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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三章 苦痛の葬送曲(レクイエム)
531.奴さん

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 程なくして参拝の車がひしめいている幸福寺の駐車場には、コユキとヒロフミに連行されて行くフェイトの姿があった。

「ほらキリキリ歩きなさいよ!」

「往生際の悪い野郎だな! 観念しろ、逃がしゃぁしないぞゴラァっ!」

「逃げません、逃げませんからぁー、大きい声出すの止めて下さいよぉー」

 神の威厳は地に落ちてしまった様である。

 今日少し前までは友好的に、いいやむしろ尊崇の念まで抱いて運命を受け入れる事にしていた真なる聖女の姿は既にこの場には存在しなかった。

 良く考えなくてもそうだ、死ねとか消えろとか願う相手に抗うのが人間だろう。

 じゃなきゃ戦争や紛争みたいな物騒な物が二十一世紀の時代に残っている訳が無いんだからね。

 あれだな、不意に真なる聖女と聖魔騎士とか何とか言われちゃったから、ノリで悲劇のヒーローヒロイン気分になっちゃったとかそんな所だったんだろうな。

 しかし彼女の目は開かれたのだ、実の父の懇願によって……

 まあ、こっちの方がらしいっちゃぁらしい! 良かった良かった。

 私としても婆ちゃんと爺ちゃんがこんな所で死んでしまっては生まれて来れ無くなっちゃうからね、一安心である。

 庫裏くりの玄関を抜けて、本堂に踏み込んだコユキは言うのであった。

「不埒者を召し取ったわよ! ほら皆! こいつに聞きたい事とか無いのぉ?」

 ヒロフミも満足そうな顔を浮かべて声を発した。

「な? 皆ぁ! 諸悪の根源を連れて来てやったぜぇ!」

 フェイト神、まあそこそこ老けたジジイが一所懸命な言葉を発した。

「お、お手柔らかに…… バアル殿、アスタロト殿……」

 がくがくブルブル……

 アスタがちょっと掛かってしまった感じで言った。

「ほう、お前が運命神、レグバか…… 普通に爺だな? 以前は世話になった、不意打ちで我を襲った理由を聞いてみたいと思っていたのだ! んで今度は我の兄ルキフェルを害する事に決めている様では無いか? おいっ! お前、まずは我を納得させてみよっ! でなければそんな事を許す事は出来ないぞ! 話は聞こう! うんっ! それから殺すとしようか? さあサッサっと我に話してみるのだぁっっ!」

 うん怒ってるね、激おこプンプン丸と見える……

 可愛いフランス人の少女の姿に身をやつしたバアルが続けた。

 アスタロト以上の怒りが多分に含まれた言い方、いいや怒声を潜めたおっかない声音である。

「まあまあ、アスタ…… まずはこの馬鹿の話を聞いてみようじゃないかぁ! 短気は損気、だよぉ! んでお前さぁ? 兄上姉上が犠牲になるとか何とか? そう決めたんだよなぁー? サタンとか言う奴を偽ルキフェルにして妾の事も操ってたよね? どう面白かったかい? 魔神を掌で転がす気分はさぞ痛快だっただろうねぇ~、そこら辺もどういう理屈でやっていたか聞かなければね…… 気持ち良くお前を消す事も出来ないじゃんねぇ~? さあ、サッサと妾と弟を納得させてみせてくれよぉ? おいっ! 早くしろよっ! お前っ! 妾を馬鹿にしてるのぉ? 爺、舐めてんのぉ? 殺すよぉ?」

 どうやら両者ともに話した後で問答無用で殺す事は決定済みらしい。

 コユキも完全にフェイトの敵に回った感じで冷たい視線を向け続けて居る、リエやリョウコも同様だ。

 トシ子に至っては境内から拾って来たのだろう、大き目の石七つを自分の周囲に浮かべて今にも高速で打ち出さんばかりであった。

 善悪が唯一いつもと変わらないムードで全員に向けて言った。

「これこれ、皆でそんなにいきり立っていたんじゃフェイト君だって話し難いのでござるよ、それに言葉が荒れてたらまとまる話もまとまらないのでござる、まずは冷静に話せる者だけで話すのでござる! それ以外は聞く事に集中! でござるよ! おけい? んで冷静そうなのはっと……」

 そこで言葉を止めた善悪が周囲を見回すのであった。

 コユキの家族達は論外、バアル配下のハミルカルもアスタロト配下の編みぐるみ達は勿論、割と冷静なキャラ設定だったアフラ・マズダもアンラ・マンユも憎しみの視線を向けているし、スプラタ・マンユの七柱は殺気みたいにオーラを漲らせっぱなしで、イーチに至ってはどこで調達したのかダキアソードをギラつかせながら反りの内刃に自分の舌を這わせていた。

 善悪は溜息を吐きながら本堂の端で座っていた二柱に声を掛けた。

「どうやらまともに話が聞けそうなのは某以外では君達二人しかいない様でござる…… スカンダとガネーシャ、こっちに来てフェイト君からの聞き取りを手伝って欲しいのでござる、おいでおいで、んで他のメンバーは少し距離を取るのでござるよ、物理的に! ほら離れるのでござる! しっしっ!」

 善悪に手招きされた地蔵と桃色象が歩いて近づき、それ以外の憎しみと怒りに支配された面々は不承不承ながらも少し離れるのであった。

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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