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どこかにある部屋の詩




でたらめなパスワードがかかっている
頭の森の奥にある小さな部屋
冷蔵庫の白い幽霊がこちらを見ている
それを誰にも触れさせないように


それは記憶の外側と無意識の内側
絵具の奥に隠されている
言葉の底で欺かれている
鎖骨の下では溺れている


深夜の廊下を手探りで進む隠蔽工作
浅い呼吸と焦燥感は幽霊をも退ける
神経が影絵の猫のように緩慢で敏感だ
掃除機に口止めをして玄関まで辿り着いた


も知れぬものが追いかけてくる
逃げることができない 私はただ
目をきつく閉じて歯を食い縛る
恐怖と体温がバランスして溶けるまで


森の奥の小さな部屋に辿り着く
生温いドアノブに手をかける
恐怖で振り返ることすらできない
目を閉じてドアを開けた
感覚はまだ暗闇の中に残っている




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