食べものは消えてしまうから|『生まれたときからアルデンテ』読書感想文
著者、平野紗季子さん。
わたしはもうすっかり彼女のファンになった。
ひとつひとつの食べものに対して、こんなにも真っ直ぐに、一対一で向き合っている人に、これまで出会ったことがない。
それは、人と食事をすることで、食べものの味に向き合えないことに心苦しさを感じるほどの真剣さ。
『共食は時々食べものを殺す。』の一文に、わたしはドキッとした。
平野さんの文章は、表現が豊かで面白い。
思わず頷いてしまう例え、言葉選びの大胆さ。
そして時折、核心をつくような一節に、背筋をひゅっと伸ばしてしまう。
ここ数日で自分が食べたものを思い出す。
どんな味がしたっけ。作った人は?
そもそも、何を食べたか覚えてない…?
空腹を満たすために、もしくは、人と話すときの間に入るものとして、誰が作ったのかわからないものを食べる。
最近、ほとんどの食事がそうだったかもしれない。
なんだかすごく、もったいないことをしてきた気持ちになった。
ちゃんと食べものに集中してみたら、きっといろいろな発見がある。その機会を逃しているんだな。
読み終えた後も、もっと読みたくなる。
食べものやレストランへの愛、新しい発想、独特の表現力、あらゆる部分をもっと知りたい。
だから、すっかりファンだなと思う。
食べものやそれを囲むものたちを愛する平野さんには、好き嫌いはないのかな?
そう思っていたら、きらいな食べもののこともちゃんと記してあった。
そのひとつが、レーズン。
それでもやはり、レーズンへの、食べものへの愛を感じてしまうのだ。
こちらは、平野紗季子さんがディレクターをされているお菓子屋さん。
レーズンサンドのエピソードはここにも。
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