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【連載小説】私、悪役令嬢でしたの? 侯爵令嬢、冒険者になる ~何故か婚約破棄されてしまった令嬢は冒険者への道を選んだようです、目指すは世界最強!魔王討伐! スキルは回復と支援しかないけれど……~
61. 令嬢、常識を教える ④
その後、日課になっている恐ろしい話の読み聞かせを行うべく、林の中の集落を訪れた新生ノブレス・オブリージュの面々はいつも通りにエマの話に戦慄しつつ、魔力総量を増やしたのであった。
今は小川の畔に腰を降ろして雑談をしているエマ達である。
集落の幹部で今やエマ達を抜き去り、先にゴールドランク冒険者になる為の試験を受ける権利、上級モンスターの魔石を規定個数の六十個、ひとり二十個の納品を済ませたパーティー『努力あるのみ』のジャックとチャーリー、ハンスに対してデニーの紹介を済ませた一行に、集落の人々が口々に勧めてくれた夕食を、ご馳走になろうと待っているのであった。
ジャックがスープ皿と木のスプーンを持って近づいて来て言う。
「お待たせしましたエマ様、デニーさんのお口に合えば良いんですが」
エマが皿の中を覗き込むと、案の定この集落でお馴染みのメニュー、モンスターの臓物煮込みであった。
「ありがとうジャック、頂きますわ」
「「「いただきます」」」
「? ありがとう、頂きます」
エマ達四人の顔色が僅かに曇った事を訝しく思いながらも、皿とスプーンを受け取ったデニーにエマが小声で囁いた。
「デニー、このお料理はとても臭いのですわ、無理して食べなくても宜しくてよ、食べた振りだけして隙を見て川に流してしまえば良いのですわ、私達はいつもそうしておりますの」
デニーが驚いて周囲を見渡すと、イーサン、デビット、マリアが揃って自分に向けて頷いている姿が目に止まる。
デニーは覚悟を決めた顔でスープから臓物を掬い上げると、躊躇なく口に運び、見る見るうちに平らげてしまったのである。
「うっぷ、ゴクン! ご馳走様でした! 美味しかったですわ! ありがとう! うっぷ」
エマが慌ててデニーの傍に駆け寄って、背中を擦りながら小声で言った。
「デニーったら、飲み込んでしまっては駄目ですわ! お腹を壊してしまうでは無いですか! ほら戻しちゃうのです、さあ、フルリバースするのですわ! 」
「……しない」
「え? 」
青褪めてプルプルしながらも、デニーは確りとした口調で答えたのである。
「民が、それも貧しい人々が供してくれた献物を、フルリバースなんて出来ない! ましてや捧げられた献上品をバレない様に捨てるなんて以ての他だよ…… そうは思わなかったのかい? エマ、イーサン、マリア、デビット」
「「「「…………」」」」
ジッと黙り込んで俯いてしまった四人である。
ややあってエマがイーサン、デビット、マリアに向けて静かに、しかしはっきりとした意志が込められた声で告げたのだった。
「いただきましょう」
「「「はい」」」
四人揃って皿に口を付けスプーンで掻き込んで一気に食べ切り、無理やり飲み込んだ後、代表してエマが叫び、三人も続くのであった。
「ご馳走様でした! 美味しかったのですわ! ありがとう! 」
「「「ありがとうございます」」」
ニッコリと微笑むデニーの顔を見つめながら微笑みを返すエマ達四人。
常識を教えるつもりが、自分たちのパーティー名『ノブレス・オブリージュ』の意味に関わる事柄を、逆に気付かせて貰った様である。
大いなる力に伴う責任や義務について考えを巡らしながらギルドの宿へと帰ったエマは、マチルダにデニーの個室も頼むと、ようやくゆっくりと休むのであった。
こうして五人組となった『ノブレス・オブリージュ』の面々は、この晩、宿のトイレを占有し続ける事で、フルリバース出来なかった臓物煮込みの成分を、オールパスする事に成功したのである。
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お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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