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『傲慢と善良』を考える|読書感想文(ネタバレなし)

あらすじをほとんど書いていない感想文です。ネタバレももちろんなし。


「人生で一番刺さった小説」という帯。
んなわけあるかい、と思いながら、惹かれて買ってしまった。
ずーんと暗く、考えこんでしまうような物語をあえて読みたい、観たい、そういう気分だったのかもしれない。

主人公たちは、私より少し上の世代。でも読んでいるとそれを忘れる。時に共感するし、時に理解できないし、なんというか、ものすごくリアル。
内省的な描写が多く、一緒に考えこんでしまう場面がたくさんある。
でも、ずーんと暗いかと言われるとそうではない。

20歳前後で読むとまた違うんだろうか。40歳でも、また違うかもしれない。

この物語には、わかりやすい極悪人は1人も出てこない。
ただ、それぞれの人物の中にある傲慢さと善良さを、はっきりと見せつけられる。そしてそれが誰しも自分の中にある何かに響いて、心を掴まれる。もっと言うと、心を抉られるような気持ちになる。

序盤からずっとその調子で、ちょっと苦しくなりながらも、話が面白いからどんどん読み進めてしまう。
いったいどうやって物語が結ばれるのだろう、という期待と、このままチクチクと刺されるだけなんだろうかという不安。

けれど、後半。そんな不安を忘れてしまうほどの、チクチク刺されていたことがちっぽけに思えるような清々しさ。壮大さ。威厳。そんな気分になっていく。

こんなふうに書いていて意味がわからないし、的確な表現が見つからなくてもどかしい。けど、そういう読後感。
ああ、この気持ちをわかってくれる人はいるんだろうか。

なんだか、映画を一本観たような気分。
余韻に浸りたくなる小説。
きっとまた読み返すと思う。

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