか、メンドクサイことになってきた。
私は「検査だけ希望なんです。ご専門でないと検査は難しいことなんでしょうか。」と看護婦長に訊ねてみた。「いいえ!うちの先生は優秀です!」とズレた答えが返ってきた。続けて「へえ・・こんな病気もあるのね。知らないかったわ。」と嫌味を言いながら、冷たい態度をされた。地域で悪名高い噂の病院だけある・・。
(「だから、a先生の所が良かったのよ!」と、小声で夫に当たるわたし・・。)

30分ほど待たされ、看護婦長が「『検査だけなら。』と先生が言っています。それで良いですね。」と念を押すように確かめてきた。キャリアは受け入れたくないってことだ。

もしキャリアなら、a先生の所へ行くことになる。また夫を説得しなければならない・・。

ようやく診察室に通された。医者は開口一番、面倒くさそうに
「この病気はね・・南の人達の病気だから・・。」(呆れた!未だに風土病扱い!)

「男性からの感染と言われているんだよ。」と、ちらりと夫に冷たい視線と言葉。夫、しょげる。
「検査しないとわかりませんから・・。」と反論する私。(この医者、a先生と違う!)

障がい者の夫の介助で付き添ったのだが、同席した私がキャリアとわかった経緯が、息子の献血の結果からであったことの話になった。「献血を検査利用に使う“やから”がいるからね・・。」と腹立つことを言った。もちろん反論した。はじめての献血でキャリアとわかったのだのだ。それに「やから」とは、なんだ! 検査も渋々で拒むくせに、矛盾した人だ。
血液内科医って、何!?

再び医師の口から念を押されるように「検査だけなら・・。」と言われ、検査室へと向かったのである。

凄くクタクタになって帰宅した。夫は、「あんな看護師や医者でも、最初は、立派な志があって、人を助けたいと、純粋に思っていたはずなんだよ・・。どうして、ああなってしまったんだろね。」と、人の良いことをしみじみ語っている。夫は、滅多に怒らない。 


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