山ケ

山ケ(やまけ)といいます。どうぞよろしく!

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その後出会うべき人

気付けば、道は深い藪に覆われていた。 薄い月の灯りだけが、私の指先を造形する。 自分を信じて前へ進むか、勇気を持って撤退するのか。 磁石のように対極する虚な栄光は、すでに 自分が詰将棋の玉であることを知らせはしない。 遠近感の無い声が内臓から囁く 《においを嗅ぐのだ…オマエハケモノダ》 《踏みしめなさい、あなたは既に木と成りつつある》 《差し出すのだ、歪みと羞恥が貴様の対価だ》 《ああ愚かなやつ!!声も出せないのか!!》 砂嵐と驟雨と太鼓と鐘の音が、ムカデのように雪崩れ

    • ゆめ

      ゆめ せかいはふたつ それとも ほし いし きし あし しっているのかな ゆめのひみつを ねむり けむり こおり くすり りくつじゃないよ いたみはいらない まばたき ときめき かがやき うそつき きょうのあなたから とどけものです ゆめまくら おもてうら あさのそら ぶたいうら らららうたえよ ゆめはおわらない よじげんすう きゃのんほう こうそくどう おおどろぼう きょうはここまで おやすみなさい

      • ほっきょくせいのうた

        そらのおくで かぜがよんでる ゆうやけぐもが わたしをよんでる どんどん ららら どんどん ならせ どんどん ららら どん ららら とおくのほうで みているひとが わたしのともだち あしたもあえる どんどん ららら どんどん ならせ どんどん ららら どん ららら おおきなドアが はてなくつづく くぐりぬけると きょうがおわる どんどん ららら どんどん ならせ どんどん ららら どん ららら ひとりぼっちの ほっきょくせいが めぐりあうため たびにでる どんどん らら

        • ラベンダー

          とある庭先に咲くラベンダーが とある星雲のように佇んでいるのを とある夕方の溜め息が見つけた そのとなりの さらにとなりの家の 庭の隅っこに 同じラベンダーがひとつあった 溜め息ではなく息を呑んでいた 何も言わず 夕日に照らされる そのラベンダーは私自身ではないか なんて頼りないのだ どうしてそんな所に 降り立ったのか 紫と白の花が春風にゆれる 周りの草花と違う周期で 星雲のかけら 揺らぐ宝石 溶けぬ雪 異邦人のラベンダー

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        その後出会うべき人

          電話

          (トゥルルルル... トゥルルルル....) ダイヤル音がよろめく誰かを探している 打ち上がった魚のように跳ねた 一つ眼のあなたの心電図を (トゥルルルル..... ガチャッ) ぬるい風に乗せて腕を伸ばし続ける どこにも繋がらない電話線 波の音が受話器から聴こえる (ツー... ツー... ツー... ツー...) コール音が奏でる一曲分の空間に 豚の腸のように詰めては膨れる言葉 そこに湧き出す後悔の和音とリズム (. . . . ヒサシブリダネ)

          捧げもの (再編版)

          一つの「歌」を捧げよう 鼻唄から始まる出鱈目のリズム コーラスもないスコアもない 生まれては消える刹那のメロディを 坂道の上の公園に捧げる 一つの「数式」を捧げよう 人生は後ろ向きに歩いている 過去は積分 未来は一寸先すら見えぬ 今日を微分して外挿した 祈りの座標を 家へと帰る かぜかんむり達に捧げる 一枚の「絵」を捧げよう 心の中に秘めた草原と太陽と勇気が 時代の波濤に削り取られていく しかしなお色褪せない表現のつばさを 世界を宿し 熱く光る筆先に捧げる 一つの「こと

          捧げもの (再編版)

          ひとつ

          ひとえ ひとつ ひらく ひみつ ひかり ひとつ ひらり ひかる ひとり ひとつ ひとみ ひみつ

          30

          30秒のカウントをくれよ ゴビ砂漠に埋もれた砂時計も計れよ 京都の絵巻物に眠る水時計も計れよ 溜め息と決意を肺臓から取り出して リズムと興奮に心臓を強く叩かせよ 残り10カウント 水平に脱力する鏡の湖面よ そこに一つの月を浮かべよ 手を繋ぐ12進数と60進数の 親子が歩く足跡が月へと還る 残り2カウント ぬるい虚空の風が頬を掠める もはや身体は呼吸を要求しない 奇体にも大地を駆け悦ぶ鳥よ 私はいま同じ眼をしているか 残り1カウント 過去の全ての答えがここにあるとは!!

