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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
347.太古の運命神

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 気分を変えるようにアスタロトが言うのであった。

「この茣蓙ござも素晴らしいが、コユキの博識もかなりの物だな、バベルとは懐かしいじゃないか、ニムロドの反逆の塔か…… ははは、よく知っていたな? 思い出したわけでは無いのだろう? 」

許可も得ずに月餅を二つ三つと塔の上部から茶碗へと移動させながら放たれた単語にコユキは聞き覚えを感じて一所懸命に記憶を辿りだした。

「えーっと、なんだけっかなぁ? 確か…… そうだっ! ライコー様に初めて会ったときに! そのニムロドかって聞かれたのよ!」

「なに? コユキ本当か?」

「う、うん本当よ! アタシと善悪がルキフェルの後裔こうえいだって言ったら念を押すように、『オハバリやニムロドでは無いな!』的な感じで聞いてきたのよ? それがどうしたの? 因みちなみにこの茣蓙くれた正一ショウイチさんの正体がオハバリだったんだけどね!」

「なるほど、ライコー達が従っているのも頷けるぞ、納得だ」

善悪が月餅を食べながら話に入ってきた。

「なあアスタ、一人で納得していないで拙者達にも分かるように説明して欲しいでござるよ、うわ、これ美味い……」

つられたように月餅を口に運びながら答えるアスタロト。

「うむ、まずバベルを作ったニムロド、ノアのひ孫なんだが依り代にして操っていたのが我らの兄弟バアルでな、何とか天空に帰ろうとしたんだが古き神々に邪魔されてしまったのだよ『今では無い! まだ早い!』とか言われてな、ビリビリやられてたな傑作だったぞ!」

「お前やっぱりビリビリ楽しんでるでござるな! それにしても、へーあの大雨で有名なノアさん家のひ孫さんでござるか~」

「そうだぞ、その時邪魔した古き神の一柱が雷と道と扉の神メット・カフー、コユキが会ったオハバリさ、太古の運命神五柱の中でも凶暴な奴だぞ」

コユキが口一杯に頬張っていた月餅を一気に飲み込んでから疑問を口にする。

「ん? 太古の運命神ってあと四人、四柱か、そんなにいるの? それに神様に古いとか新しいとかあんのね? 知らなかったわぁ!」

アスタが当然といった顔で返す。

「なんだやっぱり思い出していなかったんだな、あいつら四人に粘着されて地上のほとんどを亡ぼし掛けたのは兄者本人だっただろうに…… くっふ、暴れたよなぁ、懐かしいなっ!」

「そうなのん?」

「ああ、新たな神達の盟主、あの時のルキフェル兄者は、そうだな? コユキの部分が強く出ていたな!面白い時代だったよ! 人の元たる哺乳類と鳥類が生まれ落ちたばかりの頃だぞ! 力を我ら三兄弟とその配下たちが与えた生命の進化に溢れた良い時代であった……」

 遠くを見るような眼をするアスタロト、なまじ男前なだけに何か大きな物を背負ってるかに見えた、んが結構馬鹿なのを知っているコユキは遠慮なく声を掛けたのであった。

「ねえ、アスタ! もしかしてその四人、四柱だっけか、そいつらって『静寂せいじゃく秘匿ひとくって分かれ道を覆い隠す御方おんかた』って奴なんじゃないでしょうね?」

 ナイスだな、コユキの第六感ってやつであろう、その証拠にアスタロトが言うのであった。

「なんだ、やっぱり思い出していたんだな! あの忌々しい運命神の年寄りどもの事をっ! あいつ等訳判んないからなぁ、次会ったら雌雄を決しようぜっ!」

ビクッ!

 幸福寺の居間、善悪の大切なもの(エロ除く)が収納された棚のど真ん中、結構いい所に置かれていた赤べこが瞬時に緊張感を高めたのであった。
 善悪の肩から飛び降りた一体のフィギュアに身をやつした戦士が、赤べこの揺れ続ける首を力強く押さえつけながら言うのであった。

「コイツ、ウンメイシン、ノ、ツカイマ、ダゾ…… ドウスル? コロス?」

コユキは慌てて言うのであった。

「ハウスっ! オルクス君! めっ、めっ! よっ! ラマシュトゥちゃんの友達なんだからね、るとしても今じゃないでしょ? もう少し我慢してね、ねっ!」

「ムウゥ、ンジャ、ソノトキ、ハ…… ラセテ、ネ?」

 コユキは満面の笑顔で大好きで尊いたっといオルクスに答えたのであった。

「りょ! その時は任せるわよ、オルクス君! 八つ裂きにしてねん! 期待してるわねん♪」

「ウ、ウンッ! ヤッタ♪」

 赤べこ、ウトゥックの体が僅かわずかに蒼褪めた様な色が差し、少し紫っぽくなった気がしたが、気のせいだろうか?

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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