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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三章 苦痛の葬送曲(レクイエム)
677.ア・カペラ

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 こうして悪魔の大軍団が結成され、その後二十五年もの間、構成員の数を増やし続けて行く事となり、魔法を使い石化から人間や動物を守護する組織、私、観察者の時代に多くの人間や魔獣が魔法を使用する事のいしずえとなった『抵抗者レジスタンス』も無事産声をあげる事が出来た。

 勿論、私自身の望んだ知見も、予想を超えた成果と言ってよいだろう。
 これまで御伽噺おとぎばなしの様に感じていた事柄が、今はリアルに感じられる。

 地球と言う星や世界の成り立ち、ブラフマンやアートマンと言う魂の仕組み、魔力イコール生命力である事とその使い方や向き合い方……

 そして何より、私の時代には存在しなくなって久しい悪魔達の個性溢れる言動や、時折見せる人間臭さ、それに様々な知識や技を駆使して謎や難問に挑む真摯しんしな姿勢と、コユキや善悪も同様だが決して諦めない心、いやこれはガッツと呼ぶべきだろう、それに闘魂。
 一年半、三回にわたる観察で、私自身の心にも祖父母同様のガッツと闘魂が生まれた事をひしひしと感じる。

 生まれたと言えば、この一年後、コユキと善悪の間には第一子である女の子、美雪が無事誕生した事もお伝えしておいた方が良いだろう、私の母だ。

 出産前、体型と違って肝が小さい祖母コユキはビビリ捲っていたが、産まれた娘の姿を目にすると喜びの涙を流して、二回前の周回同様、後二人産む! と宣言をしていた。
 その後、善悪と力(?)を合わせ幾度と無く努力(?)を重ねたが、それ以降、子供を授かることは無かった。

 思えば二周前と比べて色々な変化があったのだ、そのせいかもしれない。
 叔父と叔母が産まれなかった事はコユキの心情を思えば非常に残念なことだが、私自身の記憶とは合致している、やはりあれが最期のループだったのだろう。

 一連の観察では望外の収穫もあった。
 善悪お得意のエスディージーズやラマシュトゥの改癒、アスタロトの反射やバアルのアンチマジックエリアは、私に助けを求めてきた、あの少年の願いを叶えるヒントになるかも知れない。

 他にも植物を操るリョウコのギリースーツ、アヴァドンは菌類をも使役しえきしていたし、アメーバの様な悪魔、アガリアレプトと言う存在……
 まだ追加の調査は必要だが、何か引っ掛かるものを感じて止まない。
 兎に角、総じて大変有意義な観察だった、それは間違いない事実である。

 とかく陰鬱な空気に支配されがちな世界に暮らす私にとって、彼らが経験した不思議な事柄や、交わされた言葉のそこかしこに、随分久しぶりの笑いや呆れ、驚きや義憤を感じられただけでも、なんと言うか…… 非常に楽しい時間、愉快な体験だったと思う。

 さて、観察の本来の目的は果たしたが、古くからの友人が是非に、そう依頼してきた場面を観察しに行く事としよう。

 ふむ、そうだな?

 ここまでお付き合い頂いたオーディエンスの皆さんに感謝を込めて、コユキと善悪がこの後一体どうなったのか、それらの内、印象的な事柄を紹介させて頂こうか、私自身も興味深い事でもあるしね。

 では、もう暫くお付き合い頂きたい。
 まずは古い友のリクエストの場所へと時間と空間を移す事としよう。


拙作をお読みいただきありがとうございました!

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