山ケ

山ケ(やまけ)といいます。どうぞよろしく!

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その後出会うべき人

気付けば、道は深い藪に覆われていた。 薄い月の灯りだけが、私の指先を造形する。 自分を信じて前へ進むか、勇気を持って撤退するのか。 磁石のように対極する虚な栄光は、すでに 自分が詰将棋の玉であることを知らせはしない。 遠近感の無い声が内臓から囁く 《においを嗅ぐのだ…オマエハケモノダ》 《踏みしめなさい、あなたは既に木と成りつつある》 《差し出すのだ、歪みと羞恥が貴様の対価だ》 《ああ愚かなやつ!!声も出せないのか!!》 砂嵐と驟雨と太鼓と鐘の音が、ムカデのように雪崩れ

    • 【夏の詩】ダンゴムシ

      壁に当たってはダンゴムシ ほら、ぶつかっては左へ進め ほら、ぶつかっては右へ進め 絶えず困り顔の触角で 遠くを目指すダンゴムシ 触れられたらすぐダンゴムシ 全身を丸くして身を守る 結局、殻にどれほどの効果があるのか? 本能と運命の両極端を 丸めてこらえるダンゴムシ ウワサを聞いたダンゴムシ 海にはダンゴになるのを辞めて 早足に成ったのが居るらしい いつかそいつと会ってみたいが 計画は立てないダンゴムシ 夏はおどろくダンゴムシ ある晩 土から這い出た彼等は まさか 殻を破

      • もう一度

        夏よ 戦火と線香と花火を聴きて ゆらり 音色と成りし煙と魂を もう一度 夕刻に轟く震雷へ届けよ もう一度 海へと還る涙河を渡せよ もう一度 私に何者かと問い掛けよ

        • 雨音の詩

          鳥啼く払暁の 肥えた雨垂れたちが ベランダのアルミニウムを咀嚼している あるいは 雨粒の指が葉っぱを打鍵する 七つの海と 青眼のカエルへ送る信号か うたえよ 天地の音楽より生まれ泡沫へ還る 哀愁を醸造し 果実を甘美にする歌よ  雨音こそ地球の名物である 遥か未来は 天の川銀河の他星人が この音色に驚くだろう 我々は静かに聞き入るだろう

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        その後出会うべき人

          どこかにある部屋の詩

          でたらめなパスワードがかかっている 頭の森の奥にある小さな部屋 冷蔵庫の白い幽霊がこちらを見ている それを誰にも触れさせないように それは記憶の外側と無意識の内側 絵具の奥に隠されている 言葉の底で欺かれている 鎖骨の下では溺れている 深夜の廊下を手探りで進む隠蔽工作 浅い呼吸と焦燥感は幽霊をも退ける 神経が影絵の猫のように緩慢で敏感だ 掃除機に口止めをして玄関まで辿り着いた 得も知れぬものが追いかけてくる 逃げることができない 私はただ 目をきつく閉じて歯を食い縛る

          どこかにある部屋の詩

          思い出について

          思い出というのは不思議なもので 日記や写真の中にもあれば 金木犀の香りや 真夏の早朝の空気 心を震わせたメロディにも それは宿る そりゃ悪いものも良いものもあるけれど しかしここで最も重要なことは それが二次創作や空想ではなく 「本当にあったこと」ではないか 作り話ではない 創作でもない 宇宙の歴史の遥か末梢ながら 事実として決して動かせないもの 金でも神でも無かった事には出来ぬこと それこそが思い出なのだ その思い出で静かに心を温めながらでも 人は生きてゆけるのだと信

          思い出について

          とじて かさねて

          とじて かさねて うつして とんで さいて のばして ひらいて おちて のんで むすんで のぼって かけて ほして まわして つかんで すてて かいて えらんで おしえて だいて はいて やぶいて あるいて のって ふれて ゆらして はらって みせて こいで ならべて たたいて まいて はって いのって おどって まって しいて うかべて うたって にげて あけて すわって とどけて けして

          とじて かさねて

          逃避と迂回とその他の詩

          1. カレンダーからは逃れられまい 秒針が文字盤から脱せぬように たとえ世界中の時計を壊しても あなたの影が時計になるのだよ 2. まだまだ覚めない夢を見たい うだうだ揺蕩う迂回と遊泳 しだしだ錆びつく視界と思考が ただただ叫びを抱きしめて飛べ 3. まだ起きているのか夜更かしめ 輪郭のない景色が心地良いか 深夜のコンビニへ行く道中 眼鏡を外して空を見れば 今日の天気も 恐らく曇り 4. 部屋に反響するこえは 頭の中の洞穴の 井戸の底から聞こえるが 塞ごうとも 音がして

