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園内の保育士の座談会から

~自由と安全はどうやって保障するの?~

先日、当学園内の保育者たちの座談会を行いました。新任の保育士から現場の困惑の声が出されました。

「今まで勤めていた保育園では絶対にケガをさせないというのが第一でした。けやの森学園では自由に遊ばせているので、びっくりしています。どうやって安全管理をしたらいいのでしょうか?」

「フレネ教育では、子どもを自由にさせなさいというけれど、ケガをさせないように自由にさせるには何に気をつければいいのか。教師が子どもに関わりなさいというのは、どこまで、どのように関わったらいいのか」が話題の中心になりました。

「絶対にケガをさせない指導」は教育?

子どもを預かる仕事は、安心安全が前提にあります。しかし、どうやって安全管理をしたらいいのでしょうか?一般的に多くの保育者として迷っている原因が「絶対にケガをさせてはいけない」という強迫観念にあるようです。このため、ルールがガチガチで禁止事項が多く、時に子どもたちの学びの機会を阻害してしまっているケースが見受けられます。

命に関わるケガ、障害が残るような大ケガは絶対に防がなくてはなりません。子どもには、危ないことを想像させ、少しの失敗を繰り返しながら、自分で危険を考え、安全に行動できるようにするというのが、フレネ教育の教えです。

「絶対にケガをさせてはいけない」という考えが先立ってしまうと、保育士・教師はあれもやってはダメ、これもやってはダメと制限や禁止だらけの教育をしてしまうでしょう。そのほうが、保育士・教師にとって楽な方法です。

しかしそれでは、子どもたちは遊びの中で、危ないことを想像するチャンスもなく、自分の発想などを活かしてチャレンジするという機会もなくなってしまうことになります。これでは、「子どもの主体性を育てること」は難しいでしょう。

「子どもの主体性を育てる教育」

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それでは、どのようにすれば子どもの主体性が育つのでしょうか?

フレネ教育の考え方は、子どもの自由な発想、自発的な発想を認め育てる教育です。その自由で自発的な発想は、日々の生活や遊びの中で生まれます。保育士・教師は、その子ども一人ひとりを細かく観察し、深く理解することです。

ですから危険を予測し、回避する能力が十分育っている子には責任を持たせ、そうでない子には注意深く観察し、いざという時、援助をしなくてはなりません。

子どもは個々にそれぞれ発達の度合いが異なり、個性も異なります。一人ひとりの子どもをみて、どういう傾向(性質)の子で、何が得意で、何が苦手かを知っておくことや、昨日までは出来ていたこと、出来ていなかったこと、興味をもっていたことなど、保育士・教師が、記憶しておくのです。子どもたち一人ひとりすべてを記憶する必要があります。それは決して簡単なことではありませんが、そうすることによって子どもは「先生は私のことをよくわかってくれている」と信頼を寄せるようになるのです。

「ヴァンスのフレネ学校」には事例がいっぱい

昨年、けやの森学園で出版した研究書『ヴァンスのフレネ学校』には、フランスのフレネ学校の現場で行われている教師と子どもたちの対話が細かく掲載されています。

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「子どもの主体性を育む教育」についてご興味のある方は、是非、手に取ってお読みいただけたらと思います。

また、『ヴァンスのフレネ学校』を読み解く研究会「パパ・フレネの会」を立ち上げております。

「パパ・フレネの会」では、「ヴァンスのフレネ学校」を推奨してくださっている東京大学名誉教授の汐見稔幸先生と、翻訳してくださった阿部一智先生にフレネ教育の理解を深めるためのお話や、著書の解説などの講演会・座談会を開催しています。ご興味がありましたら、Facebookに「パパ・フレネの会」のグループページを設置していますので、是非、メンバー申請ください。Facebook「パパフレネの会」

6月5日(土)開催決定!
新型コロナウイルスと子どもたち
~コロナ禍で考える教育・保育の基本~

来たる6月5日(土)に、汐見稔幸先生(東京大学名誉教授)と阿部一智先生(東邦大学講師・研究書「ヴァンスのフレネ学校」訳者)の両氏を招いた講演会と座談会を開催します。

「新型コロナウイルスと子どもたち~コロナ禍で考える教育・保育の基本~」をテーマに「子ども主体の生活をどう確保するか」に迫ります。

講演会用の写真

この講演会は、国立青少年教育振興機構「子どもゆめ基金助成活動」の一環で開催するものです。

基調講演+座談会 コロナ禍で考える教育・保育の基本
新型コロナウイルスと子どもたち
■ ■子ども主体の生活をどう確保するか■ ■


開催日時:6月5日(土)10:00-12:00

会場:狭山市市民交流センターコミュニティーホール(西武新宿線狭山市駅西口前)

参加費:おひとり2000円(税込)当日徴収いたします

定員:20名 ※定員に達し次第締め切りとなりますので、お早めにお申し込みください

<スケジュール>
9:30-10:00         受付
10:00      開会
10:00ー11:00    基調講演①汐見稔幸先生
  テーマ「コロナ禍であるからこそ考えよう〝子ども主体の教育・保育〟」
コロナ禍にあって教育保育の基本とは何かを問い直し、フレネ教育を例に取り上げ、今後の教育・保育の方向性などを解説します。

11:00-11:30    座談会:参加者から日々の実践の中で感じる問題点など、汐見稔幸先生と阿部一智先生を交えて話し合います。

11:30-12:00  基調講演②阿部一智先生 『ヴァンスのフレネ学校』を読み解く「 教育は活動でなければならない ‐セレスタン・フレネ-」
フランスのフレネ学校の生活を例にフレネ教育学の根底に流れる哲学をわかりやすく解説します。

お問合せ・お申込み
特定非営利活動法人けやの森自然塾
☏ 04-2937-4880
メール kouenkai@keyanomorishizenjuku.com

翻訳著書『ヴァンスのフレネ学校』は当学園の公式サイトでもご購入いただけます。

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