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【連載小説】私、悪役令嬢でしたの? 侯爵令嬢、冒険者になる ~何故か婚約破棄されてしまった令嬢は冒険者への道を選んだようです、目指すは世界最強!魔王討伐! スキルは回復と支援しかないけれど……~

60. 令嬢、常識を教える ③

 デニーが誰憚るはばかる事無く滂沱ぼうだの涙を流しながら答えたのであった。

「な、なんと! ここが民たちの悲しみや苦しみを救う、救世の場所、その真っただ中だったと言うのですね! エマ! 私はこの立派な幼児に何と声を掛けて報いれば良いのですか? 教えてください! 」

 熱い、情熱の塊のようなデニーの声に答えたエマの言葉はこうであった。

「まあ、デニーったら、先程お教えしたでは有りませんか、ほら、串焼き屋さんで♪ 」

 デニーはハッとした表情を浮かべた後、間を置かずにレイブに叫ぶのであった。

「ご馳走様でしたっ! 美味しかったですわっ! ありがとうっ! レイブさんっ! 」

「お? な、なにが? 」

「良いのですわっ! 」

「エマお姉ちゃん? い、いいのかよ? 」

 その後、モンスターのお肉買取所のグロリアと、武器防具整備所のリッキーとモーガンの店を案内したエマは、イーサンとマリア、そしてデビットの同じような詮索せんさくはするなと言った抗議の声をデニーに聞かせた後、絶対行っておかなければならない場所、丁半賭博ちょうはんとばく賭場とばに入って大きな声でデニーに言って聞かせるのであった。

「さあ、デニー? ここはギャンブルをする場所、いわゆる賭場でしてよ! どうですか? 貴方の目にはこの場に集った人々が何を求めてこんな事をしている様に見えていますか? 」

 デニーは慎重に首を捻って考えてから、やや時間をおいて答えたのである。

「うーん、ギャンブルをする人々は何とかして勝とうとしている筈ですから、恐らくですが、勝とう! 集った人々の中で勝ち組になろうとしているのでは無いですか? 僕自身はギャンブルに賭けた経験は無いのですが、いつでしたか、賭け馬競争で、バーミリオン侯爵家の馬たちが、並み居る馬たちを相手に圧勝したシーンを見た事がありましてね、あの時は興奮したものですよぉ! タギルセ伯爵の悔しそうな顔ってば! 思わず噴き出したものでした! ですから、ここに集った人々は、負けたくない、他の人より勝って多くのお金を持ち帰るぞって思っているのでは無いですかね? どうですかエマ? 」

 エマが満足げな表情を浮かべてデニーに言った。

「そうなのですわ、デニー、貴方の答えはほぼほぼ大正解ですのよ! ここに居るのはテラ銭を取られた上で残った僅かわずかばかりの金額の大小を争っているだけの愚か者だけなのですわ、だと言うのに御覧なさい、ご自分たちが敗者である事に気が付いていない哀れな愚者ぐしゃたちの、勝った負けたと一喜一憂いっきいちゆうする惨めな姿を!

この人々は踊らされている事にすら考えを及ばせる事が出来ないまま、空しく老いて行くだけの無価値な存在ですのよ! 滑稽こっけいですわ……

それだけでなくあそこで派手めな肌色を曝しさらして偉そうに仕切っているディーラーもご覧になって下さいませ! あのいきった人たちでさえ、この場を仕切っている胴元に良い様に言われて使い古されるだけのくず、便利な恨み受付係に過ぎないのですわ、おっと、珍しい肌色だからと言ってじろじろ見てはいけないのですわよ、デニー! あんまり見てしまうと訳の分からない『イチャモン』とか言うのを言ってくるんですってよ! 」

 デニーは答えた。

「えっ! そうなんですか? てっきり見て欲しくてあんな真似をしているのかと…… でも、そうですか…… 見てはいけないんですね、分かりましたエマ! 絶対に見ませんよ! 」

 喧噪けんそうの中、負けないぐらいの大声でこんなやり取りをしていたエマとデニーは、賭場の運営メンバーのみならず賭け客の皆さんからも涙ながらの『帰れ』コールを浴びせられ、這う這うの体ほうほうのていでその場から逃げ出したのであった。

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お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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※この作品は『小説家になろう』様にて、先行して投稿している作品でございます。宜しければこちらからご覧いただけます^^↓

公爵令嬢冒険02


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