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TOEIC900点取っても安心してはいけない理由

TOEICに関するリツイートをしたところ皆さんより反響をいただいたので、もう少し深くお話してみたいとおもいます。

私は、外資系を渡り歩き、現在はある企業でマーケティング本部長をしています。入れ替わりの激しい外資系ということもあり、自部門だけではなく、関連部門の面接に多く関わっており、数えてみると昨年は48人も面接していました。

外資系によくみられる面接までの流れとして、エージェント(ヘッドハンティングファーム)のリクルーターがいて、最初のコンタクトの段階で、電話もしくは面談を通じて、事前に英語のチェックをしています。リクルーターが外国人の場合は、英語での会話を通じて確認されます。

しかし、
・ペラペラな候補者で募集要件に合う人がなかなかいない
・日本語で業務できればとりあえずよい
・エージェントにとって、早く入社させてしまいコミッションを取る
という事情から、英会話のレベルが中学英語レベルであっても、Businessレベルと評価して紹介しくることが多いのです。

近年、日本経済の成長に陰りが見え、日本の市場の魅力もどんどん落ちてきたこともあり、外資系の日本法人はアジアパシフィック法人の配下に位置づけられている企業は少なくありません。そのため、業務上英語でアジアパシフィックのメンバーとコミュニケーションすることは避けられなくなっています。

もちろん、ポジションが高い本部長や部長といった管理職になるとその上司が外国人となるケースが多いため、選考プロセスの過程で、将来の上司達と入念に英語で面接します。しかし、担当者レベルの選考となった場合、英語面接を課す企業はまだまだ少なく、TOEICの自己申告スコアで英語は大丈夫だと判断するようです。

そのため私の所属企業では「英語は“話せますか”?」と質問することになっていますが、大半の英語に自身のない方々は必ず

「ネイティブ級ではありませんが、日常業務はこなせていると思います。」

と答えます。このような回答をいただくと、その場で次に「あなたの強みは何ですか?」という英語で(簡単な)質問をするのですが、まともに答えられた人はほぼゼロだったのです。以来、実際の英語運用能力とTOEICのスコアの関係はどうなのかと疑問に思っていました。

英語の運用能力は、海外在住年月の長さとも関係が大いにあると思っています。具体的には、海外生活10年以上>海外4年制大学卒>交換留学という様に滞在年数に応じて英語力が高くなると思われますが、ここにTOEICのスコアがどの相関するのだろうかと疑問に思ったのです。

実際に見てみると、海外生活10年以上のネイティブ級帰国子女になると、975点以上を持っている方が多く、満点との差はマークミスなどのケアレスミスレベルだと思われます。ちなみにこのような方々は先ほどの簡単な質問をした後には、Googleの面接で質問するような内容を質問させていただいて徹底的に評価させてもらっています。

次に、留学経験者です。十分に日常業務で英語運用できるレベルの方で950点以上を持っている人が多いです。また、4年制大学に留学していた人と、交換留学をしていた人とでは、帰国後の英語運用能力にも大きな差がある印象です。毎日課される宿題のレポートを英語で書き、クラスメートとのディスカッションをこなしていた経験が差の要員ではないかと考えています。TOIECスコアに関しては、満点の990点と40点ほどの差は、細かい取りこぼしの結果ではないかと思います。

それでは900点以上ではどうでしょうか?よく、TOEICは900点以上取れば、錯覚資産(”人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている”、ふろむださんの著書より)として高く評価される方が多いようですが、たしかに大半の日本企業において900点というスコアは、かなり重宝されると思います。しかし、常日頃英語でのコミュニケーションが求められる外資系においては、TOEICのスコアが高いだけでは日常業務をまともに推進することができず、自身の存在価値すら脅かす可能性があります。

TOEIC900点程度の方のなかにも、海外経験が長い人がいます。この方々は意外と文法やリーディングをおろそかにしていて、リスニングは問題なく、スピーキングもマイナーな文法エラーがあるくらいで問題ありません。要はテストで高得点を取るスキルの問題だと考えます。

上記のようにまとめてみましたが、必ずしもこれが絶対というわけではありません。リーディングセクションで3割ほどマークできず、900点取れなかったアメリカ人(見た目は日本人です)で慎重すぎる性格の部下もいましたし、一方海外経験なくても、努力されTOEIC高スコアをもちながら、問題なく英語を使いこなせるかたもいます。

ちょうどメディアをみていたら外資系と英語の必要性について下記のような記事を目にしました。

記事によると、

たとえば、ベースとなる会話が英語だった場合、「英語力をさらに磨く」ということにどれだけ価値があるだろう。それで社内評価はどれだけあがるのか。
(中略)
ビジネスシーンにおいてまわりから評価される能力・成果は画一的ではない。激しい競争のなかで、いかに自分のポジションを築くか。これは入社前における選考でも重要な視点だ

一見すると英語<<<実務能力と解釈できます。たしかに日本法人のメンバーに仕事ができることを認めてもらうことは重要ですし、実務能力がないと日本法人の中でやっていけません。しかし、冒頭にあげたように、上位組織がアジアや本社となり、業務上英語でアジアパシフィックのメンバーとコミュニケーションすることは避けられなくなっていることや、管理職のような役職を目指す場合は英語が話せないと致命的なのです。TOEIC900点とれてるから良いわけでもありませんし、TOEICにとらわれず使える英語力はさらに磨いていく必要があると思います。



大手企業6社を経て某外資系のマーケティング本部長してます。祥伝社より『もう会社に頼らない。SNSブランディングという生き方』出版。米国MBA取得。年収増、転職、リストラ、外資系の実態などの話をしています