          逃避と迂回とその他の詩

          雨雲の詩

          今日は空を一度も見ていませんが 雨音が枕元まで聞こえてきて ぐずぐずした天気だったのでしょう 私の頭は今日も収縮と腐敗の停滞前線 気圧は部屋の中までやってくる 膨張と包丁が脳まで届くと 目の奥が暴れ出すのだ 頭にいっぱいの礫死した紫陽花 雨雲は雨を吐き出したらどうなるのか ただの雲に戻るのかそれとも 消えて無くなる定めなのか どうやら雨雲は消えてしまうらしいのだ 雨雲は晴天の白い雲を羨むかどちらにせよ 渇きを満たしては消える雨雲になりたい

          雨雲の詩

          盲目の詩3

          すりガラス カーテン ブラインド みえないもの とざしたもの 壊れたパズル 崩れたスリル 息づくファイル みえないもの うめられたもの 楽しいことば を使って踏切は 声を上げる みえないもの きこえないおと 猫 痩せた 窓 止まった 鏡 枯れた 皿 指差した 針 数え上げた 猫 東に灯るもの 西に送るもの 虫たち(つまり私)は 夜に彷徨う 変態して紫外線を追う 蛾や蝉のように 蟋蟀、蟷螂、螻蛄も 静かに参列する 宵闇の密葬の行進 火に焼かれた者たちの 影を天の灯りに還

          盲目の詩3

          盲目の詩2

          めをそむけよ そむけつづけよ まとわりつくもの おともえいぞうも もうたくさんだ もうこれいじょうは ちしりょうに ちかい ちらかったゆか ちからのない指 指指指指指指夢 夢に致死量は無い だからいつまでも ゆめはみなみむきの まくらのほうがくへ すすんでいくの さしだすりょうきんは きょうのきろく もしたりないときは 悪夢が混ざる 夢夢夢夢夢夢床 床に眠る昼過ぎに ゆっくりと進む時計 アラームは要らない 揺らぐ意識 傾く顔 悪夢 あ あたま のこえ がきこ えない なのに

          盲目の詩2

          盲目の詩

          生き方が分からなくなった動物は どうなってしまうの? 最近は無気力と無表情ばかりで 歯を食いしばって眠るのだ 現実感も薄れつつある なぜ私はここにいるの? そんな事問うても仕方ないが 何かを問い続けなければ 自分の感情さえ失くしてしまう 今や焦りと諦めの繰り返しで 天秤は狂いながらも 止まりはしない 心拍数と深呼吸と診断書 三つ揃えて会社へ向かう 自分の顔も持って行く 社員証と同じく首にかけて そんなときに限って 外の空気はうまく感じる だからこんなにも やるせないのさ

          盲目の詩

          焦燥の詩

          追跡者よ 聞こえるか 怖いおとが 聞こえたんだ 不思議なおとだ 賞賛の拍手と 憤怒の銃声が ぶつかりあって うたを歌っているんだ 川底に沈んだ包丁 その重い濁りと金切り声 私の中で反響するんだ 顔のあぶらを流す早朝 その浅い呼吸と金切り声

          焦燥の詩

          今日の全て

          お前にあげるよ なみのおと やまのかぜ すべてのゆびが かなでるおと すべてのあしが よびだすかぜ あたまのなかに まきおこるんだ おと と かぜ が こえにならない しずくとなって こぼれおちるもの お前にあげるよ

          今日の全て

          夕方のこと

          夕方のことさ 薄紫の雲は まるで 私の心の壁を はるばると越えるように 高く高く 遠く遠い 明日で 人生が終わると 考えていた 私は あれを見て ああ 死にたいと 思った なぜか堂々と そう思った 心は不思議と かすかに 晴れ晴れとして

          夕方のこと

          引出しに寄せて

          幼いころ 宝物だった たくさんの シールたちが 今も引出しに 飾られていて それは 破れていても 日焼けしても 昔と変わらず 特別に 光を放つ それはまるで 世界で最も 優しい 勲章 引出しに 未来と過去が 隠れているのは それが 生まれて初めての 創造性の目覚めで それは 最期まで 誰彼の人生を 震わせる 喜びと哀しみの 振動である

          引出しに寄せて