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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
339.全滅

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 プルプルしながら恍惚こうこつとした表情を浮かべているガープがちょっと気持ち悪かったので、話題を変える事にしたコユキであった。

「ねえ、そんな事よりなんで熊とアスタが戦ってるのよ? スプラタ・マンユの皆や善悪だったらタマちゃん、『弾喰らい』と面識もあるんだから、問答無用で戦いになるわけ無い筈よ! ねえガープちゃん、皆はどうしてんの?」

「ええ、ええ、そうでしょうとも、ええ? あ、何ですか? マスターとスプラタ・マンユですか? だったらアッチでぶっ倒れてますぜ、キヘヘヘ」

「ええぇぇー! なんでなの? どういう経緯で?」

コユキの質問に真面目な顔に戻ったガープは自分なりに精一杯の説明を始めた。

「えっとですね、ざっくり言えば、モラクス、パズス、ラマシュトゥ、アジ・ダハーカ、シヴァ、アヴァドンは魔力切れで、長兄のオルクス卿は吹っ飛ばされて気絶中、マスターは必死に仮病を続行していますぜ、キヘヘ! もっと丁寧に言えば、全滅ですぜ、キヘヘヘ」

「えっと、何? もっと順を追っていってよ!」

 時間が掛かりそうだ…… ならば、アホのガープに聞くよりも直接観察した方が早い。
 早速、数時間巻き戻して善悪達の様子を確認する事にしよう。


 ウーバーのベクトル反転によって幸福寺の境内に転移してきた三頭の熊は、キョロキョロと不思議そうに周囲を見回していた。
 目の前に立っていたのはスキルを使って彼らを呼び寄せた張本人、善悪とオルクスの二人であった。

 二人も一瞬ギョッとした顔をしていたが、そこは厳しい修行を重ねて来た善悪である、落ち着いた口調で三頭のリーダー『弾喰らい』に語り掛けたのである。

「ひ、久しぶりでござる、前に会ったでござろ? よ、ヨウコソ幸福寺へ、でござる」

「グルゥ?」

 理解しているかは全く判断がつかないが、暴れるでもなく首を傾げている姿は、巨大な体とのギャップで不思議と可愛らしくも見える。
 一方のオルクスは飽きちゃったのかさっさと本堂に向かって歩き出している。

「まあ、コユキ殿が仲間って言っていたでござるから心配いらないと思うのでござるが…… んっと、良い? ここら辺で大人しくしているのでござるよ? 良い? おけい?」

「ガオ?」

「ふぅ~」

 イマイチ伝わっていない気配が濃くなった気がする善悪であったが、間を持たすために保管用の冷凍庫から、お年賀に檀家から貰ったギフトのハムセットと、ふるさと納税の返礼品として毎月贈られてくる九州のある地方自治体から届く牛乳を数本持って境内に戻るのであった。

 大きなドンブリになみなみと注がれた牛乳と横に添えられた大皿に乗った十数個の丸ごとハムに、歓迎の意を感じ取ったのだろう、三頭の熊は腰を降ろすとゆっくりと美味しそうに牛乳に舌を運ぶのであった。

 その様子をホッとしながら見つめていた善悪に向けて、師匠であるトシ子が声を掛けた。

「善悪よ、そろそろ訓練に戻れるじゃろ? ダーリン、アスタが待って居るぞい! ビリビリ訓練再開じゃ!」

善悪は内心で思うのだった。

――――チィっ! くそババアめ! 上手く誤魔化せたと思ったでござるに…… 面倒臭ぇーなぁ、もうどっか行っちゃえば良いのに、天国とか……

 しかし、表面上は素直で真面目な弟子の姿勢を崩す事無く戸惑ったように答えるのである。

「そうしたいのは山々でござるが、誰かが見張っていなければならないでござらぬか、訓練に戻りたいのは山々で、でも出来ないのは山々、もう本当に山々でござる」

「んじゃアタシが見ててやるわい、いざとなったら『石牢プリズン』で閉じ込めればいいじゃろ? さっ、早くビリビリやって来るのじゃ!」

「くっ! 分かりましたっ! 行って来るでござるよ糞婆クソババア、師匠、あーあ、あーあ」

 嫌々さを全身で表現しながら山々らしいビリビリ訓練に向かう善悪であった。
 トシ子は熊たちから少し離れた木立の下に腰を下ろし様子を伺っている。

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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