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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三章 苦痛の葬送曲(レクイエム)
523.レグバ

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 汚そうな汗を撒き散らしたコユキを見つめ続ける一同の中、バアルだけが震えながらも声を発したのである。

「コユキ姉様、サタンが言うにはそれが運命神、古き神の予言、そうらしいんだよ?」

 コユキが端的に答えたが、彼女の表情も未だビビっていた物の顔肉が多すぎて周囲にはでっぷりとした貫禄だけが伝わっていた為に、望外の安心感を与えていた様である、良かった。

「そう…… オハバリ様が、ね」

 バアルがやや正気を取り戻した感じで口にした。

「いいや、何となくだけど単体の神では無い様な…… そうだよ! 『奴らが言うには』とか言っていたし…… 姉様が言う『オハバリ』様とは違うんじゃないかな? ねえ、アスタ? お前が封じられたって言う古臭い運命神って何て言ってたっけぇ? どうだい?」

 アスタロトが即座に答える。

「前に言っただろう、奴らの名はレグバだ、ラダの精霊共の総称だな…… 東西南北を示す運命神共だ…… 源星ガイアを象徴する最も古き神達だぞ」

「四柱の最も古い神様達、ね…… レグバ、か……」

 さしものコユキも言葉を濁した時、場に相応しくない素っ頓狂な声が本堂中に響いたのである。

「イッェーイ! アタシィ復活うぅ! コユキちゃん! レグバのラダ達のこと教えてあげちゃいマックスぅ!」

「えっ?」

 コユキのみならず本堂に集まった面々が視線を移した場所には……

 この一年間どれ程話し掛けようが、ガシガシ殴りつけようが、一切生きている素振を見せて来なかった、赤べこ、かつて茶糖家の玄関を守る民芸品としてなが歳月としつき首をフルフルし続けていた真っ赤な牛の張りぼて人形が、二足歩行でトテトテ歩いて近づいてくる姿があったのである。

 コユキは口にするのである。

「ラビスちゃん! アンタってば復活したのん?」

 ウトゥックのラビス、赤べこバージョンは何故か胸を張り反らして答えたのである。

「エッヘンっ! 実の所、とっくのトンマに復活可能だったんだけどね! 空気を読んでこの話が出て来るまで待っていた、って塩梅だったんだよね! 一番格好良いタイミングで復活しなくちゃダメでしょう? 分かるよね? そう言う事だったんだよねぇ? あ、ラマシュトゥ、久しぶりだね、我、復活ぅ! 的な? 的でしょ? どう、どう? どんな気持ちぃ~! イエイッ!」

 ラマシュトゥが美しい人造の人間の十八番目の顔をわずかに歪ませて答えた。

「でしょうね…… 何故貴女が目覚めないのかモラクス兄上とシヴァ、アジ・ダハーカと話していたのだけれど…… やっぱりそんな下らない理由だったんですのね…… もうっ! コユキ様、善悪様に対して不敬でしてよっ! 全くぅっ!」

「あははは、怒られちったっ! ごめんごめん、許してねェー!」

「はあぁー」

 驚きの表情で成り行きを見守っている一同の中から、得心のいった表情で言葉を発したのは、ここの所脇役っぽくなってしまっていた三柱、善悪の古くからの友達、ベレトとゼパル、ガープ達であった。

「やはりな、我々にカイムを加えた四柱をもってしても、清濁きよおみがこの寺を去って後、ボンのエスディージーズの影響で実体を取れない日々が続いたのだ…… その後、魔力供給源たるコユキ様が現れても精々、ポルターガイストレベルの行為、ロウソクやけいひもを訓練や戦いの前に気が付くように蔵の中で目立たせる位しか出来なかったが、アスタロト様やバアル様と言う潤沢な魔力保有者、トシ子様やリエ殿、リョウコ殿、更にはフンババ、クチシロ、カルラ様の加入によって、ここ幸福寺は世界でも稀な魔力集積地となっていったのだぞ? 復活なんぞ容易い事であっただろうに…… 安い芝居で名を落とすなよ? ラビス」

 ベレトの言葉にゼパルが続いた。

「ここまで黙りこくっていたのだ、随分魔力を貯めたんだろうなぁ? ラビスよ、全てボウに話して配下に加わるのだ、ウチのボウはレグバよりよほど優しいのだ! 分かるかな? ウトゥックのラビスよ、貴様には他の選択肢は残されていないのだぞ? 判るだろうが?」

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