          全ての寝不足

          深海へ潜るコンパスは革命を夢見る 息づく切り株の年輪は碑銘であり手紙 キリンのたてがみ、少女の三つ編み 平均値と平均律と平均台と全ての後悔 過剰と平常と冪乗と天井と全ての寝不足 火よ、放つビリヤードの如き物理の変換よ 命に限りなく近い 燃える寸前の白髪よ 火の指先に隠された 朝の夢のにおいを 子どもたちは覚えているのだ 歌う代わりに目で歌う 動物のような視線 誰に教わらなくても 歌えよ その目の奥で 潮が瞼をさらいに来るまで

          全ての寝不足

          よろしく人の

          親の顔など知る余地すらない そんな生き物は世に多い 昆虫、魚貝類などは代表的だ 蟹や蟷螂は親の顔を知らぬ 兄弟は数千数百いるだろうが 皆同じ顔をしているのだ だから僕らの両親もきっと 同じ顔をしてるだろうと 思いながら春風を感じただろうか 本能の戒律に敬虔な彼らは やがてメスは大きく育ち オスは自らをメスの腹に捧げ メスは自らの腹を子に捧げる あらゆる水場が祭壇である あらゆる葉っぱが褥である 地球は穴の空いた壺のようだ 生命は一組の番により注がれ 生命は一組の番から先に

          よろしく人の

          物語の終わりの詩

          私がまだあなたの顔をしていたとき 顔は本であり食事であり空であった 名前を知らない全てが鳴き声だった 名前を知らない全てが遠吠えだった 私がまだ夢の名前を知っていたとき 顔は蝋燭であり白百合であり義眼であった 意味を持たない全てが羞恥心だった 意味を持たない全てが好奇心だった もう十分に混ざり合っただろう 全ての顔に秘める物語があり 全ての夢に宿る名前がある ここまで読んでくれてありがとう 全ての顔といずれ別れが来るように すべての物語にもまた終わりがある

          物語の終わりの詩

          卒業式によせて

          正直言って、友達に会いに行っていた 授業や宿題は後まわしの後まわし あんなに行くのが面倒だったのに もう一生入れない教室がある まさにスシ詰め状態のせまさだった 夏は蒸して暑いし冬は寒かった それでも毎日集まっていたのに もう一生入れない部室がある ご褒美の日といえばそこが鉄板 何もない日でもご褒美にできた いまでも味を思い出せるのに もう一生入れない店がある 写真ではいつも散らかっている 実はもっと汚い時期もあったな どこよりも一番安心できたのに もう一生入れない部屋

          卒業式によせて

          七行と少しから生まれたうた

          感情の高低差から うたがうまれる 自然の第六感から うたがうまれる 想像の逃避行から うたがうまれる 愛情の依代として うたがうまれる 過去の題名として うたがうまれる 神秘に捧げるべく うたがうまれる 大盛りの喜びから うたがうまれる うたがうまれると うたがうまれる 自分に流れるうた (うたがうまれる) 貴方に流れるうた (うたがうまれる) あの人がうたった (うたがうまれる) 好きなひとのうた (うたがうまれる) 光を放つあのうた (うたがうまれる) 私の大好きなうた

          七行と少しから生まれたうた

          キャンプの詩 5編

          【焚き火】 父なる陽に届かんと燃え盛るも いつまでも地に足枷されている 一瞬とも固まらず変幻するすがたは まるで人類の全ての顔を知るかのようだ もう何万年も人類に呼びかけているが 誰もその軛を解いてやることは できなかった だが父が死ぬ直前には再会するだろう そのときはようやく一緒になって この太陽系さえ解き放ち飛び行くのだ 【ダム】 水を服従させるべく聳える監獄 ようやく出所した水はやや落ち着きなく 歓喜のせせらぎを森や橋に聞かせてまわる しかし囚人達もまんざらで

          キャンプの詩 5編

          こんな日もある

          最近ニュースを見てげんなりするのは 一つのニュースの背後を考えると ざっと十個の論点が転がっていて それらが縄のように複雑に絡まっているから。 地球さえ絡め取る黒い塊の前で 私はあまりに無力である。 あれはなんだ ニタニタと笑う縄がこちらを見つめて言う 「だれが絡めたと思う?」 私は言う 「人間だ。ちがうのか?」 ニタニタと笑う縄は答える 「半分ちがう。」 私は言う 「半分?ではもう半分はなんだ?」 ニタニタと笑う縄は答える 「もう半分は宇宙の絡まりだ。」 ニタ

          こんな日もある

          孤独に捧げるうた

          私の手を引く孤独 私の肩をさする孤独 私の歩みを挫く孤独 私の腕をさする孤独 外に出ると小さく縮む孤独 歩くと耳にぶら下がる孤独 風が吹くと飛んで行く孤独 家に帰ると待っている孤独 孤独は実は双子であるのだ 孤り(ひとり) と 独り(ひとり) で 孤独は実は孤独ではない 私も実は孤独ではない 現実を生きる私と 想像を生きるわたし 弾く雨音を聴く私と 詩を呼び覚ますわたし 一台のピアノから何万の曲が生まれたように 五十の仮名は無量の海に怒濤の飛沫をたてる 有限から拾い集

          孤独に捧げるうた