堕肉の果て　～令和に奏でる創造の序曲（プレリュード）～

第二章　暴虐の狂詩曲（ラプソディー）
３５３．カンブリアシンジロポエム爆発

はじめての方はコチラ→　◆あらすじ◆目次◆

「ははは、シミしわか、それも怖いだろうが当時の生き物達にとってはそれ所じゃなかったんだぞ？　何しろ致死量の紫外線だ、今までの活動可能時間が半分にされてしまったんだからな、更に日差しから身を隠せない場所では容易に命を落とすんだ、陸でも海でもな、空中を漂う原初の菌類、特に細菌の多くはこの段で絶滅したという事だな」

善悪が真剣な表情で意見を述べる。

「なるほど、行動時間が半減し活動可能な場所まで限られる、となると……」

「どうなるとおもう？　善悪」

「そうでござるな、普通に考えれば限られた餌の奪い合い、それが進むと……　弱肉強食の生存競争、同類相食む地獄絵図、でござろうな」

「正解だな、ただ救いがあるとすれば互いに食らい合うようになる頃には、とても同類といえる見た目ではなくなっていた事だろうな。善悪が答えたように、限られた餌を効率よく捕食するため、或いは短時間で新たな狩場を発見し移動を完了させる為に、生物達は急激な進化、形態の変化を余儀なくされたんだ。　あるものは周囲の状況を瞬時に判断するための感覚器官、視覚や聴覚、嗅覚や熱源探知の能力を手に入れ、またあるものは強い紫外線の中でも生き残るための鱗や鎧の如き皮膚、外骨格を持つ様になったんだ。　苔や菌類、植物性の多細胞生物も例外ではなく、今までのように拡散や伝播でんぱだけでなく、虫たちを利用したり、合う環境下で発芽する為の乾燥に強い種子を生み出したり、日の光を避けて地下茎によって仲間を増やし種を紡ごうとしていたんだよ。　結果、それまでの三十億年の単純に数を増やす、と言う遣り方ではなく、生物は個性と適地生存本能によって多岐に分派していったんだな。『種の門』が出揃ったといわれるこの時期の事を『カンブリア大爆発』と言ったりするようだぞ」

「そうか！　この時代に今の種族ごとの生き残りの素地が形成されたんだね……　それが今のてんでんこ、自分の種族さえ良ければいいって言うセクシー発言、所謂いわゆるシンジロ目線に繋がっているって訳なんだね～、なるほどね～」

「ゆ、ユキ姉、そこに繋がってくるの、カンブリアシンジロポエム爆発って事かぁ！　むううん、でもそれってセクシー？　ってか何の魅力も感じないんだけどなぁ、エゴ？　もしくは只の馬鹿にしか感じないんだけど……」

　思わず叫んでしまったコユキのシンジロ評に答えたリエの（大方の）意見に応えるようにアスタロトは強めの語気で言うのであった。

「はい！　そこっ！　コユキ間違いっ！　んでリエが正解なんだなぁ！　そんなに単純に現代に繋がる訳が無いだろう？　だって彼ら、同類すら食って恥じぬ命の前には何があった？　色とりどりの美しい、ん？　答えてみろよ、コユキ？　魚類、両生類、爬虫類となった彼らの前には一体何があった？　ん、んん？」

「な、なにって……　魚類と両生類と爬虫類でしょ、ええっと………………　んんん、それって鳥類は別個？」

アスタは嬉しそうな笑顔を浮かべていった、此処までで一番いい笑顔であった。

「鳥類も含んでいいぞ！　さあ、そいつらは何を見て、見つけてどうしたと思うんだ！　言ってみそぉ！」

コユキはホンの一瞬だけ考えを纏めまとめて答えたのであった。

「だったら、多分だけど、彼らは石を飲んだんだと思う！　ほら、今だって魚類と両生類、爬虫類とか鳥類って、哺乳類と違って歯が脆弱ぜいじゃくで、そこを補う為に石とか砂とか飲むじゃない？　良く言う『砂肝』ってやつよね？　んだから、えっと……　はっ！　さっき言ってた宝石を飲んだんじゃないかしら？　ビックインパクトの後に個を保っていた光り輝く貴石に自らの延命を掛けて飲み込み続けたんじゃないの？　どう、アスタ！　間違っているかしら？　どう、当たってんでしょぉ？」

アスタロトは満足そうにほくそ笑んで言葉を返すのであった。

「コユキ、畏きかしこき兄上の後裔こうえい、コユキよ、お前にはいつも驚かされるな……　正解、いや、百点満点だよ♪」

「ほれ、やったっ！　どう？　リエ！　お姉ちゃん凄いでしょ！　姉より優れた妹なんて存在しなかったでしょっ！」

「むうぅ、た、確かに……　仕方がないわね、お姉ちゃんの名を呼ぶよ、コユキ！　我が憧れしジャ〇よ……　私は貴女にさえ……　憧れていたのだ……　これで良いの？」

「う、うん良いよぉ、オネイチャン満足したよぉぅ！　いい子だね、んでも次はジ〇ギじゃなくて、世紀末覇者の方で言ってねぇ！」

「むむむぅ、それはソナタしだいだ！　我が姉よ！」

「……ああー、そろそろ良いか！」

「「はいねっ！」」

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
拙作をお読みいただきありがとうございました！