【連載小説】堕肉の果て ～令和に奏でる創造の序曲（プレリュード）～
第三章 苦痛の葬送曲（レクイエム）
５７０．布教活動
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コユキが一定の理解を示してあげた事で、勇気か自信かはたまた免罪符かは分からないが、何かを得た感じのデスティニーは言葉を続けるのである。
「言うまでも無い事だが、ここは東京じゃん？ 地方出身者の憧れ、漠たる期待で何となく上京しても何とかなるって勘違いさせてしまう世界屈指の大都会じゃん？ 当然、夢に破れて～♪ 寂しがり屋は一～人♪ 的な事って溢れかえってる訳じゃんか？ 成功者は失敗者に恨まれる事に怯え続けて居る！ そんな歪な都会、街な訳じゃん？ 人々の恨みや妬み、嫉み、怒りや怯え、欲と顕示欲と承認欲求、構って欲しい気持ちと、せめて同情をしてくれよ？ いやそれもダメならアンタもそうだろ？ 違うとしても分かんじゃね？ そんな不安定な気持ち、いわゆる不安感が溢れて居ながら何となく生きていける日常…… そんな感じが今の東京じゃん？ んだから夢枕に立って言ってやるんだよ！ 『お前、恨まれているな…… 自分の胸に聞いて見るが良い？ この先、お前を多くの人々の悪意に満ちた負の想念が塊となって襲う事だろう…… 次々と、次々と際限無く、な…… まあそれも仕方が無いな、自業自得だろう…… お前自身が行い続けて来た業への当然の報いなのだからな…… だがな、私、運命神に帰依すると言うのならば守ってやらん事も無いが…… どうだ？ 今の生活を続けたいだろう？ ならば心の中で答えるが良い、私に帰依すると…… さすればどんな悪意や攻撃からもお前を守ってしんぜようぞ？ どうだ？ せっかく成功を手に入れたお前の運をお門違いの逆恨みから来る恨みや呪いで手放したくは有るまいが、私に帰依せよ、それで全て上手く行くのだからな…… 私が守ってあげようじゃないか？ なあ？ 安上がりだぜぇ？』、とまあこんな感じの定型文を朗読して、言われた本人が納得して帰依するじゃん？ そこからだけつけ取りっぽく徴収して来たからね、窃盗とかじゃなくて、お互い納得した上のウィンウィンの関係を作り上げて来た訳なんだな！ 俺は！ どうだい？ 上手くやってると思わね？ 聖女コユキぃ？ とかなんか名乗ってたよな？ アンタ」
コユキは格好付けた表情を浮かべて答える、例によって肉のせいで全く普段と変わらぬ顔付だったが……
「なるほどね…… 確かに、人々が坩堝の様に依り縋っている今の首都、東京の一面に即した布教活動、いいえ、人々への救済になっているのかもしれないわね…… 昨今SNS上を賑やかに盛り上げている一点突破のやな感じぃコメントと闘っていたのね、アンタってば…… そうか、ぐんぐん来てるあのアニメ映画、あの『領域展開』を自分一人で孤独の中、実行してたって訳なのね…… ふぅー、やれやれ全く、全くやれやれだぜっ！ そんな境地に居たって訳かぁ、同情する、いいえ、惻隠するわよ、デスティニーさん、んで夢枕で言った言葉ってそれで終わりなのん？ どう？」
一定所か完璧な支持者っぽい事を言ったコユキに安心したのだろう、理解者たるコユキに語るデスティニー、運命神の舌は滑らかそのものである。
「いやいやいや、やっぱさ、漠然とした不安を煽るだけだったら中々信徒ってビビってくれない訳じゃん？ どっちが得か、とか何とか悩んじゃう事になるんだよね？ んだから言ってやる訳よ！ 今ならお得に信徒になれるけど、ここで断るとかしたら、俺自身？ 俺とその仲間がお前の運命を捻じ曲げる事になるかもしれないなぁ？ ってな！ 相手が黙り込むんだよ、そう言うと！ そこで徐に言ってやる訳だ、『勘違いするなよ？ 誰かに恨まれるかも？ とか優しく言ってやってたけどな、実の所、俺達に恨まれても良いかって話だ！ よく考えて返事した方が良いんじゃねーかなー？ 月夜の晩ばかりじゃねーし、駅のホームで後ろばっかり気にしていたくねーだろぉー？ どうなんだっ！ おうっ？』、ってね♪ 大体まともな神経してる金持ちはこれでイチコロよ♪ どう？ 俺ちゃん凄くね？ 今の時代にジャストフィッツッ！ じゃね？」
コユキは遂に神に手を上げたのである。
バッコーンッ！
「バカやってんじゃないわよ！ アンタそれ平成時代の極道のみかじめ料要求と同じじゃないのよぉ！ 一本のビールだけ頼んで、開店から閉店まで舐める様に味わって、『ワイらが居たら商売あがったりでんなぁーママ、そろそろ折れたらいいんとちゃいまっか？』とか何とか言っちゃう手口の奴じゃないのよ！ 駄目よ、駄目ぇ！ ふぅぅー！ 良しっ！ 皆に返しに行くわよ！ 異論は認めないわっ！ 更生の道を歩むのよォぉ！ キキイィィーッ！」
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拙作をお読みいただきありがとうございました！
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