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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
331.無限饅頭

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 正一はこのやり取りを見て更に自信を深めた風情でコユキに向けてクネクネさせていた右手を意味ありげに揺らして言ったのである。

「饅頭恐い、って知ってる?」

意外な言葉、只コユキは頭だけは良いのである、他は兎も角、頭、記憶力だけは良いのであった。

「あの…… 落語の? だったら知ってるけど…… 何よ、突然? それがどうしたって言うのよ!」

正一たる神は口元を捻り上げて質問を重ねた。

「そう、その主人公の名前覚えているかな?」

 コユキは淀みなく答えるのであった、何よりちょっと前にスプラタ・マンユの次兄、流暢りゅうちょうに話すことナンバーワンのモラクス君が幸福寺での夕食後に披露してくれた演目だっただけに、確りと覚えていたのだ、答えられないわけは無い! 筈だったのだが……

「んなの常識じゃないの! 『饅頭恐い』の主人公は、は、は、し、ショウイチ…… 正一さ、ん……」

「そうそう、良く出来ました! 正解ですよ! んじゃ、実演! あぁ、饅頭恐いなぁ! 特に漉し餡こしあんでねっとりとした蒸し饅頭が恐いかなぁ?」 (ニヤリ)

 言った直後、正一が寝そべっていたゴザがパアァっと輝き、ニヤニヤしている正一の丁度顔の前に、しっとりとした蒸し饅頭、分かり易くいうと温泉地で蒸気を利用して作られる事が多い温泉饅頭的な物が数個、姿を現したのである。

ゴクリっ!

 少し飢え始めてきていたコユキの喉が音を鳴らした。

――――くっ! 美味しそうじゃないの…… んでもこんな邪悪そうな存在にライコー様たちを渡してなるもんですか! 頑張れアタシ! ここが踏ん張り処だわ!

 中々の覚悟であろう、飢えているのに…… くっ成長したなぁお婆ちゃん!
 そんなコユキの努力を踏みにじる様に、憎くいあんチキショウ、正一の野郎が言葉にしたのであった。

「ああ、甘い物ばっかで飽きて来ちゃったなぁ~、よし! 次はコレだ! 恐いなぁ~、恐いっ! 肉饅頭が怖くて仕方が無いぜぇ~」(ニヤニヤリ)

パッ!

 寝転んでいた正一の前に大振りの肉シューマイ六個と、ドンブリに盛られた白米、タップリの卵スープと、ツケアワセだろう小皿に盛られた塩辛そうなザーサイが現れたのであった。

 体を起こし胡坐あぐらを掻いて正一は手を合わせ言うのであった。

「こりゃありがたい! 頂きます!」 ぱんっ!

コユキは思わずよだれこぼしてしまうのであった。
 そして、ジュルジュルしながら聞いたのである。

「ね、ねぇ? そんなん出るの? 饅頭だけじゃなくてシューマイとか? おかしいんじゃないのん?」

正一、神様は堂々と、そして白米とシュウマイを口いっぱいに含んだ後、卵スープで一気に飲み込んでから気安く答えたのであった。

「ふぅ、プッハァ! 旨いっ! あ? これ? こんなの簡単だよ! 俺自身がシューマイを肉饅頭だと思っているからな! ついでにライスとスープ、ザーサイまで有ってはじめて肉饅頭セットだと思えば……(ニヤリ)なぁ、判るだろう?」

 コユキの少し減り気味な腹部が音を鳴らしてしまった、グーグーと、恥ずかしい事だ……
 しかし、コユキの精神はこんな事では負けないのであった。
 堂々と正一に言い返したのである。

「ふ、ふーん? それが何か? 全然魅力を感じないわね! だって見てるだけなんだもん! 試食とかあるんだったら話しは違ってくるかもだけどさ…… 今のまんまじゃ何も感じないわ! ほらっ! 試食よ! 試食ぅっ! ちょっとは食べさせなさいよぉ! コユキが飢えてるでしょうがぁぁー!」

 負けてるっぽかった…… 残念至極っ!

 しかし、このコユキの魂の叫びを無視する位、正一、いいや神は容赦無く追い詰めてくるのであった。

「ああー腹いっぱいだぁー! んでも、デザートだったら入るかもなぁー、そうだな…… チョコ饅頭、皮薄々で! 生クリームベースでピスタチオクリームと生クリームベースでヨロ! ああ恐い恐い、クレープっぽい饅頭なんて恐くて仕方ないわぁぁぁー!」

 現れた。
 表参道辺りで定番のスイーツ、オーソドックスなクレープが……
 正一は当たり前の顔でパクパククレープを食べ進め、いろんな意味で満足顔であった。

コユキは搾り出した……

「お、お願い…… 試食を…… な、なにか、ううん、それ、それを食べさせてください…… か、神様ぁ……」

 最早、負けていた……
 少し減り気味だったコユキのお腹は、恐ろしい音を響かせ始めていたのである、ギュルルルゥゥギュルルルゥゥ! っと。

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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