見出し画像

【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
467.攻撃パターン、プサイ ①

はじめての方はコチラ→ ◆あらすじ◆目次◆

  アスタロトの号令に答えたのは、右隣でカギ棒を構えたコユキと、アンチマジックが消えた事で回復エリア『再生雨エピストロフ』を展開させたラマシュトゥの二人である。
 
 そこからは先はバアルの時間であった。

 次々と繰り出されるアスタロトの極寒の冷気、灼熱の炎、コユキの肉を震わせる攻撃も魔弾の嵐も、リフレクションの効果で鼻歌混じりで乗り切ったバアルに向けてリフレクションのオリジナルマスターたるアスタロトが自分同様回復エリアによって反射されたダメージの回復を試みていたコユキに言った。

「やはり回復もアイツに掛かってしまうな、コユキどうしようか?」

 コユキが呆れたように答えた。

「んなの簡単じゃないのん? ラマシュトゥちゃんアイツ、バアルに回復掛けてちょうだい♪」

「ああ、なるほど、そうすれば反射で仲間たちに回復が、ですね…… 了解、『再生雨エピストロフ

「ん? ……あれれれ、な、なんで反射されないのよぅっ! どうなってんのぉっ?」

 コユキが驚くのも無理は無い、本来、攻撃も回復も対峙する相手に反射するのがリフレクションである、効果は双方向、それがアスタロトの持っていたオリジナルの反射だった筈である。
 ところがバアルのスキル、『複数反射マルチプルリフレクション』では、仕掛けた攻撃はこちらに返って来るものの、ラマシュトゥがバアルに掛けた回復はコユキ達に戻って来る事が無かったからである。

 自分の放った冷気と火炎であちらこちらに凍傷と火傷を負ったまま、アスタロトはニヤニヤ笑っていたバアルに言う。

「なるほどな、貴様のスキルは魔法では無く、魔法と同じ効果を得る為に構築された魔術、らしいな、我の反射を模倣するとは見事だ、その上お得意の因果、原因と結果に干渉する術式を組み込むとは正直驚きだ、流石は位階二位の魔神だなバアル…… だが、魔法を魔術で再現する場合、そこに手を加えるという事は、元となったオリジナルの何かを欠損させる事に他ならないのが道理だ、つまりこのスキルは完璧な反射は不可能、部分反射であろう? 所詮、紛い物に過ぎぬ! 違うか? バアルよ」

 バアルは気安い感じで答えたのである。

「せいかーい、良く出来ましたぁぁ! そうなんだ、妾、それとこの子ハミルカルに発動してる『複数反射マルチプルリフレクション』はね、僕たちに対する攻撃は九割程度反射するんだよ。 まあ一割くらいはこっちに残っちゃうけどね! まあでも妾には自動回復があるし、この子、ハミルカルに通ちゃったダメージについては、因果を変えて妾に転嫁させているんだよ、回復やバフについての効果も一割程度だけ、残りの九割は反射されてるよ? ただし因果の結果を変える事でそこらの空中にだけどね♪ どうだい? 僕器用だろう? 完全な反射を手に入れる事より、妾には敬虔けいけんなこの子たちの方が大事だからね!」

 ハミルカルがハフハフしながら顎を撫でられている。
 アスタロトは言葉を続ける。

「一割、か…… ラマシュトゥ、引き続き回復を頼む、それにしてもバアルよ、良いのか? 手の内を簡単に言ってしまって」

「なんでだい? お互い手が出せない状態だろ? こっちは既にオリジナルのアストラルバディ、比べて貴様たちは肉体持ちだよ? 空腹も感じるだろうし睡眠だって必要だろう? 妾に負けは無いじゃないか! 消極的勝利って所かな? まあ、今回は見逃すけど次は無いからね、次は確実に殺してやるよ! その時にはその女、女だよね? の秘密、何故かスキルを使えてた謎も解いてみせるからな! はは、いつ襲われるか怯えながら待っていればいいさ!」

 ふう、取り敢えず見逃して貰ったようである、良かった良かった。
 んな事思う訳も無く、次の瞬間コユキの叫びが広間中に響くのであった。

「よし、皆ぁ! 十割じゃなかったけど九割だってさ! やる事は一緒っ! 予定通りだよ! 攻撃パターン、プサイ! 善悪ぅ、一割よ、我慢してよね! 覚悟は良いのぉ?」
 
「良いに決まっているでござろう! 来いってばよぉぅ!」

 アスタロトの時間稼ぎの間に浦島さんの腰蓑こしみの、公時さんの腹掛け、更に更に、自分のオリジナルスキル、エクスダブル(一割有効)を発動させた善悪に向けて、『聖女と愉快な仲間たち』の面々はそれぞれ自身が保有する最大の攻撃手段でもって、一斉攻撃を浴びせ始めたのであった。

***********************
拙作をお読みいただきありがとうございました!


この記事が参加している募集

スキしてみて

励みになります (*๓´╰╯`๓)♡