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エッセイ『日本人取扱説明書』

この文章は外国人に向けたものであるが、日本人の方々にも読んでいただきたい。

こんなことを聞いたことがある。日本人の中でも特に京都の人々は、物事や主張を遠回しに伝えると。例えば、『お宅の娘さん、ピアノが上手ですね』というセリフは『ピアノの音がうるさいです』という意味になるらしい。うーん、理解し難い。遠回しどころか意味が真逆である。京都の人を理解するのは難しいなあ。しかし、よくよく考え直してみて欲しい。京都以外に住んでいる日本人にも、思い当たることがあるのではないだろうか。

『全然大丈夫』…全然大丈夫ではない。

これは、私が編纂した“日本人の本音辞書”の一節である。これは間違いない。日本人の言う『全然大丈夫』は全然大丈夫ではないのである。もし誰かが『全然大丈夫』と口にしていたら、その人にはそっと手を差し伸べてあげて欲しい。

ちなみに、“日本人の本音辞書”に載っている『全然大丈夫』の対義語はご存知であろうか。それは『死にそう』である。日本人がこの言葉を使うとき、事の程度は大したことがない。課題に追われて死にそう、転んで痛くて死にそう。そんなわけがないじゃないの。日本人は本当にやばいって思ったときは『全然大丈夫』って言うんだから。もう。どうやら神様は、日本人の感情とその感情を表す言葉のいくつかを反対にプログラミングしてしまったらしい。

テスト勉強をめちゃくちゃ頑張っていたのに『ヤッベ、全然勉強してねえ』って言うやつ。昨夜まあまあ寝てたくせに『昨日全然寝てないんだよね』って言うやつ。好きな女の子に『全然好きじゃない』って言うやつ。デートをしてて本当は帰りたくないくせに相手の反応を伺いたいからって『そろそろ帰ろっか』って言うやつ。

日本人よ、本音で生きよ。

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