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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
340.闇落ち

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 とぼとぼと嫌そうに、本当に嫌そうに訓練に戻った善悪にも言い分がある。
 無限の魔力を手に入れた善悪にクソ馬鹿阿呆の弟、アスタが次に求めた物、それは無敵であった。
 ウン判らないね、そりゃそうだろう……
 
 アスタ曰くこうである。

「ほら善悪! 『無限魔力』とか最強っぽいよなぁ、なっ! んだからさぁ、守備側もさぁ、無敵ってみないかぁ! 炎、低温、雷とかさぁ? 後の重力とか光り? とか大した事無いだろう? なあ、高低温と電気のビリビリだけでもクリアしとこうぜぇぃ! んな、んな? んで無敵の存在、『何だ? これがお前の最大攻撃か? ふんっ、つまらないな……』とか言っちゃえば良いじゃんかぁ?」

その場では善悪も調子に乗って答えてしまったのであった。

「なるほどね~! んまあ、それが格好良いのは分かるけどさっ! お前って氷結と爆炎、所謂いわゆる温度変化が主な能力なんでござろ? 電気とか出来無いんでござろ? 出来るんならやって欲しかったでござるよ? 出来るならね! でも、出来ないんなら仕方ないじゃないでござろう? あー僕チンやりたかったでござるが、アスタが出来無いんだから仕方が無いでござるよー! 可愛い可愛い弟に恥を掻かせる訳にはいかないでござるからね~、仕方が無いから『こんなものか、こんな事が我に効くと? ふはは本気で思っているのであれば酷く滑稽こっけいだな?』は取って置くのでござる! 可愛い弟の名誉を守りたい一心でねっ! で、ござるよぉ」

アスタロトは平然として言い返すのであった。

「ああ、それな! そこは熱伝導が低伝導体、人間的に言えばオーム? 抵抗だっけか? アレが高い物質を用いれば良いんだよ、兄者ぁ? 抵抗によって欠損したエネルギーはその物質や周囲の大気に逃げるだろう? そいつにそっと指向性を与えてやれば、ほらな!」

ビリビリビリビリビリッッ!!!!!!

「っんギャヤヤヤヤヤヤヤヤァァァァァァァ!!」

「痺れるだろう? んなっ!」

「ああああああああ、あっあっあっ、くぅぅうっ! 痺れたで、ござる…… プスプスぅ~、と言うかこれ普通は死ぬよ? ねぇ、死ぬよ? いいの?」

アスタは笑った。

「ははははっ! 普通はな! んでも善悪生きてんじゃんかぁっ! 良かった良かった! 普通じゃなくって! そうこなくっちゃな、兄者ぁ! くあっは、あはははは!」

「んんんん~! くっくっくっくくくぅ~」

 口惜くやしがる善悪、『策士策に溺れる』的な感じで朝からズットビリビリさせられて雷撃耐性を高め続けさせられていたのであった。

 当然辛い。
 寒さが苦手、暑いの嫌だわ、いろんな人がいると思うがこんな人間はいるのだろうか?
 少なくとも私、観察者は聞いたことがない、『ああ、アタシ感電するのは結構大丈夫なんだよねぇ!』とか言っちゃう人間を……

 ほら、放って置いた虫歯とか、昔の骨折痕とか変にムズムズするじゃない? 電気の刺激ってさ? 分からない人は是非一度、骨バキバキやってからもう一度読み返して欲しい、と思っちゃう私、観察者である、こういう痛みってどうしようもないんだよね……
 骨身に染みるって言うのかな? んまあ、身は無いんだけどね……

 まあ、兎に角、善悪爺ちゃんはこのビリビリ耐性獲得訓練が、余程性に合わなかった様で、大嫌い! 逃げる一択だった様であった。

 そんな善悪にとって地獄の訓練を昼過ぎまで過ごした時、不意にコユキからの連絡があり、時間稼ぎに迎え入れた存在が、巨大な月の輪三頭であったのである。

 善悪は思った。
 ババア、見てろ、と。
 サボれるならサボりたい…… それ程この日の訓練内容は法師善悪を追い詰めるには余りある物であったのである。
 故に、坊主として決して願ってはならない事、その事を善悪はほんの一瞬だけ、でも確りと一瞬だけは願ってしまったのであった。
 
 さっき出て来た言葉…… あれだっ!

どっか行っちゃえばいいのに…… 天国とか……

 何と言う事でしょう! 善悪ともあろう者が人の死を願ってしまっていたのである……
 あの米国の聖女と聖戦士、キャシィとウィル以外にこんな事を願った事は無い純真な善悪が、とうとう…… 闇落ちしてしまった瞬間であった…… くうぅっ、残念至極!

「ンア!」

 そう、闇落といえば悪魔、このお話には大量の悪魔が登場している事はみんな知っての通りである。
 さらに、メインキャストたる善悪が初めて(?)闇落ちしてしまったこの時、最初に反応してしまう悪魔と言えば他にいないのであった。

「オオオオ、オイオイオイイッ!」

 突然叫びを上げた彼に、弟たちと妹が驚きの目を向けた、幸福寺の本堂、そのご本尊大日如来に向かって右側での事であった。

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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