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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)
351.炭素14

はじめての方はコチラ→ ◆あらすじ◆目次◆

「大地と海は出来たが命の一つもない世界はまだまだ不安定でな、陸も海も不安定になったマントルの動きに合わせるように変動を繰り返していたんだ、判りやすく言うと地震や噴火地殻移動、そのどれもが現代のそれとは比べ物にならない規模で爆発的に繰り返していたんだぞ、この状態を『混沌』カオスと呼ぶんだが、この頃の星の蠢き、一種の自浄作用の中で生まれたのが原初の神、メット・カフーやレグバ=ラダ達だと言われている」

「ふむ、そりゃ確かに古い神様でござるな~そんで、その後はどうなるのでござる?」

 アスタロトはペットボトルの『おーいしぃ茶糖茶(無糖)』消費期限有りを取り出して一口飲んでから続けた。
 このきめ細やかな気配りによって受講生達も思い思いにのどを潤す事が出来る様になったのである、そうそう真似出来る事では無いだろう、大したものである。

「彼らは星のマントルを形成する大量の鉄に磁力を帯びさせる事で、衝突によって地表を覆い尽くすように散らばったテイア産の鉄に影響を与えられると考え、極を作ったと言われている、んまあ南極と北極だな、これによってこの星は横回転する天体になったってわけだ、つまり奴ら四人を象徴する方角の概念が出来たわけだな! そうやって命の登場を待つこと八億年、アイツがっこんで来るわけだな、命の根源、小惑星ウラヌスの来訪って訳だ」

リョウコがいつもの微笑みを消し、キャラ付けだったのだろうか? しゃべり方までクールに変えて呟くのだった。

「ウラヌス…… 根源の神とも、全ての苦悩の根源とも呼ばれる不確かな存在ね、確か…… 恐ろしいわ!」

アスタロトはその言葉が嬉しかったのか、喜色満面でリョウコを指さしながら言うのであった。

「うん、リョウコ、的を射た表現だな! アイツがもたらした濃密な酸素はこの星にオゾンの層を形成した、ここだけ聞けば創造神にしか聞こえないだろう? だが、アイツがこの星に持ってきたものはそれだけじゃなかったんだ、一つは潮汐ちょうせき、さっきも言った干満ってやつだな、海の満ち潮と気流、大気の流れの活性化をもたらしたんだよ、簡単に言っておくとこの星にアタックする時にヤツは今で言う月の軌道上に漂っていた無数の衛星と、その場を満たした酸素なんかの可燃性ガスを燃やし尽くして突っ込んできたんだな、それでいて、自分がこの星の大気に衝突したときには自分を構成する大量のオキシジンを熱圏突入とともに撒き散らし、電離層とオゾン層を形成したんだ! 息も絶え絶えながらも原初の海にたどり着いたヤツは星中にばら蒔いたんだよ、中性子を取り込み不安定になった各種元素、中でも不安定な同位体として命の根源となるカーボン、炭素14をな」

 もはや誰も言葉を発してはいなかった、善悪とリョウコはぽかんと口を開いたままであほの子みたいになり、反してコユキとリエはどこからか取り出したチラシの裏に必死に書き留めていたのであった。
 トシ子はうっとりとした瞳でアスタを見つめている、たぶん『ダーリン素敵』とかなんとか下らない事しか考えていないのであろう。

アスタロトはさらに話を続けるのであった。

「命たる炭素14、有機炭素をばら撒くだけじゃない、なんで潮汐ちょうせきが発生したか、所謂いわゆるお天気、激しければ天災、異常気象の仕組みをヤツは我知らず作っちまったんだな~、ガスを燃やし尽くされた岩石たちはそれぞれが引力によって引き付け合いやがて一つの天体、衛星になったんだ、想像しやすいように言えば、それまで土星の輪みたいな感じで流れるプールで浸っていた人々が水を抜かれて不安になって大きい人の元に縋るすがるように集まるみたいなイメージだな、かくして現在では人間の感情をも左右する月、ルナが生まれ、同時に人々や多様な命が溢れる舞台となる地球、テラが生まれた瞬間でもあるんだよ」

コユキが息も絶え絶えで言うのであった。

「あ、アスタ、いったん休憩入れて頂戴…… このままじゃアタシもリエも腱鞘炎けんしょうえん起こしちゃうわよ~、おお、いててて」

「うん、アタシなんか、もうちょっと炎症起こしてるっぽい、とほほ」

姉妹の言葉に応えてアスタは言うのである。

「そうだな、いったん休憩にしようか、その間もここまでで判らなかった所の質問には応じるぞ、では十分間の休憩とする!」

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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