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【えいごコラム(11)】Specialty と Speciality

妻が「形容詞を名詞化する接尾辞の -ity と -ty の使い分けには法則があるのか」と聞いてきました。

学生に質問されたのだそうです。


いわれてみれば不思議です。

loyalty や safety のように -ty だけがつくものもあれば、 equality や humanity のように -ity が来るものもあります。

直前の文字の並びで変わるのかと考えてみましたが、 penalty と personality では直前に来るのはどちらも nal です。


それどころか、「名物料理」を表す specialty に speciality というつづりがあったりするのです。ODE で specialty を引くと次のように出てきます。

1. chiefly 《N. Amer.》 & 《Medicine》 another term for SPECIALITY.

OEDは(基本イギリス目線なので) speciality が標準で、北米大陸や医療業界では specialty も用いると述べています。


ではこの2つの接尾辞にはどんな違いがあるのでしょうか。

語義や語源についてさまざまな辞書の表記を紹介するサイト、 The Free Dictionary には次のように出ていました。

【-ity】
suff.
State; quality: abnormality.
[Middle English –itie, from Old French –ite, from Latin –itās, variant of –tās, –ty.]

【-ty】
a suffix occurring in loanwords from Latin and French, forming mainly from adjectives nouns denoting state or condition: ability; certainty; chastity; unity.
[Middle English –te(e) < Old French –te(t) < Latin –tātem, acc. of –tās]

-ty の語義(出典はランダムハウスだそうです)には、これはラテン語やフランス語由来の語につく接尾辞で、主に形容詞から名詞を作り、性質や状態を示すとあります。

-ity も同様ですが、興味深いのはラテン語でも -ity のもとになった語は –itās 、 -ty のもとになった語は –tās と、形が異なっていることです。

この両者の使い分けはラテン語の段階ですでに存在するわけです。


ラテン語でどう使い分けるのかは残念ながらわかりませんが、英語での使い分けに言及しているサイトを見つけました。

英語教材を提供するCK-12は次のように記しています。

You know that –ity always has a stressed short vowel right in front of it. Is the vowel right in front of -ty stressed or unstressed?

これによると、 -ity の直前にはつねにアクセントをもつ短母音が来るとのことです。

それに対して -ty の直前の母音にはアクセントがあるか、と問いかけていますが・・・


あ、そうか!

penalty と personality の音節区分はこのようになっています。

pen-al-ty
per-son-al-i-ty

penalty には第1音節にアクセントがあり、 personality には第3音節に第一アクセントがあります。

つまり -ity の直前の音節にはアクセントが置かれますが、 -ty の直前の音節には(2音節の語は別ですが)アクセントがないのです。


これは specialty と speciality についてもいえます。

つづりはほとんど同じですが、 specialty は spe にアクセントが、 speciality は al に第一アクセントがあり、両者の発音はかなり違います。

ひょっとして -ity と -ty は(それこそラテン語の時代から)語のどこにアクセントがあるかを示す記号のような役割を果たしてきたのではないでしょうか。


ついでですが、今回気づいたことの1つは beau が形容詞だということです。

『新英和大辞典』によると、これは「美しい、良い」を表すフランス語の形容詞から来ているのだそうです。

つまり beauty は形容詞 beau に -ty をつけて名詞化したものです。

だから beautiful は、それにさらに接尾辞 -ful を加えて形容詞化した、屋上屋を重ねた語ということになるのです。


フランス語やラテン語(おそらくギリシャ語も)をちゃんと勉強しないと、本当に英語を知っているとはいえないのかもしれませんね・・・。

(N. Hishida)

【引用文献】

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