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彼らの未来、わたしの未来|『告白』読書感想文(ネタバレなし)

暗くて、とにかく重い話が読みたい気分。
「そういう年頃だね〜」なんて母は言いながら、湊かなえや凪良ゆうをオススメしてくれた。

実家の本棚には、小説やエッセイがぎっしり詰まっている。
母の昔からの趣味と、その母に影響されて育った私と弟の読んできた本たち。

私は高校生くらいの時から、音楽を聴くことのほうが増えて、読書の時間がそれまでより少なくなった。
だから、私がまだ読んでいない本が、実家にはたくさん並んでいる。

その中のひとつ、湊かなえの『告白』。
あまりにも有名だけど、まだ読んだことがなかった。
映画ももちろん未鑑賞。
前知識はほぼ持っていなかった。


複数人の視点から、淡々と語られる物語。
読み終えたとき、率直に
「これは救いようのない話だ」と感じた。
めちゃくちゃ暗かった。希望なんてないと思った。
社会的制裁。法律。世間の目。
いったいこの先、どんな人生を歩んでいくんだろう。
彼ら、彼女らに、未来はあるんだろうか。

ただ、読んでいてジメジメした、停滞した感じはしなくて、疾走感というか、最後まで駆け抜けていく爽快感すら覚えた。
だから映画の予告編で“エンターテイメント”というキーワードを打ち出しているのは、わかる気もしたけど、でもやっぱり、ちょっと違うんじゃないかと思う。
予告の印象を信じて、彼女とのデートにこの作品を観ることを選んだ友達に、ちょっと同情する。


登場人物たちが語る内容は、私にはどれも真実のように感じていたけど、「嘘が混じっている」という考え方もある、と読んだ後に知った。

だから、母はこれを読んだ時にどう感じたか知りたかった。
本を返す時に尋ねると、なんと「あまり覚えていない」って。

母はもちろんこの本のことを知ってはいたけれど、内容はちゃんと思い出せないし、なんなら「それウチにあったっけ?」と言う。
あれ、おすすめしてくれたんじゃなかったっけ。でも、湊かなえの話はしたけど、『告白』は私が勝手に選んで借りたんだっけな。お互い、記憶があやふや。


もしかしたら私も、何年か経ったらこの本のことを忘れてしまうのかもしれない。

そうしてまた読んだ時も、「救いようがないな」って思うんだろうか。
そのときの自分は、こんなに軽々とこの物語を駆け抜けられるんだろうか。



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