見出し画像

レジ袋有料化はSDGsウォッシュ

レジ袋有料化は海洋プラスチック削減に1グラムも寄与しない

私の周りでも7月1日からのレジ袋有料化に賛成またはなんとなく容認の人が多いですが、私は明確に反対です。

何度でも繰り返しますが、そもそもレジ袋有料化は海洋プラスチック削減に1gも寄与しません。もしもレジ袋やプラストロー、ペットボトル等の削減が海洋プラスチック削減に寄与するのであれば、自治体のゴミ回収から廃棄物処理ルートのどこかでプラゴミを不法投棄・海洋投棄していることが前提となります。そんな自治体は全国どこにもありません。

国内で原因になるとすればポイ捨てですが、国内全廃棄物量のおそらくコンマ数%であり、ほとんどは国内の川や海岸でとどまります。そこから広い広い海を漂ってマイクロプラスチックになってクジラが食べたり亀に刺さるのはほぼゼロに等しいです。
よって川の清掃も海洋プラスチック削減には寄与しません。もちろん川の清掃はとても大事な取り組みです。ただし目的は海洋プラスチック削減ではなく、その川や海岸の生態系保護、景観維持や美化となります。

海洋プラスチック対策として最も有効なのはゴミを大量に海洋投棄している国や組織に止めさせることです。日本国内で買い物客がエコバッグを持ったり飲食店が紙ストローに代えても全く貢献しません。解決策は日本人のライフスタイル変革ではなく、国際交渉です。

海を汚している上位国はこちら。画像1


https://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-03/y031203-s1r.pdf

仮にレジ袋有料化の目的が海洋プラ対策ではなく、廃棄物処理の効率化や埋め立て処分場ひっ迫の解消であれば2%だけ賛同できます。なぜ2%か。その目的であれば対策として有効なのは全プラスチック廃棄物の2%でしかないレジ袋削減ではないはずだから。もっと実効性を伴う方策がある中でレジ袋を象徴的に悪玉にする今の流れには賛同できません。

7月のレジ袋有料化強行は増税の呼び水?

レジ袋有料化の7月開始は元々オリンピックを意識しての設定だったはずです。ただオリンピックが延期となりコロナ禍で海外からの旅行者や入国者も激減しているこのタイミングで、実効性の伴わない見せかけだけのレジ袋有料化を7月に開始する合理的な理由はないはずです。

そもそも、廃棄物処分場の処理能力や焼却能力の劣る欧州各国、焼却も減容化もせず埋め立てが前提の米国といった他の先進国がプラゴミ削減を進めるのはともかく、世界有数の焼却能力を有する日本で欧米にならってプラゴミ削減を進めるのが国の政策として本当に正しいのでしょうか。
そしてそのプラスチック削減意識の高いであろう欧米からの訪日客向けのパフォーマンスとしてレジ袋有料化を7月1日からとした国の姿勢にも疑問を感じます。

これについては複数の識者が「レジ袋有料化は増税の呼び水ではないか」と指摘しています。

郵便学者の内藤陽介さんは6月28日付のFacebookで以下のように述べられています。
https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=3017837861670694&id=100003335285897

今回のレジ袋問題に関して、小泉進次郎環境大臣は、「レジ袋有料化をきっかけとしたライフスタイル変革を進める」としているが、その小泉大臣と環境省は“炭素税”の導入に熱心であることが知られている。
(中略)
レジ袋有料化についての政府の広告を見てみると、有料化を推進する5省の名があり、その筆頭は財務省である。財務省が筆頭になっているのは建制順であって他意はないという指摘はありうるが、それでは、なぜ、そもそも財務省がレジ袋有料化の旗振り役に名を連ねているのか。
やはり、レジ袋有料化は、財務省にとって推進すべき(=省益にかなう)政策と考えているのであろう。

