【連載小説】私、悪役令嬢でしたの? 侯爵令嬢、冒険者になる ~何故か婚約破棄されてしまった令嬢は冒険者への道を選んだようです、目指すは世界最強!魔王討伐! スキルは回復と支援しかないけれど……~
53. 令嬢、メンバー募集する ④ (挿絵あり)
エマは即座に片足を引き、反対の膝を僅かに曲げて、両手でローブを摘まみ上げて答える。
「ごきげんよう、私はノブレス・オブリージュのリーダーを務めますエマ、只のエマでございますわ、どうぞお見知りおき下さいませ」
姿勢を戻したエマに続けて残りのメンバーが挨拶をしていく。
「私はイーサンと申します、只のイーサンでございます」
「ああ」
「私はマリアですわ、只のマリアです」
「うむ」
「私はデビッド、同じく只のデビットですね」
「分かった」
デニーもエマ同様姿勢を戻し一人一人のあいさつに返答していた、生真面目な性格のようだ。
簡単な挨拶が終わったのでエマが全員に着席を促す。
「では後は座ってお話いたしましょう、どうぞお掛けになって、皆も席に着くのですわ」
「「「はい、お嬢様」」」
「……」
エマの左右にはいつも通り腰を降ろしたイーサンとデビットが座り対面に座ったデニーに向き合う形になった。
人数分の紅茶を入れ終えたマリアもデビットの横に腰を降ろす。
対面に座ったデニーは何やら落ち着かない様子でモジモジ、ソワソワしているように見えた。
エマが素直に言葉にして聞く。
「? 落ち着かなさそうですわね? どうされたのですか? 」
「……いいえ、大丈夫です、ただ、他人と同席する事に慣れていないだけですので、どうぞ、お気になさらずに」
「? そうですか、では気にしない事にしますわ、まず、今私達が探している新規メンバーに期待する能力なのですけれど────」
ギルドのカウンターの奥、自分の机に座っていたアンナも又、落ち着かない表情で通路の奥を気にし続けて居た。
つい今しがた出勤して来たギルドマスターのガンズが、夜番だった副マスターから渡された書類に目を通しながらアンナに声を掛けた。
「そんなに心配しなくても良いだろう、アンナ、心配性だな」
アンナは小声で返す。
「そんな事言ったって、気になるに決まってるじゃないですか…… ギルドマスター? 報告書見て下さってるでしょう? エマさんがバーミリオン侯爵の関係者、はっきり言えば令嬢のアメリア様だって報告」
ガンズは書類から視線を上げてほほ笑みながら答えた。
「貴族だって色々な考えがあるものだろう? ストラスだって若い内の想い出だって言って冒険者になっていたんだし、エマには優秀そうな護衛が三人も付いてるんだから大丈夫だろうさ」
アンナは首を振って続けた。
「でもよりによってデニーさんですよ? 今朝の格好なんて浮浪者そのものだったし…… ギルドマスター、あの人他の冒険者から何て呼ばれているか知ってますか? 」
「いいや、と言うか移ってきて数日で通り名が付くなんて凄いじゃないか! 何て言われてるんだ? 」
「ウィアードデニー、変わり者ですよ」
「ははは、確かに変わっているなアイツは! でもな、エマ達との相性は悪くないと思うぞ! 」
アンナは首を傾げて聞くのであった。
「どうしてですか? 」
ギルドマスターのガンズは一枚の資料をアンナに差し出しながら言う。
「これナセラの街から取り寄せたデニーの登録用紙の写しなんだが、職業欄を見てみろよ」
ガンズの机に歩み寄ったアンナは、書類を受け取ると一瞥しただけで納得の声を上げたのである。
「なるほど」
「と言う訳で私たちの職業は『聖女』、『守護者』、『忍者マスター』、『破壊者』、そう決めて登録したんですの、如何かしら? 」
「素晴らしい事です! 敢えて高い目標を明示する事に確かな覚悟を感じますし、何より並べた時の語呂が格好良いですね! 比べて僕の職業の貧弱な事と言ったら…… 情けなくなりますよ」
「そうなのですの? 因みにデニーさんの職業はなんと仰いますの? 」
少し恥ずかしそうに頬を染めて答えるデニーだが、顔じゅうを覆った大鋸屑のせいでエマ達にその変化が伝わることは無かった。
「………… い、『いつか伝説となる、勇者』、です」
「「おお! 」」
「悪くない! いいえ、寧ろ良いですわ! ねえ、お嬢様? 」
「ええ、格好良いでは無いですかデニーさん! いつかなんて謙ってる辺りも奥ゆかしくて素敵でしてよ! 」
「そ、そうですか、ふふふ、実は僕、結構気に入ってるんですよ、この職業、ふふふふ」
どうやらセンスが近かったらしく、お陰で一気に互いの距離間がぐっと近づいたようだ。
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お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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