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ドゥルーズ『差異と反復』を読む

ドゥルーズ『差異と反復』(河出書房新社)を読了。

ドゥルーズはフランス現代思想の代表的な人物の一人。他にその主な哲学者にはデリダ、フーコーがいる。本書はドゥルーズの代表作であり、現代思想には外せない一冊。

本書は難解で知られている。一読しただけでは、私も理解できなかった。哲学者の千葉雅也は一読しただけでは理解できず、分かるまでに5年かかったと言う。玄人の哲学者でもそうなのだから、まして、素人の私に理解できるはずがない。この逸話からも本書の難しさを窺い知ることができる。それでも、なんとか読み終えることができた。後には、達成感が残った。寄り道や休憩もしたが、読み始めてから終えるまでに1年かかった。

本書はプラトン哲学のイデア論を転覆しようという試み。帯には「《同一性》《自我》《理性》への挑戦 プラトン以来の(…)伝統思考からの解放を主張」とある。同一性とは、プラトン的イデア、神、デカルト的自我である。その挑戦が成功したかどうかは、私には判断ができない。他に、フロイト、ニーチェ、スピノザ、ベルクソン、キルケゴール、ライプニッツ、ヘーゲルなども出てきた。

序論の第1文には「反復は一般性ではない」とある。これは例えば、反復横跳びが分かりやすいと思う。同じ様に跳んでいると見えても、足の位置などが少しずつズレている。毎回違う。つまり、この反復は一般性ではない。これは人生に置き換えたら、一期一会である、と言えるかもしれない。人生は一度きり。同じような毎日でも、一日一日、どこかが違う。毎日、反復しているように見えても、それが一般性になるとは言えない。私はそう解釈した。

本書はドゥルーズの博士論文(1968)の全訳である。普通、博士論文は他の哲学者の研究成果を論じることが多いが、彼はこの段階で既に、独自の哲学を展開している。それだけでも、ただ者ではないのだが、この難解な論文をよく出版社が本にして世に送り出したなと感嘆する。彼の努力だけではなく、そういう恵まれた環境にあって、ドゥルーズは歴史に残る哲学者として大物になっていった。


単行本(ハードカバー)



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