上武大学の田中秀臣教授はiRONNAで次のように述べられています。
https://ironna.jp/article/15304

レジ袋有料化を何のために実施するのか、本当に理由が分からない。もし「理由」があるとすれば、それは家計の負担増に慣らすためのメディアと官僚の思惑かもしれない。

内藤さんの投稿は長文ですが、レジ袋有料化に賛成、なんとなく容認の方はぜひ全文をご覧いただきたいです。
一部を以下に抜粋します。

昨年6月3日、当時の原田義昭環境相は、省内での記者会見で、小売店などで配られるレジ袋について「無償配布してはならないという法令を速やかに制定したい」と述べて、有料化の方針を打ち出した際、「レジ袋がプラごみに占める割合は多くないが、有料化は(削減の)象徴になる」と強調しており、レジ袋のみを削減することがプラスチックごみの削減につながらないことを自白している。
(中略)
目指すべき政策目標の達成には資するところが少ないとわかっていながら、生贄としてレジ袋を取り上げるのは、あまりにも不見識ではないか。
たとえば、汁の出る弁当類や植物、園芸用の土、衣料のクリーニング、通常のエコバッグには収納しづらい大型の商品(ホームセンターなどではよくある)、未使用の郵便切手(湿気で裏ノリがべとついたり、折れ曲がったりするのを防ぐには袋があったほうが良い)など、これまでの日本人の生活の中で、レジ袋ないしはポリエチレンの袋に入れてお客に渡すことが前提になっている商品も少なくない。そうした商品を扱う店では、当然のことながら、レジ袋のみを別料金で精算するのはきわめて不便で、レジ袋の値段はあらかじめ商品に転嫁しておかなければ極めて効率が悪い。
(中略)
店側の多くは、こうした事情をすべて勘案して、いままで自分のビジネスモデルに合った方式を採用してきたのであって、伊達や酔狂でレジ袋を無償で配っていたわけではない。そうした個別の事情を無視して、国や自治体が制度として、レジ袋の有料化を義務づけ、さらには無償配布までをも禁じるのは、どうみても、営業妨害や嫌がらせの類ではないのか。
梅雨に入り、ただでさえ食中毒などが増加するこの時期に、拙速なかたちでレジ袋の有料化が制度として義務付けられてしまうと、上手の手から水が漏れる如くコロナ対策に穴が開き、いままでの成果が水の泡になりかねない。
もともと、レジ袋有料化の義務付けを前に、経産省は3月から説明会を開始するとしていたが、ウイルス感染防止を理由に開催を無期延期にしたままの状態が長らく続いていた。
(中略)
制度実施のための説明会を延期したなら、その日数分は制度の実施も延期するのが道理ではないのか。具体的には、3月開催予定だった説明会が6月17日以降に延期になったのだから、制度開始も、スライドして3ヵ月、5月21日の動画投稿を基準にしても最低50日は延期しなければなるまい。

全文はリンク先の投稿をご覧ください。


レジ袋有料化はSDGsウォッシュ

そして内藤さんの投稿の中で触れられている清水化学工業サイトからの抜粋が以下です。
http://www.shimizu-chem.co.jp/message.html

中小零細企業が大半であるレジ袋生産業者にとってレジ袋有料化は死活問題であり、なんとなくエコみたいだから容認と言った市民の感覚では済まされない切迫した状況です。

1.ポリエチレンは理論上、発生するのは二酸化炭素と水、そして熱。ダイオキシンなどの有害物質は発生しない。
2.石油精製時に(ポリ)エチレンは必然的にできるので、ポリエチレンを使用する方が資源の無駄がなく、エコ。
3.ポリ袋は薄いので、資源使用量が少量で済む。
4.ポリ袋は見かけほどゴミ問題にはならない。目に見えるごみの1%未満、自治体のごみのわずか0.4%。
5.繰り返し使用のエコバッグより、都度使用ポリ袋は衛生的。
6.ポリ袋はリユース率が高い。例)レジ袋として使用した後ゴミ袋として利用
7.都内ではサーマルリサイクルし、ごみ焼却燃料になり無駄とならない。
8.ポリ袋は紙袋の70%のエネルギーで製造可能。
9.ポリ袋の輸送に必要なトラックの量は、紙袋の7分の1。
10.ポリ袋の製造に必要な水の量は、紙袋の25分の1。
11.ポリ袋は紙袋に比べ、ごみにしてもかさばらない。
12.紙袋は再生できるものと再生できないものがある。ラミネート加工されているものや紐の種類によっては再生処理できない。
13.紙袋は間伐材とはいえ森林資源を利用。

画像2

これらの問いに答えてくれるCSRの専門家さんを私は寡聞にして知りません。

また、神奈川県では「かながわプラごみゼロ宣言」を出しており、知事や関係者が「全国に先駆けて自治体として初めて公開した!」と喧伝されています。
ところがこれまで述べてきたようにプラゴミ削減は海洋プラスチック削減に全く寄与せず、生産業者は大打撃を被ることから、私には「神奈川県は全国に先駆けて海洋投棄や不法投棄をやめる!」「全国に先駆けてレジ袋生産業者を倒産に追い込む!」!と聞こえます。もちろんご本人達にそんな意図は微塵もないのですが。
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/p3k/sdgs/index.html

全く海洋プラスチック削減に寄与しないのに目的と言い募っているレジ袋有料化やかながわプラごみゼロ宣言こそがSDGsウォッシュと批判されるべきではないのでしょうか。 

さらに、いつもモリカケサクラ、アベノマスクとなんでも政府批判につなげるCSRの専門家の皆さんもレジ袋有料化は批判するどころか賞賛し、逆に海を汚し続けている国にはダンマリです。いつもの矛盾、いつもの二枚舌なのですが、もはや支離滅裂としか言いようがありません。

今のプラスチック業界をいじめる流れは、90年代後半にISO14001ブームでカミゴミデンキとして悪役にされた製紙業界とそっくりです。CSRの専門家さんはいつもこの手を繰り返してお金儲けに走ります。

企業のCSR担当者や環境問題を学ぶ学生の皆さんへ

CSR関連のコンサルタントや大学の先生などの専門家に相談する際には、まずその会社や大学等のwebサイト、または個人のSNSを見てください。
「海洋プラスチック削減のためにレジ袋やペットボトル削減が必要」などと言っている方々はSDGsウォッシュです。ただしご本人たちは全く気がついていないのです。

皆さんがこのような方々の食い物にされないよう切に願います。

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?