見出し画像

堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
306.オラに少しづつ元気を分けてくれーぇ!

はじめての方はコチラ→ ◆あらすじ◆目次◆

前回までのあらすじ

 コユキと善悪、幼馴染の二人組みは揃って三十九歳、独身生活を謳歌していた。
コユキはBL三昧の日々を送り、善悪はフィギュアを中心に様々なサブカルにのめり込んでいたのだった。

平穏な日々は悪魔の襲撃によって一変した。

 コユキは家族の魂を奪還するために東奔西走することになり、善悪もまたコユキを助けたい一心で戦いに身を投じて行くのであった。
死闘の果てに目的を達成した二人は、残された謎を解く為にパーティーを続けていくことを決めたのだった。

あれから半年が過ぎ、四十歳になった二人は再始動を始める。

 ウトゥックから聞かされた『静寂と秘匿を以って分かれ道を覆い隠す御方』とは?
 掘り出されたウランが地球上の生命にどんな影響を与えるのか?
 ライコー達が口篭る『神』の狙いは、どのようにしてコユキと善悪を死に至らしめるのか?
 オンドレ、バックルの兄弟と三度の邂逅は実現するのか?
 ルクスリアとイラは許してくれるのだろうか?

 謎は更なる謎を孕み、混迷の度合いを深めて行くのであった。
 悪魔と接し続けたことで、徐々に人間にとって大切な物を失っていく二人……
 加速する狂気はコユキと善悪を蝕み続けていく。

さて、その顛末は……

_________________________

「ほら、さっさとやるのじゃ善悪! 魔力切れ如きで死んでも良いのかえ!」

「む、むぅ~ん」

「地面に手をついているんだ、そこから吸ってみろよ善悪、スーって、ほらスーって」

「じ、地面から? はぁはぁ」

 トシ子の叱責にもマトモに答える元気は無く、ヨロヨロと痩せこけた体を僅かに動かして、確りしっかり両掌りょうてのひらを大地に広げて言うのであった。

「す、スゥ~!」

呆れた顔のトシ子婆ちゃんの横からアスタロトが再び声を掛ける。

「声じゃなくて魔力回路を動かすんだぞ善悪、早くしないとマジでそろそろ死んじゃうぞ! んまあ、我にはもう一人の兄上コユキがいるし、なによりトシ子がいるからな! 死んでも良いぞ善悪!」

「やっだー! ダーリンたらぁ~♪」

スパルタ所か名実共に悪魔な言い様にほぞを噛む善悪を見かねたのかモラクスの声が響く。

「善悪様、エクスプライムを他者に掛ける時のやつです! あの要領で魔力を放出するのではなく逆に体に取り込むのです!」

続けてラマシュトゥが悲鳴のように言った。

「ベクトル反転の要領ですわ! 『即時配達ウーバー○ーツ』の!!」

 二人の声を聞いた瞬間、目をクワっと見開いた善悪に向けて、周囲の地面や木々、草花などの命ある者からそれぞれ僅かわずかずつ、然ししかし合算すれば大量の、それこそコユキレベルの巨大な魔力が流れ込むのであった。

 分かり易く言うと、国民的アニメの主人公がファイナルウェポンの前準備で使用するあの玉、

「オラに少しづつ元気を分けてくれーぇ!」

的な感じだと言えばご理解頂けるであろうか?

 兎に角、ガリガリ死に掛けだった善悪の体は魔力の奔流に包まれた、のみならずその肉体までいつもの可愛らしいメタボ坊主に戻っていたのである。
 立ち上がり両の腕を大仰おおぎょうに広げた善悪は、周囲を睥睨へいげいするように顎を上げてから言うのであった。

「くははははは、我、復活!」

 多分自分が思うカッコイイ言葉なのだろう、困ったものだ……

 トシ子やアスタロトは私、観察者とは些かいささか評価が違っていたらしく、拍手をしながら口々に賞賛の声をあげたのである。

「おお! やったぞぃ! 善悪流石じゃのぉ! んでもそりゃそうか、何しろ聖魔騎士じゃからのう、しかし想像より随分早く物にしたのは確かじゃ! お見事じゃぞぃ! 褒めてやるぞぃ!」

「うむ、確かに凄いぞ善悪! 何より取り込んだ魔力の総量が凄いな! コユキも大概だが、ムスペルヘイムであった時の善悪の聖魔力量の巨大さに漸く得心がいったわ! あの時は魔界の瘴気を取り込んでいたのだろう? 違うか?」

善悪は取り込んだ魔力、若しくは聖魔力に包まれて輝きを放ちながら、頭をピカピカさせて答えた。

「いや、あの時のエナジーは虎○さんの羊羹でござるよ! 言わば小豆パワーでござる! 分かった?」

「なるほど」

 修行二日目の成果を喜ぶメンバーたち。
 まずは善悪たちが昨日から何の修行を頑張っていたのか、そこから説明をして置かねばなるまい。

***********************
拙作をお読みいただきありがとうございました!

この記事が参加している募集

励みになります (*๓´╰╯`๓)♡